企業の技術向上を長くリードしてきた北米は、この12か月間で経済的な逆風を経験しています。結果として、北米の組織はツール統合によりクラウド費用を最大限に活用する方策を模索しつつ、サイバー攻撃による将来的なセキュリティリスクから身を守っています。
経済的逆風でツール統合が最優先事項に
北米の回答者は、単一の統合型オブザーバビリティプラットフォームを好む傾向がもっとも高く(61%)、昨年から43%増加しています。ただし、39%は未だオブザーバビリティに5つ以上のツールを使用していました。これは2022年の73%からは減少したものの、さらなる努力が必要と見られます。特に、組織が急速なイノベーションを進め、不安定な労働市場やその他の経済的な課題に取り組む上では必須です。幸い、48%がオブザーバビリティへの投資から最大の価値を得るため、来年にツールの統合を検討しています。
オブザーバビリティはセキュリティの要
他のどの地域よりも、北米の回答者は、最上位のオブザーバビリティのニーズの促進要因を、セキュリティ、ガバナンス、リスク、コンプライアンスへのさらなる注力であるとする回答が多くなりました。大多数(81%)が、セキュリティ監視を導入済みです。さらに、38%がアプリケーションのセキュリティと可用性を改善し、37%がセキュリティリスクを早期に特定、緩和し、また37%がセキュリティの脆弱性管理が最上位のオブザーバビリティの利点であると回答しています。
オブザーバビリティはプラスのビジネス成果を直接的に促進
システムのアップタイムと信頼性の向上(44%)、また運用効率の向上(43%)が、北米においてもっとも多く言及されたオブザーバビリティの利点でした。3分の2以上(67%)が、オブザーバビリティを導入してから平均復旧時間(MTTR)が50%以上改善したと回答しています。加えて、北米の組織はオブザーバビリティへの投資から2倍のリターンを実現しています。
各国の結果を考察すると、以下のことがわかりました。
カナダ 🇨🇦
カナダは、昨年から継続してオブザーバビリティへの高い支持を示しています。カナダの組織は、オブザーバビリティの力とそれが収益に与える影響への認識をますます深めていますが、依然として課題はあります。例えば、急速なデータ拡大に直面し、支出の最大化を検討する際にツール統合は優先事項となっています。
カナダの回答者は、10以上のオブザーバビリティ機能を導入済み
引き続きセキュリティに注力し、技術戦略は移行
カナダにおける最大のオブザーバビリティ促進要因は、今年もセキュリティ、ガバナンス、リスク、コンプライアンスへのさらなる注力(56%)でした。オブザーバビリティの実践にDevSecOpsを導入していないのは9%のみでしたが、43%がソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の全段階でのセキュリティを強化し、34%がアプリケーションのセキュリティと可用性を向上させています。その他の促進要因として、クラウドネイティブなアプリケーションアーキテクチャの開発(48%)、マルチクラウド環境への移行(42%)も挙げられています。
加えて、カナダの回答者は今年、オブザーバビリティは中核的な事業目標の達成とインシデント対応/予防強化のどちらにも重要であると回答する傾向が多く見られました(39%、2022年には28%)。オブザーバビリティはどちらの分野にも有益であるべきであり、これは好ましい変化です。この傾向は、技術チームと事業部間の関係・連携が拡大していることを反映しています。
ツールの分散は減少、データの分散は拡大
半数以上(55%)が、複数のソリューション(19%)よりも単一の統合型プラットフォーム(昨年から44%増)を好むとしています。この嗜好性は、対前年比での監視ツール数の減少を反映しています。7つ以上のツール使用は、2022年の46%に比べてわずか18%となり、単一ツールの使用(8%、昨年はゼロ)が増加しています。ただし、単一のオブザーバビリティプラットフォームでシステム停止を検知しているのは16%のみでした。
今年、テレメトリーデータは統合される(35%、2022年には57%)よりサイロ化(39%)していました。79%がダッシュボードを導入済みだったものの、データが単一画面に統合されている(30%)、またユーザーがテレメトリーデータとその可視性に幅広くアクセスできる(28%)との回答は3分の1以下でした。ほぼ4分の1が、サイロ化したデータ(23%)と多すぎる数の監視ツール(22%)を、フルスタックオブザーバビリティ実現の主な障壁に挙げています。この対策として、57%もの回答者が、投資価値を最大化するため来年にツール統合を計画しています。
オブザーバビリティはシステム停止を減らし、システム停止に伴うコストを削減し、アップタイムを改善
システム停止の頻度は、すべてのビジネスインパクトレベルにおいて、対前年比(YoY)で減少しています。ビジネスインパクトの大きいシステム停止を週1回以上経験しているのは、19%のみでした(昨年から47%減)。加えて、システム停止の検知速度も早まっています。検知に30分以上を要していたのは36%のみで、これは対前年比で23%減となっています。解決には時間がかかるようになったものの(昨年の47%に比べて、56%が30分以上を要すると回答)、67%がオブザーバビリティを導入してからMTTRは改善したと回答しています。
実務担当者のほぼ半数(49%)が、オブザーバビリティにより問題の特定と解決が迅速化されたと回答しています。また3分の1以上が、運用効率が向上し(45%)、サービスの中断とビジネスリスクが低減し(36%)、アップタイムと信頼性が向上した(35%)と回答しています。これらの改善により、すべての国のなかでもっともシステム停止コストが低い国の1つとなっています。半数以上(51%)が、重要なビジネスアプリケーションのシステム停止は、ダウンタイム1時間あたりのコストが25万ドル未満と回答し、またカナダの年間システム停止コストの中央値は148万ドルでした。
オブザーバビリティの導入は拡大し、ビジネス価値を提供
年間オブザーバビリティ支出が最低(57%が年間支出は50万ドル未満と回答)であるにもかかわらず、カナダのオブザーバビリティ導入は高い水準にありました。約5分3(59%)が、10以上の機能を導入済みで、43%が本レポートで定義するところのフルスタックオブザーバビリティを実現(しています。もっとも多く導入された機能はセキュリティ監視(86%)で、次いでデータベース監視(81%)、ネットワーク監視(80%)、アラート(80%)でした。また、インフラストラクチャ監視(79%)を導入している傾向がもっとも多く見られました。しかし、技術スタック全体のテレメトリーデータの収集は21%にとどまりました。
カナダの回答者は投資から成果を得ています。年間50万ドル以上の価値を得ているとの回答は38%のみでしたが、2倍のROIを実現していました。約3分の1が、オブザーバビリティは収益維持率を向上させる(35%)、また収益を創出するユースケースユースケースを構築する(30%)と回答しています。加えて、ほぼ半数のIT領域の意思決定者(ITDM)が、業務が楽になる(46%)、技術的な主要パフォーマンス指標(KPI)の達成に役立つ(46%)、ビジネス戦略の確立に役立つ(43%)として、オブザーバビリティが業務を改善すると回答しています。
米国 🇺🇸
米国は、サイバー攻撃の高まる中、リスクの緩和と顧客体験の向上に注力しています。また、米国の組織は、コストの懸念解消にも取り組んでいました。オブザーバビリティの目的については、中核的な事業目標の達成とインシデント対応/予防強化のどちらも重要であるとする、よりバランスのとれたスタンスへの明らかなシフトが見られました。この傾向は、技術チームと事業部間の関係・連携が拡大していることを反映しています。
米国の回答者が、オブザーバビリティを導入以降、MTTRの改善を経験
オブザーバビリティの導入が進行、セキュリティが主な促進要因に
全体として、米国でのオブザーバビリティの導入は対前年比で増加しています。大多数(88%)が5つ以上の機能を導入済みで(昨年は82%)、そのうち39%は10以上を導入済みでした。ただし、本レポートで定義するところのフルスタックオブザーバビリティを実現している回答者は32%にとどまり、技術スタック全体でテレメトリーデータを収集しているとの回答は22%のみでした。導入の主な促進要因は、圧倒的にセキュリティ、ガバナンス、リスク、コンプライアンスへのさらなる注力(59%)が多く、次いでクラウドネイティブのアプリケーションアーキテクチャーの開発(36%)と顧客体験管理への注力(35%)となっています。実際、大多数(80%)がすでにセキュリティ監視を。導入済みで、対前年比で41%の増加となっています。自社組織のオブザーバビリティの実践にDevSecOpsが未導入との回答はわずか7%でした。
また、4分の3以上がネットワーク監視(82%)、インフラストラクチャ監視(78%)、アラート(77%)を導入済みでした。注目すべき点として、米国の組織はディストリビューティッド(分散)トレーシング(21%)、機械学習(ML)モデルパフォーマンス監視(19%)について導入がもっとも少ない傾向が見られ、導入する予定もないとの回答がもっとも多く見られました(それぞれ26%と22%)。外形監視の導入も少なく(16%)、予定もないとの回答が多く見られました(26%)。
オブザーバビリティのコストは懸念材料だが投資の価値はある
フルスタックオブザーバビリティ実現のもっとも大きな障壁は、コストと予算不足(いずれも26%、昨年から増加)でした。3分の1以上(34%)が、昨年は急速なデータの増加が請求額に多大な影響を及ぼしたと回答し、24%が必要な機能を得るために望まないバンドル支払いを余儀なくされたとしています。米国の組織は、オブザーバビリティへの年間支出が50万ドル以下である傾向が多く見られました(52%、対して50万ドル以上は34%)。また29%は、オブザーバビリティ支出を最大化するため、来年の全体支出の削減を計画しています。
オブザーバビリティへの投資から年間50万ドル以上の価値を得ているとの回答は35%のみだったものの、データでは多大なビジネス価値がもたらされていることが示されています。米国での年間ROIの中央値は100%で、これは回答者がオブザーバビリティへの投資から2倍の年間リターンを得ているということを意味します。また約4分の1が収益維持率が向上したと回答し、オブザーバビリティがなければ、オペレーションの労力が増えることによるオペレーションコストの増加、ダウンタイムの増加による収益の損失、顧客体験の悪化による信頼性の低下といった重大なビジネスの結果を招くだろうとしています。さらに、IT意思決定者(ITDM)の39%が、オブザーバビリティにより業務が楽になると回答し、約3分の1が、ビジネスおよび技術的KPIの達成を助け、技術戦略を確立するのに役立つと回答しています。
ツール統合は変わらず優先事項だが、サイロ化データが浸透
全体として、今年、米国の組織では使用する監視ツール数が減少しました。5つ以上の監視ツールを使用しているのは3分の1余り(38%)で、これは昨年から48%の減少です。ほぼ半数(48%)では、使用ツール数が4つ以下でした。このツール統合の傾向は、複数のソリューション(19%、昨年から46%減)と比較して単一の統合型プラットフォームを望む(63%、昨年から46%増)傾向が増加していることと合致しています。単一プラットフォームへの明確な嗜好性と、24%が多すぎるツールがフルスタックオブザーバビリティ実現への障壁であるとしているのにもかかわらず、単一のツールを使用しているのはわずか7%でした(それでも昨年の割合からは2倍以上)。さらに46%が、オブザーバビリティへの投資から最大の価値を得るため、来年にツール統合を検討しています。
しかし、23%がサイロ化データがフルスタックオブザーバビリティ実現への障壁であるとしているにもかかわらず、今年は89%増の回答者が、自社のテレメトリーデータは統合化(31%)よりサイロ化した(44%)と回答しています。ダッシュボードの導入は対前年比で57%増となる72%へと増加したものの、単一画面に統合されているとの回答は26%のみで、またユーザーがテレメトリーデータとその可視性に幅広くアクセスできるとの回答は20%のみでした。
オブザーバビリティの恩恵でアップタイムは改善
システム停止の頻度は、すべてのビジネスインパクトレベルにおいて、全体として対前年比で減少しています。注目すべき点として、米国の組織は、ビジネスインパクトの大きいシステム停止の頻度が、すべての国のなかでもっとも低くなっています。月2〜3回以下との回答が76%であるのに対し、週1回以上との回答はわずか18%です。また、これらのシステム停止を30分以内に検知する傾向が昨年より増加してもっとも多く(62%)、すべての国のなかでも最多となっています。57%がその解決に30分以上を要すると回答し、そのうち31%が60分以上としているものの、対前年比で割合は10%減少しています。
実際、67%が、オブザーバビリティを導入してからMTTRが改善したと回答しています。実務担当者の半数以上(51%)が、オブザーバビリティにより問題の特定と解決が迅速化されたと回答しています。ほぼ半数が、システムのアップタイムと信頼性の向上(47%)と運用効率の向上(43%)を、オブザーバビリティにより可能になる主な利点であると回答しました。また37%が、サービスの中断とビジネスリスクが低減したと回答しています。このことが、米国がすべての国のなかでもっともシステム停止に伴うコストが低い理由であると思われます。回答者の半数が、重要なビジネスアプリケーションのシステム停止によるダウンタイム1時間あたりの支出は25万ドル以下であると回答しています。米国の年間システム停止に伴うコストの中央値は120万ドルでした。