利用用途
デジタル戦略の中核を担う重要プロダクト「PATPOST」の売上拡大に向けて、オブザーバビリティをNew Relicで実現。ユーザーの活用状況など観測データをセールス、マーケティング、カスタマーサクセス、エンジニアリングの各チームで共有し、それぞれの活動や連携を強化
New Relicの導入目的と成果
- 事業成長を共通ゴールに、ユーザーによるプロダクトの使用状況を可視化し、セールス、マーケティング、カスタマーサクセス、エンジニアリングチーム横断での活用を推進
- 「お客さまの声」を起点に最短でプロダクトを改善するMVP戦略をデータドリブンで加速
- セールス/マーケティングチームでは、PATPOSTの生きたユースケースをNew Relicを通じて収集し、プロダクトや機能の売り込み先・訴求方法の的確性を向上
- インサイドセールスでは、無料期間中のユーザーや既存顧客の育成・拡販を加速
- カスタマーサクセスチームでは、トラブルを解決するスピードが従来の2倍にアップ
- エンジニアリングチームでは、システム障害の原因特定に要する時間が従来の平均15分から1~2分へとドラスティックに短縮し、より本質的な開発業務へ集中
- 開発パートナーではサービス品質やユーザー体験の改善活動への主体性が向上し、協業強化へ
利用製品
- New Relic APM
- New Relic Synthetics
- New Relic Browser
- New Relic Logs
- New Relic Dashboard
- New Relic Infrastructure
- New Relic Alerts
オリックスは1964年の設立以来、リース事業とそれに隣接した事業を多角的に展開し、成長・発展を遂げてきた。今日では約1,400社の連結子会社・関連会社(2025年9月末現在)からなるオリックスグループを形成し、法人金融、産業/ICT機器、環境エネルギー、自動車関連、不動産関連、事業投資・コンセッション、銀行、生命保険などの事業をグローバルに展開する。
同社において、「攻め」と「守り」の両面からDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しているのが、法人営業本部内に2021年に創設されたデジタル戦略推進室だ。
そのミッションについて、室長の長澤 拓馬氏は「我々はいわゆる“攻めのIT戦略”を遂行する組織です。例えば、今日では法人営業の新しいスタイルとして、デジタルツールを使ってお客さまとつながり、ニーズを把握してオンラインで提案していくことを追求していかねばなりません。そのための仕組みを企画・開発・提供することが、我々の使命の1つです」と説明する。
オリックス株式会社 法人営業本部 副本部長 兼 デジタル戦略推進室長 長澤 拓馬氏
デジタル戦略推進室のもう1つのミッションは、法人顧客のDXを支援するITプロダクトを提供することだ。長澤氏は「法人のお客さまに向けてオリジナルのITプロダクトを提供し、拡販することは、お客さまとのつながりを強化するうえで非常に重要です。また、クラウド(SaaS)型のプロダクトを提供し、売上げを伸ばすことができれば、当社のROA(Return On Assets:総資産利益率)が高められるという経営効果も生まれます」と説明する。
デジタル戦略推進室ではすでに、法人顧客や税理士・会計事務所のDXを支援するSaaSプロダクトを提供している。それが、生成AI-OCR技術を活用した文書管理サービス「PATPOST」だ。これは、生成AI-OCRによって多様な文書を読み取り、そこから欲しい情報だけを抽出したり、文書の要約・判定を行ったりできるサービスだ。文書の管理機能としてストレージ機能やキーワード/範囲指定検索機能を備え、電子帳簿保存法にも対応する。
同プロダクトのセールスおよびマーケティングをリードするオリックス 法人営業本部 デジタル戦略推進室 事業推進チーム長の石原 亨氏は「PATPOSTは2023年5月のリリース以降、中堅・中小のお客さまを中心に導入が勢いよく進みました。顧客数は2025年11月時点で2,000社を突破しています」と明かす。
オリックス株式会社 法人営業本部 デジタル戦略推進室 事業推進チーム長 石原 亨氏
PATPOSTの活用状況を「New Relic」で可視化し、企画・開発・運用・サポートの全チームによる共有を推進
PATPOSTの顧客数が堅調に伸びるなか、さらなる売上拡大に向けた課題も見えてきた。長澤氏は「最大の課題は、PATPOSTをお使いのお客さまが個々に『どの機能をどう使っているのか』『どの機能に満足し、何に対して不満を感じているか』を把握するためのシステムを持っていなかったことです」と述べ、こう続ける。
「我々は、PATPOSTに関して、必要最小限の機能を備えたプロダクトをクイックにリリースし、お客さまからのフィードバックをもとに機能の追加、改善を図っていく『MVP(Minimum Viable Product)』の方針を採用しています。お客さまの数が少なければ直接ヒアリングをかけ、フィードバックを収集できますが、顧客数が数千社の規模になると、人手に頼ってフィードバックを収集しようとするのは現実的ではなくなります。ゆえに、お客さまによるプロダクトの使用状況をリアルタイムに可視化できるシステムが必要とされました。また、可視化のシステムがあれば、MVPの戦略を有効に機能させられますし、セールスやマーケティング、カスタマーサクセスのお客さま理解を深化させ、PATPOSTの一層の売上拡大が図れると考えました」
PATPOSTでは、長澤氏のいう「ユーザーの使用状況を可視化するシステム」として「New Relic」を活用している。New Relicは業界を代表するオブザーバビリティプラットフォームであり、国内では48%のトップシェアを獲得している。デジタルサービスにおけるあらゆる重要指標の「観測」を可能にし、アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化することが可能だ。
PATPOSTのエンジアリングを担当しているデジタル戦略推進室 テクノロジー戦略チーム主任の牧野 友氏は、オブザーバビリティプラットフォームを採用した背景について次のように説明する。
「PATPOSTを使うお客さまの状態をリアルタイムに可視化するうえでは、システムを構成するあらゆる要素からデータを収集し、アプリケーションの挙動やユーザー体験を可視化できるオブザーバビリティの実現が適切であると判断しました。また、オブザーバビリティ製品のダッシュボードを使えば、セールス、マーケティング、カスタマーサクセス、そしてエンジニアリングの各チームが、お客さまによるPATPOSTの使用状況をリアルタイムに把握し、それぞれの活動に生かせると考えました」
オリックス株式会社 法人営業本部 デジタル戦略推進室 テクノロジー戦略チーム 主任 牧野 友氏
続けて牧野氏は、数あるオブザーバビリティ製品の中からNew Relicを選定した理由について「PATPOSTの運用にフィットしたユーザー数ベースの料金体系が選べる点や、導入時のオンボーディングから活用フェーズのコンサルティングサービスやテクニカルサポートまで、他社とは比較にならないほど充実している点を高く評価しました。また導入当初から、オブザーバビリティを単なる障害対応ツールで終わらせず、『事業成長』のためのデータプラットフォームとして関係者全員が活用するというビジョンを提示いただき、コンサルティングいただけたことも大きかったですね」と振り返る。
PATPOSTでは、エンジニアリングチームが中心となって2024年9月からNew Relicの導入プロジェクトを始動させた。半年ほどをかけてNew Relicの試験的な活用を行いながらオブザーバビリティ基盤を整え、のちにセールス、マーケティング、カスタマーサクセスの各チームにNew Relicを展開する作業に着手した。2025年5月には、エンジニアリングチームに加え、インサイドセールスとカスタマーサクセスチームが他チームに先行するかたちでNew Relicの活用を本格的にスタートさせている。
PATPOSTの企画・営業・サポート・技術の全チームがユーザーの理解を深めて業務プロセスを変革
New Relicによる観測結果のチーム間での共有は、New Relicのダッシュボードを介して行われ、ダッシュボードでは「顧客全体におけるPATPOSTの使用状況」と「ユーザーごとのPATPOSTの使用状況」の双方が把握できるようになっている。また、各チームのダッシュボードには、それぞれの情報ニーズに応じたカスタマイズも加えられている。
すでに、エンジニアリングチームと、オリックスの連結子会社であるオリックス・ビジネスセンター沖縄でPATPOSTのカスタマーサクセスを担当しているチームではダッシュボードの構築が完了している。また、それ以外のチームに向けたダッシュボードの整備も鋭意進められている。
PATPOSTの関係各チームでは、New Relic活用の進度に違いはある。ただ、それぞれのチームが、New Relicの活用により相応の効果を得ているという。以下、各チームの状況について触れておきたい。
■ セールス&マーケティングチーム ~ ”生きたユースケース”の把握にNew Relicを活かす
PATPOSTのセールスとマーケティングを担当する石原氏のチームでは、New Relicの本格的な活用はこれからの段階ではあるものの、潜在顧客に対するセールス、マーケティングのアプローチをより有効なものにできるという手応えをすでに感じている。
石原氏は「PATPOSTのセールス、マーケティングを展開するうえでは、どの業種のお客さまが実際にどの機能をどう使っているかの生きたユースケースを把握し、同業他社への提案に生かせるようにすることが重要です。New Relicの活用には、人手をかけずにユースケースの収集・把握が可能になるという効果が大いに期待できます」と指摘し、こう続ける。
「2025年4月にPATPOSTにAIを使った新機能(指定項目抽出AI機能)を追加しましたが、New Relicのデータを調べたところ、同機能を頻繁に使っている業種や、活用の形態が特定でき、結果として、新機能をどの業種に、どう訴求すべきかが明確になりました。現在は、牧野のエンジニアリングチームと協力しながら、機能ごとのお客さまの使い方をスポットで簡単に調べられるダッシュボードの構築や、業種ごとのユースケースを深掘りできるような環境の構築を進めています」
一方、PATPOSTのインサイドセールスを担当するチームにおけるNew Relicの活用も始まっている。同チームを統括する長澤氏は「PATPOSTのインサイドセールスチームは、本プロダクトの無料期間中のお客さまにアプローチして継続利用に結びつけることや、既存のお客さまにPATPOST活用の幅を広げていただくアップセルの推進をミッションとしています。活動をより的確で効率的なものにするには、無料期間中のお客さまや既存のお客さまが、PATPOSTをどう使っているかを把握したうえで『誰に対して、どうアプローチするか』を決めていかなければなりません。その決定を下すための情報源として、New Relicが有効に活用されています」と説明する。
インサイドセールスで活用する、ユーザーのアクション内容が可視化されたダッシュボード
■ カスタマーサクセスチーム ~ ユーザーの問題解決のスピードが従来の2倍に向上
PATPOSTのカスタマーサクセスを担当するオリックス・ビジネスセンター沖縄のチームでは、2025年5月からNew Relicのダッシュボード活用をスタートさせている。
オリックス・ビジネスセンター沖縄の第4事業部eサービスチーム、立石 恭平氏は「我々のチームでは、New Relicのダッシュボードを使いながら、PATPOSTに関するお客さまの問い合わせに対応するスピードをアップさせています」と述べ、次のような説明を加える。
「カスタマーサクセスチームでは以前、エラー発生時のお客さまからの問い合わせに対して、トラブルの原因を即座につかむための環境を有しておらず、都度、エンジニアリングチームに確認の依頼をかけていました。そのため、お客さまのトラブルを解決するために平均20分~30分の時間を費やしていたのですが、New Relicの導入以降は、カスタマーサクセスチーム側でトラブル原因の切り分けが行えるようになり、エンジニアリングチームとの連携がすばやくスムーズに図れるようになっています。結果として、お客さまのトラブルを解決する時間が平均10分に短縮されています。言い換えれば、New Relicの活用によって、お客さまの問題を解決するスピードが従来の2倍にアップしたということです」
オリックス・ビジネスセンター沖縄株式会社 第4事業部 eサービスチーム 立石 恭平氏
加えて、立石氏はNew Relic活用の効果についてこうも指摘している。
「お客さまによるPATPOSTの使用状況が可視化された『ヘルススコアダッシュボード』により、個々のお客さまの状況がつぶさにとらえられるようになったことで、カスタマーサクセス業務の一環としてお客さまにアプローチする際に、そのお客さまがPATPOSTの活用を巡り、どのようなことに困っているのかを事前に把握できるようになりました。これにより、適切なアドバイスが届けられるようになっています」
■ エンジニアリングチーム ~ システム障害原因の特定スピードがドラスティックに向上
エンジニアリングチームでは、New Relicの活用により、PATPOSTにおける障害の原因を特定するスピードを大幅にアップさせている。この点に関して、牧野氏は次のような説明を加える。
「New Relicの導入以前は、PATPOSTのシステムについて監視し切れていない部分があり、その部分でエラーが発生すると、お客さまからの問い合わせを受けるまで障害の発生に気づけない状況でした。New Relicの導入以降は、PATPOSTのシステム全体をくまなく監視できるようになり、障害の発生時にはアラートが担当エンジニアのもとに飛ぶようにしてあります。単純なエラーであれば、アラートを見るだけで原因がわかるようになっているので、障害原因の特定には1分程度の時間しかかかりません。これにより、障害への対応スピードもアップしています」
牧野氏によれば、アラートは毎月50件程度発報され、それぞれの原因を特定する時間は従来の平均15分から1~2分程度に短縮されているという。同氏は「1件のエラー原因を特定する時間が15分から1~2分に短縮されたというのは、効果としてかなり大きいと感じていますが、エンジニアたちは、障害対応時間の短縮によって生まれた時間を、より生産的な本来業務に充てています。それによってもたらされる効果も相当大きくなると見ています」と付け加える。
さらに牧野氏のチームでは、New Relicの観測結果を社内の各チームのみならず、PATPOSTの開発パートナーとも共有しており、これによって開発パートナーが能動的にPATPOSTのサービス品質やユーザー体験を改善しようと動き始めているという。「これは、過去には見られなかったような開発パートナーの意識の変化です。オブザーバビリティを軸に、両社の協業が強化される手応えを感じています」と、牧野氏は付け加える。
New RelicをSaaSプロダクトの売上拡大の「要」に
以上に示したNew Relic活用による効果や期待を踏まえつつ、PATPOSTの関係各チームは、活用の今後を以下のように展望している。
オリックス・ビジネスセンター沖縄の立石氏は「実をいえば、問い合わせに受動的に対応する以外の、攻めのカスタマーサクセスのサービスは、New Relicの導入を機に始めたものです。それまではカスタマーサポートに特化していましたが、New Relicでお客さまの使用状況が見られることで、お客さまへのより能動的なアクションに結びつけられるとの確信が得られました。これからもサービスの幅を広げるために、お客さまによるPATPOSTの使用状況の可視化と分析の強化に力を注いでいきたいと考えます」と抱負を語る。
牧野氏は「エンジニアリングチームは、New Relicによってシステム監視の基盤を整えるだけでなく、セールス、マーケティング、カスタマーサクセスなど、非エンジニアリングチームにおけるNew Relicの活用を推進する立場にあります。エンジニアではないメンバーにとって、自然言語を通じてNew Relicから欲しい情報が引き出せるAI機能の利便性は高く、今後はAI機能の有効活用を図っていきます」と明かす。
また、石原氏は「セールスとマーケティングのチームは、New Relicの活用の入り口に立った段階という状況ですが、牧野のチームによる支援を仰ぎながら、活用レベルを上げていき、PATPOSTの売上を伸ばしていきたいと願っています」とする。
この言葉を受けたかたちで、長澤氏は次のように述べている。
「New Relicの活用を通じて、オブザーバビリティがPATPOSTというSaaSビジネスの売上拡大に欠かせないソリューションであり、『要』の存在であると感じています。オブザーバビリティを備えていることで、どれだけお客さまの数が増えて顔が見えにくくなったとしても、その声を目にみえるデータに変えて、関係者全員がプロダクトの価値やサービスの向上のため前進することができます。事業成長というゴールに向けたその歩みを、共に高い視座で伴走いただけるNew Relicの皆さんの存在も大きいものです。
すでに複数の領域で目に見える効果が上がっており、今後は、PATPOST以外のプロダクトにもNew Relicを適用していきたいと考えます。加えて、お客さま向けのプロダクトだけではなく、社内システムもNew Relicによるオブザーバビリティを実現し、運用・管理の効率化を図ることも視野に入れています。New Relicの皆さんにはこれからも革新的なテクノロジーや質の高いサポート、そして優れた提案を期待しています」
参考情報:
オリックスが提供する、高精度AI-OCR搭載の文書管理サービス「PATPOST」公式サイト
https://patpost.jp/