
利用用途
グローバルで高い市場シェアを誇る個人用スキャナー「ScanSnapシリーズ」の顧客価値を高めるクラウドサービス「ScanSnap Cloud」の監視・運用・保守のノウハウを継承するためにNew Relicを活用
New Relicの導入目的と成果
- 高度な監視・運用・保守のノウハウが求められる属人的な監視体制の解消
- グローバル展開するScanSnap Cloudのユーザー体験を可視化
- トラブルシューティングの迅速化とサービス品質の維持・向上
- 問題検知から初動調査までの作業をほぼゼロに。半日をかけることもあったシステムパトロールの解消
- コンテナ化/マイクロサービス化が進むアプリケーションの監視・運用・保守体制を強化
- 日々の技術支援や日本チームによる実践書籍の出版など、国内随一のサポート体制を評価
利用製品
- New Relic APM
- New Relic Infrastructure
- New Relic Synthetics
- New Relic Logs
- New Relic Dashboard
- New Relic Alerts
PFUは、世界シェアNo.1の業務用イメージスキャナーを開発・提供する企業として広く知られている。中でも、カンタン・スピーディ・コンパクトという特長を備え、クラウドサービスとの連携により利便性を高めた「ScanSnapシリーズ」の人気は高く、デジタライズの起点として様々なビジネスの現場で定着化している。ドキュメントイメージング事業本部で、ScanSnapシリーズ向けクラウドサービスの開発・運用をリードする山﨑友宏氏は次のように話す。
「PFUのドキュメントイメージング事業の歴史は、高性能で使いやすいスキャナー開発の歴史そのものです。ScanSnapシリーズは、様々な紙ベースのドキュメントのデータ化を通じて、お客様業務のデジタル化に欠かせない役割を担っています。さらに、PFU独自のクラウドサービス『ScanSnap Cloud』を利用することで、書類、名刺、会計・資産管理、写真を自動識別し、事前に指定したクラウド環境に自動保存できます」
「ScanSnap Cloud」では、PCを介することなく、スキャンデータをConcur、freee、弥生会計、Eight、Box、Dropbox、Google Drive、OneDriveなど目的に応じたクラウドサービスに直接保存できる。アナログ情報のデータ化から活用に至る手順を大幅に効率化できるため、e-文書法、電子帳簿保存法の施行をきっかけにScanSnapシリーズを起点とする業務フローを整備した企業も多い。
「高性能で使いやすいスキャナー製品と、業務効率化やデジタル変革に寄与するクラウドサービスを組み合わせ、ScanSnapシリーズをよりお客様価値の高いソリューションへと進化させるチャレンジを続けています。そのために『ScanSnap Cloud』の優れた機能性を追求するとともに、より良いユーザー体験を提供し続けるためのシステムと体制の強化に力を注いでいます」(山﨑氏)

ドキュメントイメージング事業本部 スキャナー開発統括部 SS-SW開発部 クラウド開発運用課 課長 山﨑友宏氏
ScanSnap Cloudは、Microsoft Azureの日本・北米・欧州の3リージョンから、世界およそ40か国にサービス提供されている。ピーク時には1分あたり650件のオンライン処理が実行されるという。
「ScanSnap Cloudのサービス品質を維持・向上させるためには、お客様の体験を定量的に把握しなければならないと考えました。私たちは、これまでのインフラ視点での監視から脱却し、アプリケーションとサービスの視点からお客様の体験を観測するために、オブザーバビリティプラットフォームNew Relicを採用しました」(山﨑氏)
監視・運用・保守を「次の世代」にどう引き継ぐか
New Relicは業界を代表するオブザーバビリティプラットフォームであり、国内では46%のトップシェアを獲得している。デジタルサービスにおけるあらゆる重要指標の「観測」を可能にし、アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化する。クラウド開発運用課で、ScanSnap Cloudの監視・運用・保守を担当する小林敏幸氏は、New Relic導入の背景を次のように説明する。
「ユーザーの増大、機能の増強、連携するクラウドサービスの拡大、マイクロサービスアーキテクチャへの移行とコンテナ化などに伴い、ScanSnap Cloudのサービス基盤システムは急速に複雑化が進んでいます。経験豊富なクラウド開発運用課のメンバーでも、未知の不具合に対しては解決にかなりの時間を要するようになってきました。New Relic導入の第1の目的は、お客様の体験をリアルタイムで把握しつつ、サービス品質に影響を及ぼすような不具合をより迅速に解決可能にすることでした」
クラウド開発運用課は、グローバルにサービス提供するScanSnap Cloudを24時間365日体制で監視・運用・保守しているが、小林氏にはもう一つ大きな課題認識があった。自身の定年が1年後に迫る中、「後継者」をどうするかである。
「現在私たちが担っている運用業務を次の世代にどう引き継ぐか、個人が持っている経験や知見をどうやって伝承するか。限られた時間の中で、後継者を育成することは極めて困難な状況でした。第2の目的は、New Relicによるオブザーバビリティを活用して監視・運用・保守の能力全体を底上げし、私たちが培ってきた知見をNew Relic上に組み込むことで、経験の少ないメンバーでもベテランと同等の運用を行えるようにすることでした」と小林氏は力を込める。

ドキュメントイメージング事業本部 スキャナー開発統括部 SS-SW開発部 クラウド開発運用課 運用担当 小林敏幸氏
小林氏が言う「個人が持っている経験や知見」は、ベテランならではの「問題検知アプローチ」、多様なログを組み合わせての「状況把握とトラブルシューティング」に象徴される。
「一例ですが、ScanSnap Cloudのサービスに対して『動作が遅くない?』『調子悪いんじゃない?』といった、ネガティブなSNS投稿がないかを監視してきました。実際に、海外のお客様のSNS投稿から不具合を知り、そこからログを収集して問題に対処した例はいくつもあります。ユーザー体験が見えない状況下では、問題の検知すら経験と知見なくしては難しかったのです」(小林氏)
顧客がどんな体験をしているのか、その原因は何か
個人の経験と知見に基づく運用から、チーム全体でのデータドリブンな運用へ――これを可能にしたのは、New Relicによるユーザー体験の可視化である。クラウド開発運用課の才川敦博氏は次のように話す。
「私自身は、システム運用に加えてヘルプデスク業務も担当しているのですが、お客様の問題解決を支援する上での最大の障壁も、『お客様が今どんな体験をしているのか見えない』ことでした。New Relic APMを利用して、Webアプリケーションのレスポンスタイム、スループット、エラー率、トランザクションなどを可視化することで、そうした状況は劇的に変わりました。たとえば、お客様がスキャンしてから保存完了までの待ち時間など、お客様の体験が手に取るようにわかるようになったのです」

ドキュメントイメージング事業本部 スキャナー開発統括部 SS-SW開発部 クラウド開発運用課 運用担当 才川敦博氏
New Relicの活用が進むとともに、ScanSnap Cloudの処理の遅延や停滞を即座に把握するだけでなく、「ユーザー体験を悪化させている原因」を速やかに特定できるようになったという。
「また、従来は1時間あたりのスキャン枚数しか把握できませんでしたが、New RelicではリアルタイムでTCPセッション数を観測できます。これをレスポンスタイムやシステムリソースの使用率などと関連づけて、サービス品質を維持・向上させていくための手が打ちやすくなりました。理想としていたプロアクティブな運用に大きく近づいた実感があります」(才川氏)
New Relicがシステム運用の常識を変えた
New Relicのオブザーバビリティ=可観測性は、モダン化が進むScanSnap Cloudの運用を容易にし、顧客体験の把握を通じてサービス品質の安定化に寄与し、クラウド開発運用課の業務にも大きな変化をもたらした。小林氏は次のように話す。
「従来は、何らかのシステム不具合が検知・通報されると、深夜でもPCを立ち上げてシステムにアクセスし、ログ収集と状況確認を行ってきました。現在は、New Relicのモバイルアプリからリアルタイムで『何が起こっているのか』を把握できますので、即座に対処すべきか、少し様子を見た方がよいか冷静に判断できます。New Relicによるリアルタイムでの可視化は、問題検知から初動調査までの作業をほぼゼロにしただけでなく、私たちに安心と心の余裕をもたらしています」
クラウド開発運用課メンバーの一日は、ScanSnap Cloudのサービスとシステムのパトロールから始まり、それに半日を費やすこともあったが、「必要な情報はすべてNew Relicが収集してくれる」(小林氏)ようになり業務の中身は大きく変わったという。
「お客様体験の向上と運用効率化を両立させるための、New Relicダッシュボードやスクリプトの開発に力を注げるようになりました。運用業務を次の世代に継承するための環境づくりは着実に進んでいます」と小林氏は話す。
山﨑氏は、マネジメントの視点からNew Relic導入の成果と今後の期待を次のように話す。
「New Relicは、ベテランの経験と知見に支えられてきたScanSnap Cloudの運用を、期待した以上のスピード感でデータドリブンな運用へと変えつつあります。経験の少ない若手でもお客様体験とシステムの状況を即座に把握できるようになって運用水準が底上げされ、後継者問題も解決できる見通しが立ちました。今後はSREチームの編成を視野に、問題が発生してから対処するような『守りの運用』から脱却し、先手を打ってより良いお客様体験を作り込む『攻めの運用』への変革に取り組んでいく考えです」
システム運用変革の効果を他部門でも活用
PFUは、高性能業務用スキャナーに代表される「ものづくり企業」であるとともに、顧客企業にシステム開発・運用サービスを提供する「SI企業」でもある。インフラカスタマサービス事業本部でサービスインテグレーション部を率いる堀河俊介氏は次のように話す。

インフラカスタマサービス事業本部 第二インフラマネージドサービス事業部 サービスインテグレーション部 部長 堀河俊介氏
「New Relicを活用してScanSnap Cloudの運用をモダン化し、ベテランの経験と知見を継承することに成功した自社の取り組みは、私たちがソリューションサービスを提供していく上でも大きな強みとなります。お客様企業のシステムは、クラウドとオンプレミスが複雑に混在するハイブリッド化が進んでおり、私たちはこの領域でのSIビジネスを効率化させるため、オブザーバビリティの導入効果を活用していく計画です」
オブザーバビリティツールの現場経験が豊富なサービスインテグレーション部 マネージャーの末永周一氏は次のように続ける。
「これまで複数のオブザーバビリティツールを活用してきた経験がありますが、New Relic日本法人の技術支援には大変助けられています。アプリケーションパフォーマンス監視を通じたユーザー体験の可視化の威力は非常に大きいですね。運用段階での活用はもちろん、開発段階でアプリケーションの品質を作り込むという観点でもNew Relicの有用性は高いと考えています」

インフラカスタマサービス事業本部 第二インフラマネージドサービス事業部 サービスインテグレーション部 マネージャー 末永周一氏
PFUにおけるオブザーバビリティの活用は、ScanSnap Cloudの運用変革を皮切りに各部門へと広がっていく。小林氏は取材の終盤、各所に付箋の付いた書籍を取り出し、次のように結んだ。
「オブザーバビリティの指南書として『New Relic実践入門』を愛読しています。本書は、システム開発・運用に携わるエンジニア向けに、オブザーバビリティの基礎や考え方が体系的に解説されており、New Relicの実践的な利用法や活用例も詳しく紹介されています。私は、国内でこのような書籍を出されているベンダーを他に知らず、そこにNew Relic 日本法人の他社にはない本気度のようなものを感じました。この会社に間違いはないだろうと判断し、導入後は、実際にその通りだったと確信することになりました。オブザーバビリティの啓蒙と普及活動に尽力する会社だからこそ、信頼できるテクノロジーパートナー足り得るのだと考えており、実際に日頃の細やかなサポートには非常に満足しています。これからも、私たちとScanSnap Cloudに寄り添った技術支援を期待しています」

