利用用途
フィットネスジムや介護施設に設置された防犯カメラ映像のAI解析を通じて、人に依存しない施設運営を実現する「GYM DX」「Kaigo DX」のサービス品質向上にオブザーバビリティを活用
New Relicの導入目的と成果
- 1,700台を超えるエッジデバイスとAWS上のサービス基盤の統合的な監視
- エッジデバイスの稼働状況、録画データの生成率などを正確に把握可能に
- エッジデバイスの不調時にクラウドへの自動切換え、復旧時の自動切り戻しを実現
- 最大12時間を要していたインシデントの検出時間(MTTD)を5分以下に短縮
- 最大1時間を要していた原因究明にかかる時間(MTTI)を10分以下に短縮
- 月間20万件のエラー通知アラートが300件に減少し、エンジニアの働き方に寄与
- AWS統合監視・個別施設監視が可能で、1デバイスあたりのコストメリットが圧倒的なNew Relicを評価
- システム監視、問題検知、解決にかかる総コストを削減するとともに、サービス品質の向上に貢献
利用製品
- New Relic Infrastructure
- New Relic Logs
- New Relic Dashboards
名古屋市に本社を置くOpt Fitは、『AIカメラで人に依存しないビジネスモデルを再構築し、持続可能な社会インフラを築く』というミッションを掲げ、フィットネスジムや介護施設向けに高付加価値の「AIカメラ監視サービス」を提供する注目のベンチャーである。主力サービスである「GYM DX」は、提供開始からわずか3年で、全国およそ2,300の施設に28,000台を超えるAIカメラを導入するまでに成長した。同社 取締役CTOの荒川準也氏は次のように話す。
「フィットネスジム向けの『GYM DX』でAIカメラ監視サービスの市場を創造し、同じテクノロジーを採用した介護施設向けの『Kaigo DX』も本格的な成長期に突入しました。施設を運営するお客様には、安全を確保しながら省力化できるメリットを高くご評価いただいています。2025年11月にはシリーズBラウンドで総額7.8億円の資金調達を達成するなど、さらなるビジネス成長に向けた準備を整えました」
荒川氏は大手自動車メーカー系システム開発会社に新卒入社し、23歳でAI開発企業を立ち上げた経歴を持つ。その後、現・代表取締役CEOの渡邉昂希氏と意気投合し、株式会社Opt Fitを設立したのは2020年である。両名ともForbes 30 UNDER 30 ASIAに選出されている若きイノベーターだ。
「24時間ジムや無人営業ジムなどの普及とともに、深夜・早朝などスタッフの目が届かない時間帯の事故やトラブルが増えています。GYM DXは、ジム専用の防犯カメラで死角を解消するとともに、施設内で発生した異常事態をAIが検知してリアルタイムで通知し、お客様の安全な施設運営に貢献します。たとえば、倒れている人、動かない人などを高精度で検知することで、急病やマシンの重り落下などで動けなくなった会員様への迅速な対応も可能になります」(荒川氏)
取締役CTO 荒川 準也 氏
さらにGYM DXは、マシンごとの利用率を可視化する「マシン・エリア利用率分析」により、施設運営者のデータに基づく経営判断を支援する仕組みも備えている。ジム会員向け提供しているサービス「リアルタイム混雑状況配信」も好評だ。
「Opt Fitでは、GYM DXの高付加価値なAIカメラ監視サービスを実現するために、エッジデバイスとパブリッククラウドが効果的に連携する独自のAIシステムを開発しました。エッジデバイスで第1段階のAI解析を行い、必要があればクラウド上で第2段階のAI解析を行うことで、扱う映像データを効果的に絞り込みながら異常検知の精度を高めることに成功しています」と荒川氏は話す。
2025年9月、Opt FitはオブザーバビリティプラットフォームNew Relicを採用し、GYM DXのサービスを支えるハイブリッド環境の監視の統合化、トラブルシューティングの迅速化、サービス品質の更なる向上を目指して活用を開始した。
1,700台のエッジデバイスを低コストで監視
New Relicは業界を代表するオブザーバビリティプラットフォームであり、国内では48%のトップシェアを獲得している。デジタルサービスにおけるあらゆる重要指標の「観測」を可能にし、アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化する。Opt Fit開発部 部長の西和弥氏は次のように話す。
「GYM DXでは、お客様は防犯カメラの動画をリアルタイムで参照でき、特定のエリアやマシンを指定して録画を確認することもできます。24時間365日体制でインシデントに対応しており、必要に応じて対応可能な手順を整えています」
開発部 部長 西 和弥 氏
防犯カメラ映像、中でも録画データはその性格上「途切れ」があってはならない。だが、西氏を含むシステム運用の担当者には、不調を知らせる連絡が昼夜を問わず飛び込んだ時期もあったという。
「クラウドはAWSが提供するツールで監視できますが、録画や異常検知、混雑検知などを担うエッジデバイスの監視は私たちが手作りしたツールを使用してきました。エッジデバイスのステータスが10分おきにSlack通知されるその環境では、不調が検知されたデバイスにSSHで接続して原因を探り、必要な対応を判断する必要がありました。軽微なエラーが多く、本当に重大な問題に気づきにくいことも大きな悩みでした」と西氏は振り返る。
エッジでの録画、AI推論(危険検知、混雑検知)などを担うOpt Fitが自社開発したエッジデバイス。筐体内にはシングルボードコンピューターを4枚実装できる。
エッジデバイスが1,000台を超えた2025年、西氏は「人手に頼るやり方は限界」と判断しオブザーバビリティツールの導入検討に着手した。エッジとクラウドが連携するGYM DXシステムの監視設計を手掛けたのは、開発部 SRE(パートナー)の上田昂明氏である。
「1,700台を超えるエッジデバイスの監視を効率化するとともに、AWS上のインフラとアプリケーションを統合的にモニタリングできることを要件としました。複数の製品を比較しましたがNew Relicの優位性は圧倒的でした。New Relic は1デバイスあたりのコストが他製品の1/5~1/6に抑えられるのです。1,700台規模のエッジデバイスを監視するには、New Relic以外の選択肢はなかったと言っていいでしょう」(上田氏)
開発部 SRE(パートナー) 上田 昂明 氏
New Relicで「サービスを止めないシステム」を作る
New Relicの導入により「人がシステムを見に行く」監視は一掃された。エッジ-クラウドを網羅する統合的なダッシュボードが整備され、SSH接続することなく「いつでもシステムの状態が見える」ようになったのである。上田氏は、New Relicによる監視設計のポイントを次のように話す。
「エッジデバイス1,700台に対して、CPU・メモリ・ディスクの使用率などを監視しています。さらに、カスタムイベントの収集が容易なNew Relicの機能性を活かして、正常に録画してファイルを生成できているか、AWS IoT Greengrassなどの周辺のコンポーネントの状態はどうか、を把握できるようにしました」
「店舗にあるカメラごとに、映像ファイルの取得状況をリアルタイムで把握できるようになったことは非常に大きな成果です。この『録画データ生成率』の推移を時系列で確認することで、たとえば映像の瞬断が発生した時に、原因がエッジデバイスの不調なのか、それ以外かの切り分けが容易になりました。問題解決迅速化にも大きく寄与しています」(西氏)
New Relicの導入で、最大12時間を要していたインシデントの検出時間(MTTD)は5分以下に、原因究明にかかる時間(MTTI)は最大1時間が10分以下にまで短縮されたという。さらに、New Relicの観測データの活用を高度化することで、「サービスを止めないシステムを作る」というチャレンジでも大きな成果が得られた。
「エッジデバイスで不具合が発生したとき、録画をクラウド側に自動で切り替える、不具合が解消したときに自動でエッジに戻す、という仕組みを作り込みました。New Relicが観測した録画生成率や録画関連コンポーネントのステータスなど、一定の条件が揃ったときに録画の自動切り替え・切り戻しを実行します。エラーの通知件数は月に20万件を超えていたこともありましたが、この自動化の仕組みが導入されて以降は月300件以下にまで削減できました」(西氏)
New Relicを活用した「サービスを止めないシステム」の実現は、エンジニアによる調査・判断・復旧にかかる負担を劇的に軽減させた。
エンジニア組織の意識と行動が変わった
New Relicは、エッジ-クラウドを観測するプラットフォームとしてOpt Fitのエンジニアチームに定着し、観測データに基づく意思決定がGYM DXのサービス品質向上に結びついている。西氏は次のように話す。
「New Relicがエッジとクラウド共通の監視ツールとなり、観測データをもとにしたエンジニア間のコミュニケーションがとてもスムーズになりました。また、『ここを可視化できると事前に手が打てるね』『このメトリクスを取れれば自動化をさらに進められるね』といった議論が始まったことも嬉しい変化です。エンジニア組織の意識と行動が変わりつつあることを実感しています」
一方、カスタマーサービス部門でもNew Relicの観測データの活用が始まっているという。CS部CS戦略企画担当の中村有見氏は次のように話す。
「お客様施設のプロダクト活用度を、GYM DXのダッシュボードへのアクセス数を指標として評価しています。現在は、New Relicが取得した観測データをグラフ化して週次で検討し、CS部としてお客様満足度の向上に役立てる取り組みが中心です。今後は、『急に使い始めた』『最近使わなくなってきた』といった傾向を把握しながら、お客様へのサポートやコミュニケーションに活用していきたいと考えています」
CS部CS戦略企画 中村 有見 氏
荒川氏は、「New Relicはシステム監視、問題検知、解決にかかる総コストを削減するとともに、サービス品質の向上に着実に貢献してくれている」と話しつつ、次のように結んだ。
「オブザーバビリティが提供する最大の価値は、システムの安定稼働を通じた『お客様サービスの品質向上』にあると考えています。同時に、レピュテーション(評判)リスクを下げて、信用やブランド価値を守ることもオブザーバビリティの重要な役割です。私たちは『人に依存しない施設運営』を実現するために、AIカメラ監視サービスをさらに進化させていきます。Opt Fitの急成長は続きます。New Relic日本法人には、私たちのNew Relicの活用をより高度化するための技術サポートを期待しています」