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New Relicはオブザーバビリティに関する新たな知見を得るため、Enterprise Technology Research(ETR)とパートナーを組み、今回が第3回となる年次オブザーバビリティ予測レポート作成に向けて調査と分析を実施しました。

新たな試み

オブザーバビリティ業界において最大規模となる、包括的なオブザーバビリティ研究データのサンプルサイズがさらに拡張されました。今年は新たな国(韓国)を対象に加え、地域的分布がアップデートされています。質問項目について、約半数は昨年度の質問項目を使用して対前年比の傾向比較を行い、同時に多くの新規項目を追加してさらなる知見を得ました。また、フルスタックオブザーバビリティの定義にセキュリティ監視の項目を追加しています。

加えて、今年のレポートは完全オンライン版となり、ナビゲートメニューもアップデートされ、調査結果が検索しやすくなっています。

定義

本レポートで使用される一般的な用語と概念は、以下のように定義されています。

オブザーバビリティ

調査においては、バイアスを避けるため、オブザーバビリティについての定義を行いませんでした。

オブザーバビリティにより、組織はシステムがどのように機能しているかを観測し、アウトプットされるデータに基づき問題やエラーを特定できるようになります。これらのデータは、テレメトリーデータ(メトリクス、イベント、ログ、トレース:MELT)と呼ばれています。オブザーバビリティとは、さまざまな役割のための知見を明らかにし、顧客体験やサービスに影響するアクションを即座に実行するために、システムを計装することです。また、オブザーバビリティは、アップタイムとパフォーマンス向上のため、データの収集、分析、変更、相関付けを行います。

オブザーバビリティが実現されると、さまざまなソースからの全てのデータを、結合されたリアルタイムビューで、理想的には1か所で見ることができます。チームはそこで、より迅速なトラブルシューティングと問題解決に向けて連携し、問題の発生を未然に防ぎ、運用効率を確保し、最適な顧客およびユーザー体験と競争優位性を高める高品質なソフトウェアを開発することができます。

ソフトウェアエンジニアリング、開発、サイト信頼性エンジニアリング(SRE)、運用その他の各チームは、オブザーバビリティを使用して、複雑なデジタルシステムの挙動を理解し、データから知見を導きます。オブザーバビリティにより、より迅速に問題を特定し、根本原因を理解してインシデントにすばやく簡潔に対応し、ビジネス成果に合わせてデータをプロアクティブに調整できます。

オブザーバビリティの一部である監視は、根本原因は分からずとも過去の経験値に基づいて対応できる問題を特定するために使用されます。そのような問題は”既知の未知”としても表現され、潜在的な問題の数と複雑さが限定される状況においてのみ解決できる問題です。

一方、組織は、想定外のことがなぜ(何が、いつ、どのように、に加えて)起こったかを判断するために、オブザーバビリティを使用します。特に、問題の潜在的範囲や、システムとサービスのインタラクションが大規模で複雑な環境において、威力を発揮します。重要な違いは、オブザーバビリティは、これまでの経験に依存しない問題、つまり"未知の未知"と言われているものも含めた全ての問題を解決することを可能にするということです。また組織は、環境の最適化と強化のために、オブザーバビリティをプロアクティブに使用します。

監視ツールのみの場合、データサイロとデータサンプリングが発生することがあります。それとは対照的に、オブザーバビリティプラットフォームは、フルスタックを計装し、そこから取得したテレメトリーデータを1か所に集約して、統合的かつアクション可能な一元化されたビューとして相関させることができます。

監視 オブザーバビリティ
監視リアクティブ(事後対応的) オブザーバビリティプロアクティブ(事前対策的)
監視状況的 オブザーバビリティ予測的
監視推測ベース オブザーバビリティデータドリブン
監視いつ、何が起きたのか? オブザーバビリティいつ、何が、なぜ、どのように起きたのか?
監視想定内の問題(既知の未知) オブザーバビリティ想定外の問題(未知の未知)
監視データサイロ オブザーバビリティ1箇所でのデータ集約
監視データサンプリング オブザーバビリティすべてを計装

監視とオブザーバビリティの主な違い

フルスタックオブザーバビリティ

顧客体験に影響を与える可能性のある技術スタックのすべてを把握する能力を、フルスタックオブザーバビリティ、またはエンドツーエンドのオブザーバビリティと呼びます。これは、全てのテレメトリーデータを完全に把握することが前提となります。

エンドツーエンドのオブザーバビリティに向けてデータドリブンなアプローチを採用することで、エンジニアと開発者は全テレメトリーデータを把握できるようになります。これにより、データサンプリングをしたり、技術スタックの可視性を妥協したり、サイロ化されたデータの切り替えに時間を費やす必要がなくなります。その代わり、より優先度が高く、ビジネスに影響し、かつ開発者が望むクリエイティブなコード開発業務に集中できるようになります。

フルスタックオブザーバビリティは、本レポートで使用されているとおり、顧客体験の監視/DEM(フロントエンド)、サービス監視、ログ管理、バックエンドのインフラやデータベース、ネットワークの監視、セキュリティ監視などの、オブザーバビリティ機能の組み合わせを導入することで実現されます。

どの位の回答者がフルスタックオブザーバビリティを実現させたか、またフルスタックオブザーバビリティを実現させる利点についてご覧ください。

セキュリティ監視
サービス監視アプリケーションパフォーマンス監視またはサーバレス監視
環境モニタリングデータベース監視またはインフラ監視またはネットワーク監視
顧客体験監視/DEMブラウザ監視またはモバイル監視または外形監視
ログ管理
++++++=
フルスタック
オブザーバビリティ

成熟したオブザーバビリティの実践

「フルスタックオブザーバビリティ」は、組織が自社サービスに、どの程度オブザーバビリティを実現できているかを表しますが、一方で「成熟度」は、オブザーバビリティの機能がどの程度効果的に実践されているかを表します。

何をもって「成熟したオブザーバビリティを実践しているか」というのはやや主観的です。本レポートでは、成熟したオブザーバビリティの実践を「ベストプラクティスに従い、特定の成果を達成すること」と定義しました。

ベストプラクティス

  • 計装の自動化
  • インシデント対応の一部が自動化されている
  • インフラストラクチャが自動化ツールを使用して設定、オーケストレーションされている
  • フルスタックでテレメトリーデータを収集している
  • テレメトリーデータ(メトリクス、イベント、ログ、トレース)が複数チームで活用できるよう単一のビューに統合されている
  • ユーザーがテレメトリーデータに幅広くアクセスし、可視化できている
  • ソフトウェアの導入に、CI/CD(継続的なインテグレーション、開発および導入)が実践されている
  • カーディナリティの高いデータの取り込み
  • 臨機応変なデータクエリ能力

ビジネス成果

  • 開発者(およびエンジニア)の作業時間が、インシデント対応(リアクティブ)からより高価値な作業(プロアクティブ)へ移行
  • ソフトウェアスタックに関する判断において、チーム間の協力体制を強化
  • オブザーバビリティによりサービスの中断とビジネスリスクが低減
  • テレメトリーデータを使ってビジネス関連の文脈を考慮し、イベントやインシデントのビジネスインパクトを数値化
  • オブザーバビリティにより顧客行動への理解が深まることで、収益維持率が向上
  • オブザーバビリティにより収益を創出するユースケースを構築

本レポートの目的に鑑み、成熟したオブザーバビリティの実践は、少なくとも以下の5つの特性を備えるものとします。

  • テレメトリーデータ(メトリクス、イベント、ログ、トレース)を、複数チームで活用できるよう単一ビューに統合
  • 開発者およびエンジニアの作業時間を、インシデント対応(リアクティブ)からより高価値な作業(プロアクティブ)へと移行
  • ソフトウェアスタックに関する判断におけるチーム間の協力体制を強化
  • サービスの中断とビジネスリスクの低減
  • 顧客行動への理解を深めることにより、収益維持率を向上

調査対象者のオブザーバビリティの成熟度については、こちらをご覧ください

役割

調査の参加者は、実務担当者とIT意思決定者(ITDM)でした。実務担当者とは通常、オブザーバビリティツールを日常業務で使用するユーザーを指します。

役割

役職

説明

一般的なKPI

開発者

アプリケーション開発者、ソフトウェアエンジニア、設計者、フロントラインの担当マネージャー

コード設計、ビルド、デプロイを行い、可能な場合にはプロセスを最適化、自動化する技術チームのメンバー

新規コーディングの課題や新規技術の導入に前向きに取り組み、最新の高性能ツールについて熟知している

サイクルタイム(変更実施のスピード)

エンドポイントのセキュリティインシデント

エラー率

リードタイム(考案段階から導入までのスピード)

平均インシデント間隔(MTBI)

ソフトウェアのパフォーマンス

稼働率

運用のプロフェッショナル

ITオペレーションエンジニア、ネットワークオペレーションエンジニア、DevOpsエンジニア、DevSecOpsエンジニア、SecOpsエンジニア、サイト信頼性エンジニア(SRE)、インフラストラクチャオペレーションエンジニア、クラウドオペレーションエンジニア、プラットフォームエンジニア、システムアドミニストレーター、設計者、フロントラインの担当マネージャー

インフラストラクチャとアプリケーションの健全性と安定性の全般を担当する技術チームのメンバー

監視ツールを使用してインシデントを検知、解決し、コードパイプラインを構築、強化し、最適化と規模化の取り組みをリードする

可用性

導入のスピードと頻度

エラーバジェット

エラー率

平均検出時間(MTTD)

平均復旧時間(MTTR)

サービスレベル契約(SLA)

サービスレベル指標(SLI)

サービスレベル目標(SLO)

稼働率

非エグゼクティブマネージャー

エンジニアリング、オペレーション、DevOps、DevSecOps、SecOps、サイト信頼性、分析担当のディレクター、シニアディレクター、副社長(VP)、上級副社長(SVP)

顧客向け、社内システム、プラットフォームの構築、運用開始、管理に関する実務担当チームのリーダー

高レベルのビジネス戦略を運用可能なものにし、技術戦略を戦術的実施へと変換するプロジェクトを統括する

継続的な加速とサービスの規模化を目指す

顧客満足度

MTBI

MTTR

予定に沿ったプロジェクト完遂

ソフトウェア開発と効率性

導入の速度

稼働率

エグゼクティブ(最高幹部)

技術系:最高情報責任者(CIO)、最高情報セキュリティ責任者(CISO)、最高技術責任者(CTO)、最高データ責任者(CDO)、最高アナリティクス責任者(CAO)、チーフアーキテクト

非技術系:最高経営責任者(CEO)、最高執行責任者(COO)、最高財務責任者(CFO)、最高マーケティング責任者(CMO)、最高収益責任者(CRO)、最高製品責任者(CPO)

ビジネスインパクト、技術戦略、組織文化、企業の名声、コスト管理を担当する、技術インフラとコスト全般のマネージャー

ビジネスの目標を達成するため、組織の技術関連のビジョンとロードマップを定義する

デジタル技術を利用してカスタマーエクスペリエンスと収益性を向上させ、その結果として企業の価値を高める

コンバージョン率

費用対効果

顧客満足度

投資利益率(ROI)

導入の速度

イノベーションの速度

総所有コスト(TCO)

稼働率

実務担当者およびITDM(IT意思決定者)の役割、役職、一般的な主要パフォーマンス指標(KPI)

組織の規模

本レポートでは、特に記載がない限り、組織の規模は従業員数に準じて表記しています(以下参照)。

小規模 1〜100名
中規模101〜1,200名
大規模 1,200名以上

従業員数に基づく組織の規模

手法

本レポート内の全データは、2023年3月から4月に実施された調査から得られたものです。

ETRは、関連する専門性に基づき調査対象者を選定しました。回答者のサンプルサイズは回答者の居住国と組織における役職(実務担当者とIT意思決定者)にもとづき、割当法と呼ばれる非確率抽出法を実施しました。地理的分配は、15の主要国を対象としました。

本レポート内で提示されるすべてのドルは米国ドル(USD)表記です。

2023年の調査では、2021年オブザーバビリティ予測および2022年オブザーバビリティ予測よりも規模の大きい組織(従業員数と年間収益別で)から回答者が選定されており、対前年比(YoY)の比較に影響する可能性があります。

調査結果

年次オブザーバビリティ予測は、同種の研究において唯一の、生データをオープンソースとした調査です。

2023年オブザーバビリティ予測の調査結果をご覧ください

ETRについて

ETRは、対象とするIT意思決定者(ITDM)コミュニティから得た専有データを活用し、投資計画や業界トレンドに関するアクション可能なインサイトを提供するテクノロジー市場のリサーチファームです。2010年以来、ETRは1つの目標に向かって着実に実績を重ねています。企業リサーチにおいては、不完全でバイアスのかかった、統計的に有意ではないデータから形成されることの多い意見の必要性を排除しています。

ETRの扱うITDMコミュニティは、業界で最高クラスの顧客/評価者の視点を提供できる独自のポジションを占めています。このコミュニティから得た専有データとインサイトは、機関投資家やテクノロジー企業、ITDMが、拡張する市場における複雑な企業テクノロジーの展望を概観する上で、大きな役割を果たしています。

ert logo

New Relicについて

New Relicは、オブザーバビリティのリーダーとして、優れたソフトウェアの計画、構築、導入、実行に対するデータドリブンなアプローチでエンジニアを支援しています。New Relicは、メトリクス、イベント、ログ、トレースからなる全テレメトリーデータが集約された唯一の統合データプラットフォームを、強力なフルスタック分析ツールと組み合わせて提供し、意見ではなくデータに基づくエンジニアのベストパフォーマンスを可能にします。

直感的かつ予測可能な、業界初の従量課金制の価格設定に基づき提供されるNew Relicは、計画サイクルタイム、変更失敗率、リリース頻度、MTTRの改善を促し、エンジニアにさらなる費用対効果をもたらします。これにより、世界をリードする大企業や成長著しいスタートアップ企業のアップタイムと信頼性、運用効率の向上を助け、イノベーションと成長を加速させる優れたカスタマーエクスペリエンスの創出を支援します。

New Relic logo

レポートの引用

本レポートで示される引用形式は以下の通りです。

  • APAスタイル
    Basteri, A(2023年9月). 2023年オブザーバビリティ予測. New Relic, Inc. https://newrelic.com/resources/report/observability-forecast/2023
  • シカゴマニュアルスタイル
    Basteri, Alicia. 2023年9月. 2023年オブザーバビリティ予測. N.p.: New Relic, Inc. https://newrelic.com/resources/report/observability-forecast/2023.

デモグラフィック

2023年、ETRは、オブザーバビリティに関するレポートとしては最大規模の、かつ2022年調査の1,614名から5%増、2021年調査の1,295名からは31%増となる1,700名の技術プロフェッショナルを対象に調査を実施しました。対象国は、アジア太平洋、ヨーロッパ、北米にわたる地域からの15か国で、フランス、ドイツ、アイルランド、英国が回答者の24%を占め、およそ29%がカナダと米国でした。残りの47%は、オーストラリア、インド、インドネシア、日本、マレーシア、ニュージーランド、シンガポール、韓国(2023年度新出)、タイを含む、より広域のアジア太平洋地域からの回答者でした。地域別ハイライトについては、こちらをご覧ください

調査対象者の構成は2021年、2022年とほぼ同様で、65%が実務担当者、35%がIT意思決定者(ITDM)でした。調査結果から分かったことは、オブザーバビリティに関して実務担当者の評価・認識と、ITDMの評価・認識が分かれていることです。

回答者の年齢は22歳から73歳で、82%が男性、18%が女性と識別されており、これは今日の技術プロフェッショナルにおける男女の不均衡を反映した結果となっています。

サンプルサイズ

地域

n=500
n=400
n=800

役割

年齢

性別

回答者のデモグラフィック(サンプルサイズ、地域、国、役割、年齢、性別)

企業属性

調査対象者の半数以上(58%)が大規模組織、次いで34%が中規模組織、そして9%が小規模組織に所属していました。

組織の年間収益は、17%が50万ドル〜999万ドル、25%が1,000万ドル〜9,999万ドル、49%が1億ドル以上となっています。

回答者群の業界は、IT/テレコミュニケーション、工業/原料/製造、金融サービス/保険、小売/消費者、医療/製薬、エネルギー/ユーティリティ、サービス/コンサルティング、教育、政府機関、非営利組織、その他(不特定)など、多様な業界により構成されています。業界別のハイライトにもご注目ください。

組織の規模

年間収益

業界

回答者の企業属性(組織規模、年間収益、業種)