アジア太平洋は文化的多様性の大きい地域ですが、全体にわたり類似したテーマが見受けられました。新たな技術への強い関心、Kubernetes(K8s)離れ、そしてオブザーバビリティがチーム間の連携をいかに強化するかについてです。

類似テーマがある一方で、依然アジア太平洋とその他の地域には著しい相違も見られました。例えば、アジア太平洋では、平均してより多くのオブザーバビリティツールを使用しています。

また、アジア太平洋の回答者は、オブザーバビリティの導入がもたらす主な利点として、ビジネスや収益の成長であるとの回答がもっとも多い傾向にありました(25%)。加えて、アジア太平洋は、投資利益率(ROI)中央値がもっとも高い地域でした(114%)。従って、今年も最高幹部の支持がもっとも高かったのも当然のことと言えます。

この地域では、フルスタックオブザーバビリティ実現の最大の障壁は利点の理解不足(23%)であるとの回答がもっとも多く、地域全体を通じて教育と実施可能要件の拡充の機会を模索していることが窺えます。

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IoT、AI、セキュリティが上位の促進要因
セキュリティ、ガバナンス、リスク、コンプライアンスへの注目の高まり(44%)が、今年も最上位のオブザーバビリティの促進要因となりました(昨年からは18%減)。アジア太平洋では、他の地域よりも、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)(それぞれ44%と40%)といった最新技術の導入が、オブザーバビリティニーズを促進する主なトレンドとなっています。企業リソース計画(ERP)や顧客管理(CRM)ビジネスアプリのワークフローへの統合も上位の促進要因でした(40%)。注目すべき点として、サーバレスの導入が対前年比(YoY)で33%減少し、30%となっています。

ツールの分散が課題に
47%が単一の統合型オブザーバビリティプラットフォームを望んでいるにもかかわらず、ツールの分散は依然としてアジア太平洋の国々の課題となっています。61%が5つ以上(他の地域と比べて最多)のツールを使用し、26%がその状況がフルスタックオブザーバビリティの実現を阻んでいると回答しています。さらに、54%が複数の監視ツールでシステム中断を検知しており、これは2022年から20%の増加です。従って、36%が来年にツールの統合を計画しているのは当然のことと言えます。

頻繁なダウンタイムによる高コスト
アジア太平洋では、ビジネスインパクトの大きいシステム停止が他のどの地域よりも多く発生しています(41%が週1回以上と回答)。半数以上(54%)が、システム停止の検知に30分以上かかると回答し、64%がその解決にさらに30分以上かかると報告しています。これらのシステム停止のコストは注目に値します。アジア太平洋では、重要なビジネスアプリケーションのシステム停止によるダウンタイムのコストが1時間あたり50万ドル以上で、年間システム停止コストの中央値は1,907万ドルと、欧州の2倍以上、そして北米のほぼ16倍と、突出して高額になっています。

アジア太平洋の国別ハイライト
各国の結果を見ていくと、アジア太平洋地域の多様性は顕著です。
オーストラリア 🇦🇺 :サイロ化データとツールの分散に苦労しているにもかかわらず、ROIの倍増を実現しています。
インド 🇮🇳 :ツール数は最多で、アップタイムは短く、年間のシステム停止コストがもっとも高くなっています。
インドネシア 🇮🇩 :システム停止の頻度が最多で、年間のシステム停止コストは第2位、オブザーバビリティに平均以上を支出しています。ただし、ROIも最高で、成熟したオブザーバビリティの実践とフルスタックオブザーバビリティをもっとも多く実現しており、最多の機能をシステムし、平均復旧時間(MTTR)を改善しています。
日本 🇯🇵 :オブザーバビリティの単一ツール使用がもっとも多く、システム停止の頻度は低いものの、スキル不足に苦労しています。
マレーシア 🇲🇾 :より多くの機能を導入し、成熟したオブザーバビリティを実践し、MTTRを改善しており、平均を上回るROIを得ています。
ニュージーランド 🇳🇿 :オブザーバビリティは運用効率を高め、リアルユーザー体験を向上させたとの回答がもっとも多く見られました。
シンガポール 🇸🇬 :ROIが最高(インドネシアと同率)ですが、来年に全体の支出を減らすとの回答がもっとも多く見られました。
韓国 🇰🇷 :複数のツール使用が多く、それを好む傾向が見られ、平均検出時間(MTTD)が最も遅く、MTTRの改善も最低でした。
タイ 🇹🇭 :10以上の機能を導入済み、またフルスタックオブザーバビリティを実現しているとの回答が多く見られました。

東南アジア諸国連合 🇮🇩 🇲🇾 🇸🇬 🇹🇭

インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイが調査対象となった東南アジア諸国連合(ASEAN)では、オブザーバビリティはビジネスと収益の成長を可能にし、運用効率を向上し、セキュリティ脆弱性の管理を強化するとみなされていました。主なオブザーバビリティの促進要因は、セキュリティ、ガバナンス、リスク、コンプライアンス(60%)、またIoT(57%)やAI(56%)を始めとする新技術の導入でした。

ASEANの主な要点をまとめたインフォグラフィックはこちら.

55%

フルスタックオブザーバビリティを実現していると答えたASEANの回答者

ツールの統合が優先事項
ASEANでは全般的に、サイロ化したテレメトリーデータ(31%)よりも統合されたテレメトリーデータ(43%)が多いことが示唆されています。3分の1以上が、テレメトリーデータは技術スタック全体から収集し(34%)、ユーザーはテレメトリーデータとその可視性に幅広くアクセスできる(34%)と回答しています。また44%が、チーム間が共有できる単一画面に統合されていると回答しています。

また、57%はオブザーバビリティに5つ以上のツールを使用していました。単一の統合型プラットフォームへの嗜好(53%)は、複数のソリューションへの嗜好(31%)に比べてきわめて明確に示されているものの、単一ツールを使用しているのはわずか3%でした。また、26%は、フルスタックオブザーバビリティ実現の障壁として、監視ツールの数の多さを挙げています。このことから、48%が来年にツールを統合してオブザーバビリティの支出から最大の価値を引き出そうと計画している(既存ツールに関するスタッフトレーニングに続き第2位にランクイン)のも当然のことと言えます。

オブザーバビリティの台頭
注目すべき点として、インドネシアの68%、マレーシアの60%、タイの46%が、本レポートで定義するところのフルスタックオブザーバビリティを実現している上位3カ国となっています(ASEAN全体では55%が実現)。インドネシアでは、驚くべきことに81%が10以上の機能を導入し(他の国と比較して圧倒的多数)、タイでは64%、マレーシアでは63%、それに対してシンガポールでは27%にとどまっています。また、インドネシアの回答者(20%)には成熟したオブザーバビリティの実践(当レポートないの定義において)がもっとも多く、次いで多いのがマレーシア(15%)でした。その他の点として、オブザーバビリティ実現の主な障壁は、戦略の欠如(32%)、コストの高さ(29%)、予算不足(26%)でした。

セキュリティ監視(85%)がもっとも多く導入された機能で、次いで多かったのがデータベース監視(84%)でした。Kubernetes監視(25%)がもっとも導入が少なかった機能で、次いで少なかったのが外形監視(30%)でした。

システム停止は頻繁で高コスト
ASEAN調査でのほぼ半数(45%)の回答者が、ビジネスインパクトの大きいシステム停止を週1回以上経験しており(インドネシアとインドが同率でシステム停止頻度の最上位)、46%がその検知に30分以上、62%がその解決に30分以上かかっていました。ほぼ3分の1(30%)が、重要なビジネスアプリケーションのシステム停止のコストはダウンタイム1時間あたり50万ドル以上と試算しています。年間のシステム停止コストの中央値は、インドネシアが2,273万ドル(全地域の国のなかで第2位)、シンガポールが1,899万ドル、マレーシアが1,073万ドル、タイが292万ドル(タイの回答者の14%は、システム停止が収益に影響しないと回答し、すべての国のなかで最上位)でした。注目すべき点として、タイの79%とインドネシアおよびマレーシアの74%は、オブザーバビリティを導入してからMTTRがある程度改善したと回答し(すべての国のなかで最上位)、これに対してシンガポールでは44%でした。

半数以上(53%)がシステム停止を複数の監視ツールで検知し、30%は手動のチェック、テスト、また苦情によって検知していました。単一のオブザーバビリティプラットフォームで障害を検知している、と答えた回答者は17%のみでした(タイの回答者がもっとも多く32%)。

オブザーバビリティのROIと収益の高さ
顕著な点として、インドネシアの回答者の50%が、年間100万ドル以上をオブザーバビリティに支出していました(すべての国のなかで最上位)。3分1以上(36%)が、全体の支出の削減を計画しており(シンガポールでは50%)、44%が来年にはエンジニアリングチームの規模の最適化を行って(シンガポールでは50%)オブザーバビリティの支出の価値の最大化を計画していました。

インドネシアとシンガポールはいずれも年間ROIの中央値が167%で、これはすべての国において最上位でした。マレーシアの年間ROIの中央値は平均以上の133%で、一方タイは損益ゼロでした。このようにROIが好調な中、特に最高幹部の間でオブザーバビリティの支持がこれほど高いのも当然のことと言えます(技術系最高幹部の82%、非技術系幹部の74%)。さらに58%が、自社組織はオブザーバビリティへの投資から年間100万ドル以上の総価値を得ていると回答しています。半数以上(54%)が、オブザーバビリティは収益維持率を向上させると回答し、オブザーバビリティがもたらす主な利点について、41%がはビジネスや収益の成長であるとし、34%が収益を創出するユースケースの構築であるとしています。大多数(85%)が、オブザーバビリティをある程度中核的な事業目標の達成要因となっていると示唆しています。

オーストラリアおよびニュージーランド 🇦🇺 🇳🇿

オーストラリアおよびニュージーランドにおいて、オブザーバビリティのニーズを促進する戦略やトレンドとして上位に挙げられたのは、セキュリティ、ガバナンス、リスク、コンプライアンスへのさらなる注力(43%)、マルチクラウド環境への移行(41%)、そして顧客体験管理(CEM)重視の高まり(37%)でした。一方、オブザーバビリティの利点の上位は、運用効率の向上(42%)、アップタイムと信頼性の向上(36%)、セキュリティ脆弱性の管理(36%)でした。

オーストラリアおよびニュージーランドの主な要点をまとめたインフォグラフィックはこちら

46%

オーストラリアおよびニュージーランドの回答者が、来年にツール統合を計画

オブザーバビリティの導入は拡大傾向に
ニュージーランドの回答者の約5分の2(41%)、オーストラリアの回答者の35%が、本レポートで定義するところのフルスタックオブザーバビリティを実現していました。また、オーストラリアの43%とニュージーランドの41%が、10以上の機能を導入していました。しかし、技術スタック全体でテレメトリーデータを収集していたのはわずか18%で、世界平均の24%よりもきわめて低くなっています。

大多数はセキュリティ監視(84%)を導入済みで、次いで多かったのがネットワーク監視(76%)、ダッシュボード(74%)でした。外形監視は導入がもっとも少なかった機能(20%)で、次いで少なかったのはKubernetes監視(24%)でした。来年の導入計画は意欲的で、38%がディストリビューティッド(分散)トレーシングを、36%が機械学習(ML)モデルパフォーマンス監視を、35%がサーバレス監視、そして28%がAIOpsを計画しています。新機能を導入する予定がないのはわずか15%でした。

ビジネスインパクトの大きいシステム停止にオブザーバビリティが有効
ビジネスインパクトの大きいシステム停止はかなり頻繁に発生しています。34%が週1回以上のシステム停止を経験し、そのうち14%が1日1回以上です。ほぼ半数(46%)が、その検知に30分以上かかり、57%がその解決に30分以上を要しています。

ダウンタイムは収益に多大な影響を及ぼします。42%が、重要なビジネスアプリケーションのシステム停止は、ダウンタイム1時間あたりのコストが25万ドル以上と回答し、これはニュージーランドで850万ドル、オーストラリアで737万ドルの年間システム停止コストの中央値に換算されます。これには、オブザーバビリティが有効です。62%が、オブザーバビリティを導入してからMTTRがある程度改善したと回答し、そのうち26%は25%以上の改善を報告しています。

サイロ化データとツールの分散は未だに課題
オーストラリアとニュージーランドの組織は、統合されているデータ(28%)より圧倒的に多くのサイロ化されたテレメトリーデータ(49%)を保持しています。テレメトリーデータとその可視性に幅広くアクセスできる(31%)、チーム間が共有できる単一画面に統合されている(31%)との回答は、3分の1未満となっています。

半数以上(54%)が、オブザーバビリティに5つ以上のツールを使用していました。ただし、単一ツールを使用しているのは6%で、昨年の0%から増加しています。これは、複数のソリューション(28%)に比べて単一の統合型プラットフォームへの強い嗜好性(54%)を反映しています。ただし、これは来年以降、変化する可能性があります。ほぼ半数(46%)が、オブザーバビリティへの支出から得る価値を最大化するため、来年にツール統合を検討しています。さらに、20%が数の多すぎる監視ツールを、また18%がサイロ化されたデータを、フルスタックオブザーバビリティ実現の主な障壁に挙げています。

最高幹部はオブザーバビリティのビジネス価値を認識
最高幹部間の支持は依然高く、技術系最高幹部の74%、非技術系最高幹部の73%がオブザーバビリティを支持していると見られています(2022年の83%からは減少)。オブザーバビリティがエグゼクティブの業務改善にどのように最も貢献しているかを尋ねたところ、インフラ環境のアップデートと新規サービス展開の優先順位付けに役立つ(37%)、技術的戦略の策定(34%)、ビジネスKPIの達成(34%)と技術KPIの達成(31%)が上位に挙げられました。

さらに、エグゼクティブの29%が、自社組織はオブザーバビリティへの投資から年間100万ドル以上の価値を得ていると回答しています。加えて、オーストラリアの組織は、オブザーバビリティへの投資から2倍のリターンを実現しており、一方でニュージーランドは損益ゼロとなっています。

インド 🇮🇳

インドの組織は、堅実にオブザーバビリティの導入を進め、その投資から多大な価値を得ており、すべての役割においてオブザーバビリティへの高い支持が見られました(技術系最高幹部で77%、非技術系最高幹部で74%を含む)。一方で、ツールの分散、アップタイムの低さ、高いシステム停止コストに苦労しています。

インドの主な要点のインフォグラフィックをダウンロード

72%

インドの回答者が、10以上のオブザーバビリティを使用

オブザーバビリティニーズの促進要因はAI、ビジネスアプリケーション、クラウドネイティブ
インドでオブザーバビリティニーズを促進する最大の技術戦略やトレンドは、AI技術の導入(51%)、次いでERPやCRMなどのビジネスアプリのワークフローへの統合(46%)、クラウドネイティブアプリケーションアーキテクチャの開発(46%)でした。トレンドとしてもっとも少なかったのは、サーバレスコンピューティング(31%、2022年の47%から減少)、次いでアプリケーションとワークフローのコンテナ化(32%)でした。

ツールの分散が平均よりも広く浸透
インドの組織は他の国よりも圧倒的に多くのツールを使用しており、実に72%もの回答者が5つ以上のツールを、そのうち30%が8つ以上のツールを使用していました。興味深いことに、51%が単一の、統合型プラットフォームを好むとしたにもかかわらず、単一ツールを使用しているとの回答はありませんでした。当然のことながら、34%が、監視ツールが多すぎることがフルスタックオブザーバビリティの実現を阻んでいる最大の課題と障壁であると回答しています。しかし、オブザーバビリティ支出の価値の最大化を図るため、来年にツール統合を計画しているとの回答者は33%にとどまりました。

ダウンタイムとシステム停止コストは平均以上
半数以上(54%)が、ビジネスに影響の大きいシステム停止を週1回以上経験し(システム停止頻度がインドネシアと同率で、すべての国のなかで最多)、そのうち24%が1日1回以上を経験しています。また、58%がそれらのシステム停止の検知に30分以上かかり(そのうち32%が60分以上)、一方で70%がその解決に30分以上を要すると回答しています。これらの結果は、インドはシステム停止の頻度が最多(インドネシアと同率)で、MTTDが最長であり、ビジネスインパクトの大きいシステム停止のMTTRの長さが第2位であることを示しています。ただし、74%が、オブザーバビリティを導入してからMTTRがある程度改善したと回答しています。

約半数(45%)が、重要なビジネスアプリのシステム停止の多大なダウンタイムのコストは1時間あたり50万ドル以上と回答し、そのうち32%がダウンタイム1時間あたりのコストは100万ドル以上と回答しています。これはすべての国のなかで最多です。インドでは、年間システム停止コストの中央値ももっとも高い6,279万ドルでした。この結果を比較してみると、この数値は、年間のシステム停止に伴うコストの中央値が第2位のインドネシアの3倍以上となります。

オブザーバビリティの導により、ビジネス価値を提供
3分の1(33%)がフルスタックオブザーバビリティを実現し、6%が本レポートで定義するところの成熟したオブザーバビリティを実践しています。また、49%が10以上のオブザーバビリティ機能を導入済みでした。アジア太平洋地域全体と同様に、セキュリティ監視(73%)がもっとも多く導入され、次いで多かったのがネットワーク監視(72%)とデータベース監視(71%)でした。一方、外形監視(27%)がもっとも導入の少なかった機能で、次いで少なかったのがKubernetes監視(31%)でした。ただし、3分の1以上が、来年に外形監視(44%)とKubernetes合成(37%)の導入を計画していました。

約半数(45%)が、年間100万ドル以上をオブザーバビリティに支出し、51%がその投資から年間で100万ドル以上の価値を得ていると回答しています。インドの年間ROIの中央値は114%でした。ほぼ半数(44%)が、オブザーバビリティは収益維持率を向上させると回答し、35%がオブザーバビリティは収益を創出するユースケースを構築するとしています。さらに、オブザーバビリティの利点の上位は、システムのアップタイムと信頼性の向上(43%)と運用効率の向上(32%)でした。

日本 🇯🇵

日本において、オブザーバビリティニーズを促進する戦略やトレンドの上位は、AI技術の導入(35%)、マルチクラウド環境への移行(34%)、そしてセキュリティ、ガバナンス、リスク、コンプライアンスへのさらなる注力(30%)でした。2022年にはコンテナ化とサーバレスが主な促進要因だったものの、このトレンドは2023年には継続せず、いずれも対前年比で31%減少しています。

10%

日本の回答者が、単一のオブザーバビリティを使用と回答(すべての国の中で最多)

システム停止頻度は対前年比で減少しているものの、依然として高コスト
日本ではシステム停止頻度に関して大幅な改善が見られ、ビジネスに影響の大きいシステム停止を週1回以上経験していると回答したのは24%のみでした(2022年から67%減)。システム停止が発生しないとの回答はもっとも多く見られました(10%)。ただし、ダウンタイムの割合は依然として高く、51%がその検知に30分以上を要し、63%がその解決に30分以上、そのうち46%が60分以上を要しています。ただし、53%がオブザーバビリティを導入してからMTTRがある程度改善されたと回答し、40%の技術者が問題の発見と解決が速くなったと回答し、30%がシステムのアップタイムと信頼性の向上が主な利点であるとしています。

頻度は下がったものの、システム停止のコストは未だに高額です。23%が、重要なビジネスアプリケーションのシステム停止は、ダウンタイム1時間あたりのコストが100万ドル以上と回答しています。日本における年間のシステム停止に伴うコストの中央値は1,471万ドルでした。

オブザーバビリティがビジネス価値とROIを創出
半数(50%)が、オブザーバビリティに年間50万ドル以上を支出し、そのうち26%が年間100万ドル以上を支出していると回答しています。しかし、28%は、オブザーバビリティへの投資から得る価値を最大化するため、来年の支出の削減を計画しています。

半数が、自社組織はこの投資から年間50万ドル以上の総価値を得ているとし、そのうち42%は年間100万ドル以上と回答しています。従って、日本の年間ROIの中央値は損益ゼロでした。さらに、60%が、オブザーバビリティはある程度中核的な事業目標の達成要因であると回答しています。また、約4分の1が、組織がオブザーバビリティを持たなかった場合、起こりうるもっとも重大なビジネスの結果は、オペレーションの労力が増えることによる運用コストの増加(25%)と、ダウンタイムの増加による収益の損失(24%)を挙げています。

ツール数とデータの可視性は減少
日本は全般的に、使用ツールが対前年比で減少しました。8つ以上のツールを使用しているのは14%のみでした。10分の1(10%)が、オブザーバビリティに単一のツールを使用しており、これは昨年から773%の上昇で、すべての国の中で最多です。注目すべき点として、単一のオブザーバビリティプラットフォームでシステム停止を最初に検知すると回答した割合は、対前年比で67%減少しています。他の国とは異なり、日本では単一の統合型プラットフォーム(38%、対前年比28%減)と複数のソリューション(38%、対前年比で2倍以上)への嗜好性が同率となっています。4分の1以上(28%)が、オブザーバビリティへの投資から得る価値を最大化するため、来年にツール統合を検討しています。

自社のテレメトリーデータがより統合されている(46%)との回答が、よりサイロ化されている(28%)よりも多く見られました。一方で、ダッシュボードを導入しているのは31%にとどまり(他の国よりも圧倒的に少数)、15%が自社のテレメトリーデータは単一画面に統合されていると回答し(対前年比で半減)、18%がユーザーがテレメトリーデータとその可視性に幅広くアクセスできる(対前年比で23%減)と回答しました。また、44%が2026年半ばまでにダッシュボードを導入予定です。

オブザーバビリティ導入の拡大とトレーニングが今後の優先事項
フルスタックオブザーバビリティを実現しているのは30%のみで、本レポートで定義するところの成熟したオブザーバビリティを実践しているのは4%でした。テレメトリーデータが技術スタック全体にわたり収集されているとの回答は、16%にとどまりました。5つ以上の機能を導入済みとの回答は65%のみで、すべての国の中でもっとも少なくなりました。ほぼ3分の2がネットワーク監視とセキュリティ監視を(いずれも64%)導入済みで、62%がログ管理を導入済みでした。ただし、オブザーバビリティの支持レベルは対前年比で全般的に低下しているものの、今後3年の導入計画は積極的で、もっとも顕著な分野はMLモデルパフォーマンス監視(47%)、ダッシュボード(44%)、ディストリビューティッド(分散)トレーシング(41%)でした。

日本は、自社組織のフルスタックオブザーバビリティの実現を阻む主な課題として、スキルの欠如(28%)を選択した唯一の国でした。加えて、オブザーバビリティへの支出から最大の価値を得るためにオブザーバビリティツールを最大限活用する方法として、34%(最上位)がスタッフトレーニングと回答し、オブザーバビリティの実践を成熟させていく意識と関心の高さを示しています。

韓国 🇰🇷

今年、年次オブザーバビリティ予測に初めて韓国が加わりました。広域のアジア太平洋地域とは顕著な相違がいくつかあるものの、多くの類似点も見られました。例えば、最高幹部の強いオブザーバビリティ支持(技術系最高幹部で78%、非技術系最高幹部で73%)、またオブザーバビリティの促進要因や利点も類似していました。

61%

韓国の回答者が、ビジネスインパクトの大きいシステム停止の検知に30分以上かかると回答(すべての国の中で最多)

ダウンタイムの割合が高く、MTTRはオブザーバビリティでは改善しにくいとの認識
4分の1以上(27%)が、ビジネスインパクトの大きいシステム停止を週1回以上経験しており、61%が検知に30分以上を要する(すべての国の中で最多)と回答、また57%が解決に30分以上を要すると回答し、そのうち24%が60分以上かかるとしています。4分の1(25%)が、重要なビジネスアプリケーションのシステム停止に伴うコストはダウンタイム1時間あたり100万ドル以上と推定しています。韓国の年間システム停止コストの中央値は459万ドルでした。

他の国とは異なり、韓国の回答者は、オブザーバビリティを導入してからMTTRは改善せず、ある程度悪化したとの回答が多く(62%)、そのうち26%が25%以上悪化したと回答しています。MTTRがある程度改善したとの回答は28%のみで、他のすべての国と比較して突出して低くなっています。しかし、この結果は、51%の実務担当者がオブザーバビリティは問題の特定と解決の迅速化に役立つと回答し、また30%がサービスの中断とビジネスリスクを低減すると回答したと事実とは矛盾しています。

オブザーバビリティはビジネス価値をもたらす
平均のオブザーバビリティ導入よりは低いものの、60%がオブザーバビリティに年間50万ドル以上を支出しており、これはインドネシアに次いで第2位です。しかし、オブザーバビリティの支出を最大化するため、来年に全体の支出を削減する(41%、シンガポールに次いで第2位)、エンジニアリングチームの規模を最適化する(45%、インドネシアに次いで第2位)との回答が多く見られました。

また、オブザーバビリティを導入してからMTTRが悪化したとの回答が多いにもかかわらず、51%がその投資から年間100万ドル以上の価値を得ていると回答しています。韓国の年間ROIの中央値は114%でした。さらに、運用効率の向上(41%)、ビジネスと収益の成長(26%)が、最上位のオブザーバビリティの利点として挙げられています。また、41%が、もし組織がオブザーバビリティを持たなかった場合、オペレーションの労力が増えることによる運用コストの増加を予想しています。3分の1以上が、オブザーバビリティは収益維持率を向上させる(36%)、また収益を創出するユースケースを構築する(34%)としています。3分の2(66%)が、オブザーバビリティがある程度、中核的な事業目標の達成要因となっていると回答しています。

オブザーバビリティの導入は少ないが、導入計画は増加
フルスタックオブザーバビリティを実現しているのは22%のみ(すべての国の中で下から2番目)で、本レポートで定義するところの成熟したオブザーバビリティを実践している組織はわずか3%です。技術スタック全体のテレメトリーデータを収集していると回答したのは4分の1以下(23%)で、29%が、オブザーバビリティへの投資から得る価値を最大化するため、来年は監視するスタックを削減すると計画しています。10以上のオブザーバビリティ性能を導入済みなのは26%のみで、これは日本を除く他の国に比べてきわめて低く、ネットワーク監視(54%)、ブラウザ監視(50%)、ログ管理(50%)などが挙げられています。もっとも導入の少なかった機能は、Kubernetes監視でした(23%)。

韓国では今後3年での積極的な導入計画が見られ、機械学習(ML)モデルパフォーマンス監視(63%)、Kubernetes監視(62%)、外形監視(62%)などが挙げられています。ほぼ4分の3(70%)が、2026年半ばまでに17すべての機能を導入する予定です。

複数ツールが好まれ、ツールの分散が浸透
アジア太平洋のその他の地域とは対照的に、韓国の回答者は、単一の統合型オブザーバビリティプラットフォーム(32%)よりも複数のソリューション(44%)を好む傾向がありました。実際に、70%が4つ以上のオブザーバビリティツールを使用し、そのうち22%が8つ以上を使用していました。ただし、22%は数の多すぎる監視ツールをフルスタックオブザーバビリティ実現の障壁に挙げています。単一のツールを使用していたのは2%のみでした。27%が、オブザーバビリティへの投資から得る価値を最大化するため、来年にツールの統合を計画していると回答しているものの、これはもっとも人気の低い選択肢であり、他の国より少なくなっています。

複数ツールへの嗜好性は見られるものの、よりサイロ化されたテレメトリーデータを持つのは17%のみで、20%はシステム停止を単一のオブザーバビリティプラットフォームで検知しています。4分の1以上(26%)が、テレメトリーデータを単一画面に統合しており、33%がテレメトリーデータと可視化への幅広いアクセスがあると回答しています。