利用用途
工務店やリフォーム店などおよそ3万のユーザーが商品検索・見積依頼・発注・納期確認を行う営業フロントシステム「CRASFL(クラスフル)」と、これと連携するバックエンドの「SAPサプライチェーンロジスティクスシステム」を一貫して可視化する共通基盤としてNew Relicを活用
New Relicの導入目的と成果
- WebフロントからバックエンドのSAP S/4HANAまで多段で連携するリアルタイム処理システム全体の可視化
- 1週間を要していた難易度の高いトラブルシューティングを数時間に短縮
- 問題の原因特定に要していた時間を1年間でおよそ200時間削減
- 開発者が自らアプリケーションの状況を把握し、自律的に改善に取り組める仕組みを定着化
- システムごとの運用担当者がNew Relicの観測データを共有し、担当領域の壁を越えて迅速なトラブルシューティングが可能に
利用製品
- New Relic APM
- New Relic Infrastructure
- New Relic Dashboard
- New Relic Alerts
- New Relic Monitoring for SAP Solutions
LIXILは、トイレ、お風呂、キッチンなどの「水まわり製品」、窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの「建材製品」におけるリーディングカンパニーとして、『世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現』に向けてグローバルにビジネスを展開している。トステム、INAX、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリアの5社が事業を統合し、LIXILが誕生したのは2011年である。同社 デジタル部門でJapan SAP DevOps.チームに所属する藤江寿紀氏は次のように話す。
「LIXIL誕生から15年、SAP S/4HANAをGoogle Cloud上で稼働させる巨大プロジェクトは、いよいよ最終段階に入りました。基幹システムの刷新と統合、オンプレミスからクラウドへの移行は、LIXILの成長戦略を支える最重要の取り組みのひとつです。私自身はBasisエンジニアとして、SAP S/4HANAを稼働させる堅牢かつ安定したシステム基盤を提供するとともに、様々な技術的課題の解決を通じてプロジェクトを成功へ導くミッションを担っています」
株式会社LIXIL Japan SAP DevOps. Japan SoR DevOps. Digital 藤江寿紀氏
LIXILでは、SAP S/4HANAによるサプライチェーンロジスティクスシステムをバックエンドとして、これと連携して顧客向けに様々なサービス提供を行うシステムを整備している。デジタル部門で国内向けセールスフロントシステムを担当する徳田和貴氏は次のように説明する。
「工務店様やリフォーム店様向けに提供する『CRASFL(クラスフル)』は、建材製品の売上のおよそ50%を扱う重要な営業フロントシステムです。3万を超えるユーザー様に、商品検索、見積依頼、発注、納期確認などの用途で日々ご利用いただいています。CRASFLは、SAP S/4HANAによる販売管理・在庫管理システムと多段で連携しており、リアルタイムで複雑かつ高負荷の処理を実行しています」
徳田氏はインフラ領域での経験を活かして、CRASFLとSAP S/4HANAが連携するシステム全体で共通基盤として利用できる「オブザーバビリティ環境」の整備に取り組んでいる。
「営業フロントシステムから基幹システムに至る『多段のプロセス』のどこで遅延や問題が発生しているのかを正確に把握し、原因の特定と問題解決を迅速化して、ユーザー体験を損なわない安定的な運用を確保することがオブザーバビリティ導入の最大の狙いです。慎重な検討を経て採用したのはNew Relicでした。この最先端のオブザーバビリティプラットフォームを活用し、開発から運用までのサイクルをより高速化するとともに、サービスの信頼性を最大化すること目指しています」
株式会社LIXIL Japan Sales Front DevOps. Japan SoR DevOps. Digital 徳田和貴氏
多段のシステム/プロセスを一気通貫で可視化
New Relicは業界を代表するオブザーバビリティプラットフォームであり、国内では48%のトップシェアを獲得している。デジタルサービスにおけるあらゆる重要指標の「観測」を可能にし、アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化する。徳田氏は次のように続ける。
「営業フロントシステムのサービスは、CRASFL、Apigee、SAP Front、SAP PI、SAP S/4HANAがリアルタイムに連携して提供されます。各システムには運用を担当するエンジニアがおり責任範囲も分かれています。これらの共通基盤としてNew Relicを導入し、営業フロントシステムから基幹システムに至るプロセス全体を可視化することで、担当領域の壁を取り払い、関係者が緊密に連携した問題解決が可能になると考えました」
従来、エンドユーザーの体験を損なうような問題が発生したときには、フロントからバックエンドへ順にエスカレーションしながら、各システムの担当者がそれぞれ原因を探り問題を切り分けていったという。この手順では、問題解決の迅速化には限界がある。
「New Relicでは、システム単体ではなく『お客様が利用するサービス』の視点でプロセス全体を可視化し、Google Cloud上のインフラからアプリケーションまでフルスタックでパフォーマンスボトルネックを探ることができます。New Relicの観測データを関係者全員が共有し、これを共通言語としながら問題解決に向けた意思決定とアクションを加速できると期待しました」(徳田氏)
オブザーバビリティ製品としてSAPの認証を取得
LIXILでは、営業フロントシステムCRASFLに2020年からNew Relicを活用しており、2025年3月にバックエンドのSAPシステムへの適用を開始した。Basisエンジニアである藤江氏は次のように話す。
「過去に、CRASFLで受注した商品の納期回答でレスポンスが悪化したことがありました。この時の原因調査では、遅延の発生したSAPのトランザクションを特定して応答時間の内訳を出力し、Excelで集計・分析するような作業が必要でした。New Relicでは、こうした手間をかけることなく即座に必要なデータが可視化できるので、原因の特定から必要なアクションまでを迅速に行えます」
New Relicは、SAP社より認証を取得している、自社開発製品としては唯一のオブザーバビリティ製品である(2026年3月現在)。SAPアプリケーション(ABAP、SAP HANA、SAP BTP、Java、SAPと連携するアプリ)によるプロセスとトランザクション全体をリアルタイムで可視化するSAP Monitoringの機能が評価され、ミッションクリティカルなエンタープライズ環境での支持を急速に拡大させている。
「SAPが提供する標準ツールはSAP内部の詳細な診断が可能ですが、レスポンス悪化などの状況を俯瞰的に捉えて迅速にアクションに結びつけるにはNew Relicに明らかな優位性があります。WebフロントからバックエンドのSAPシステムまでを一貫して見通して、システム間連携のレスポンスを観測し可視化できるという点も、New Relicの非常に優れた機能性です」と藤江氏は評価する。
自律的な運用マインドの醸成とIT組織の変革
CRASFLでは、New Relicが不具合を検知するとアラートが発報され、関係者のチャットに通知される仕組みが整備されている。Japan Sales Front DevOps.でCRASFLの開発・運用・保守を担当している庄嶋篤氏は次のように話す。
「問題の一次切り分けに必要な情報を網羅したNew Relicダッシュボードを参照することが最初のアクションです。レスポンス悪化の原因がリソース不足なら、サーバーをスケーリングさせるような判断を即座に行います。アプリケーション側の問題であれば、New Relic APM(アプリケーションパフォーマンス監視)を使ってコードレベルまで原因を深掘りし、アプリ開発チームと協力しながら解決します」
New Relicは、CRASFLでのセッションエラーの原因がユーザーの操作に起因していることを突き止めるなど、インフラ視点での監視では困難な不具合原因の特定と解決に目覚ましい成果をあげてきた。
「お客様にCRASFLを快適にご利用いただける環境を提供し続けることが私のミッションです。そのために、不具合をいち早く解決するだけでなく、潜在的な問題を把握して遅延などが発生する前に手を打つことを心がけています。New Relicは、CRASFLのサービス品質と信頼性を高めていくために欠かせないツールです」(庄嶋氏)
株式会社LIXIL Japan Sales Front DevOps. Japan SoR DevOps. Digital 庄嶋篤氏
New Relic活用の定着化とともに、エンジニア組織に「システム運用に対する意識の変化」が生まれつつあるという。徳田氏は次のように話し手応えを示す。
「New Relicという共通基盤が整備され、アプリケーション開発者自身が『自分の書いたコードがどう動いているか』を把握できるようになったことは非常に大きな変化でした。また、New Relicの観測データが共通言語となり、システム担当者間の壁、アプリとインフラの壁を越えた問題解決の迅速化も進んでいます。誰かが問題を把握したら即座に連携して対処する、お客様視点でより良いサービスを追求する『自律的に行動するエンジニア組織』への変革を、New Relicが後押ししていると感じています」
予測検知を高度化するNew RelicのAIOps
New Relicは、ミッションクリティカルなCRASFLとSAP S/4HANAシステムを、エンドツーエンドで支える共通基盤として着実に役割を高めている。New Relicを活用することで、問題の原因特定に要していた時間を1年間でおよそ200時間削減するような成果も出ているという。
「CRASFLのフロントからバックエンドまでレスポンスタイムを継続的に観測しており、日次・週次・月次で評価ミーティングを実施しています。一定期間でのパフォーマンス傾向を分析し、問題発生の予兆を注意深く探りながら、何らかの不具合が潜んでいないかを調査しています。今後は、不具合への『事後対応』だけでなく『未然防止』に役立つようNew Relicの活用を深化させていく考えです」(徳田氏)
「未然防止」を可能にする機能として3人が共通して期待を示すのが、New RelicのAI Monitoringと予測機能だ。藤江氏は次のように話す。
「顕在化の迫る不具合を予測したり、発生した問題に対し重要度・緊急度を示したり、問題解決の方法をアドバイスするようなNew RelicのAI機能に期待しています。私たちが適切なアクションを行うために必要な情報を提示できるのは、観測データを網羅的・横断的に相関分析できるNew Relicだけでしょう。ミッションクリティカルな私たちの環境だからこそ、今後はAI機能の戦略的かつ合理的な活用が欠かせないと考えています」
「New Relicには私たちのDevOpsを加速させるインテリジェントな進化を期待している」と話しつつ徳田氏は次のように結んだ。
「今後は、システム監視の枠を超えてお客様体験の最適化とビジネス損失の抑止に注力していく考えです。そのためにSAPモニタリングを強化しながらエンドツーエンドのサービス監視を追求し、真の意味での『信頼性の高いシステム』の実現を目指します。また、CRASFLでの成功事例をもとに、実際に得られた効果を示しながらNew Relicの横展開を進めていきます。それが、LIXIL全体の利益につながると確信しているからです。New Relic日本法人には、ミッションクリティカル環境へのオブザーバビリティの適用という私たちの挑戦を継続的にサポートしてもらえることを願っています」