6月、New Relicは画期的なイベント、New Relic Now 2025を開催しました。本イベントには、業界の最前線で活躍するエンジニアやITプロフェッショナルの方々が多数参加し、オブザーバビリティ(可観測性)の未来について活発な議論が交わされました。
特に印象的だったのは、オブザーバビリティが単なる障害対応のツールに留まらず、ビジネスの成長やイノベーションを加速させるための重要な要素へと進化している点です。
本記事では、残念ながら当日参加できなかった皆様に向けて、イベントで発表された特に注目すべき新情報や、開発のヒントとなるような知見をまとめてご紹介します。
現代企業のためのインテリジェンスシステム
今回のイベントで、New Relicはオブザーバビリティの未来像として「インテリジェンスシステム」という新たなビジョンを発表しました。これは、APM(Application Performance Management)のパイオニアとして始まったNew Relicが、現在の統合オブザーバビリティプラットフォームの在り方をさらに進化させ、再定義しようとするものです。
このビジョンを実現するため、New Relicプラットフォームは大きな変革を遂げます。これまでの「問題が起きてから対応する」という事後対応的なアプローチから、「問題を予測して最適化し、さらには自動で修復する」という、よりプロアクティブな世界を目指しています。
その中核を担うのが、生成AIと、自律的にタスクを遂行するAgentic AI(エージェントAI)です。これらのAIが、複雑なシステム全体からリアルタイムで価値ある洞察(インサイト)を引き出してくれます。
このインテリジェンスシステムは、New Relicが提供する統合的かつスケーラブルなプラットフォーム上で機能します。メトリクス、イベント、ログ、トレースといった基本的なテレメトリデータはもちろん、脆弱性情報、ビジネスデータ、コストデータ、さらにはRunbookや検索拡張生成(RAG)で連携されたドキュメントまで、システムに関するあらゆるデータを一元的に集約し、それらを相互に関連付けて分析できるように設計されています。
New Relicを差別化する主な強み
基調講演では、New Relicプラットフォームの独自の強みについて強調しました。
- 統合型オブザーバビリティ:あらゆるシステムにわたるメトリクス、イベント、ログ、トレースの信頼できる唯一のソース
- AIを活用したインサイト:生データだけでなく、実用的な成果を提供する革新的な機能
- 統合エコシステム:既存ツールとのシームレスなインテグレーションにより、チームの業務環境に合わせた柔軟な対応が可能
これらの特性により、New Relicは、サイロ化されたツールや時代遅れのアプローチに制約を受けている競合他社とは一線を画す、構造的な強みを確立しています。
今年初めにリリースされた20以上の革新的な機能
セッションでは、今年に入ってからリリースされた20以上の新機能について、具体的なデモンストレーションを交えながらご紹介しました。
これらの機能が、現代のソフトウェア開発チームが日々直面している課題をどのように解決するのか、その一端をご覧いただけたかと思います。
実際にこれらの新機能は、既にご利用中のお客様からもご好評いただいており、開発効率の向上やダウンタイムの削減といった形で、お客様のビジネスの成功に貢献しています。
例えば、注目すべきイノベーションには以下が含まれます。
- Transaction 360:スタック全体のデータを自動的に相関させ、単一の統合ビューに組み込むことで、根本原因分析を5倍高速化するソリューション
- eAPM:計装なしでKubernetesのリアルタイム可視性を提供し、OpenTelemetryをサポートしてエコシステムへの容易な統合を実現
- Service Architecture Intelligence(SAI):ドメイン固有モデルとRAGを活用して、比類のない運用インテリジェンスを提供
これらのイノベーションは、今日の複雑で変化の激しいビジネスで成功するために必要な俊敏性を提供し、現代企業の真のニーズに応えるように設計されています。
成果重視のAI
基調講演の中でも特にハイライトとなったのが、AIに関するセッションです。
セッションでは、New RelicがAIを「お客様にとって意味のある、日々の業務改善を後押しする力」と位置付けていることが語られました。
特に印象的だったのは、昨今話題となっているAIの誇大広告とは一線を画し、あくまで実用的なアプリケーションに注力している点です。そして、その成果を具体的かつ測定可能なものにするための「3つの革新的な柱」が紹介されました。
- New Relic AI(NRAI):MELTxデータを統合するシステムインテリジェンスプラットフォームを活用することで、NRAIはテレメトリーデータを、分かりやすい言葉で提供する実用的なインサイトに変換します。
- AIモニタリング(AIM):AIシステム向けに特化しており、幻覚症状、コスト効率、AI動作の最適化といったAIシステム特有の課題に対処します。
- Agentic AI:GitHubなどのIDEやServiceNowなどのインシデント管理ツールなど、お客様の既存のワークフローに連携します。これにより、監視機能は検出だけにとどまらず、エンジニアが日常的に使用するツールにインテリジェントなワークフローと自動アクションを直接組み込むことができます。
当社のAI中心のソリューションは、複雑なプロセスを簡素化するだけでなく、お客様がワークフローやシステムにおける新たな可能性を積極的に実現できるよう設計されています。
Agentic AIとMCPオブザーバビリティを主役に
基調講演のハイライトとして、Agentic AIの具体的な活用例が示されました。特に注目を集めたのは、New Relicのインテリジェンスを、開発者が日常的に利用するツールチェーンへと統合するデモンストレーションです。
例えば、GitHub CopilotやServiceNowといった普段お使いのツール上で、New Relicが収集したオブザーバビリティの知見を直接利用できるようになります。これにより、開発者はツールを切り替える手間なく作業フローを効率化でき、開発ライフサイクル(SDLC)からITサービス管理(ITSM)まで、あらゆる場面で生産性の向上が期待できます。まさに「チームがいる場所にオブザーバビリティを届ける」という思想の現れです。
さらに、New Relicは自社でAIを活用するだけでなく、お客様がAIアプリケーションを開発・運用するための「AIモニタリング」機能も強化しています。これは、皆様が開発するAIサービスのパフォーマンスや信頼性を確保するための、強力な支援ツールとなります。
その象徴的な新機能として発表されたのが、「モデルコンテキストプロトコル(MCP)サーバー」のオブザーバビリティです。これまでMCPサーバーの内部は「ブラックボックス」とされ、パフォーマンス等を把握することが困難でした。New Relicは、このMCPサーバーの動作を詳細に監視できる、業界初のフルスタックオブザーバビリティプラットフォームとなります。これは、AI開発の現場に大きな変化をもたらす、まさに画期的なアップデートと言えるでしょう。
AI モニタリングMCPの機能には以下が含まれます。
- 詳細なMCPトレース:ツールの使用状況、呼び出しシーケンス、所要時間を完全に可視化し、直感的なウォーターフォール図で表示
- 実用的なマルチエージェントによるインサイト:ツールの有効性を分析し、レイテンシとエラー率を追跡し、ツールの使用を最適化する機能
- 完全統合されたAIスタックの可視性:MCPのパフォーマンスをアプリケーションエコシステムと直接相関付けることにより、運用のサイロ化や画面切り替えの手間を省略
これらのイノベーションでNew Relicは、AI主導型ワークフローを管理するチームにとって頼りになるプラットフォームとしての地位を確立しています。
パートナーエコシステムの強化
Microsoft、GitHub、ServiceNowといった業界のリーダー企業とのパートナーシップの重要性についても語られました。
GitHub Copilotを活用した自動修復や、ServiceNowとのシームレスな連携といった具体例を通じて、これらの協業がお客様のワークフローをいかに強化するかが示されました。
これらは、先述のAgentic AIが、組織の壁を越え、エンジニアが普段利用するツールにまでオブザーバビリティを拡張することで、コンテキストスイッチをなくし生産性を飛躍的に向上させる可能性を秘めていることを示す好例です。
こうしたパートナーシップの根底にあるのが、New Relicの「オープンエコシステム」という考え方です。特定のプラットフォームにユーザーを囲い込む「ウォールドガーデン」を構築するのではなく、お客様が既に使い慣れたツールをオブザーバビリティによって強化することに重点を置いている点が強調されました。
この協業戦略があるからこそ、パートナー企業が持つ知見も活かしながらプラットフォームを継続的に改善し、ユーザーにとって本当に価値のある場所にインテリジェンスを届けることができるのです。
先を見据える
基調講演は、オブザーバビリティの未来に対する、非常に力強く、そして希望に満ちたメッセージで締めくくられました。
オブザーバビリティは、今まさに大きな転換期を迎えています。そしてNew Relicは、本記事でご紹介したような「インテリジェンスシステム」によって、その進化を牽引していくという強い意志を示しました。
一元的に管理されたデータ、高度なAI、そしてそこから生まれる実用的なインテリジェンス。これらを組み合わせることで、より優れたデジタル体験の提供、ダウンタイムの削減、そしてビジネス成果の向上が、これまで以上に高いレベルで実現可能になるでしょう。
次のステップ
イベントに参加できなかった方もご安心ください。New Relicのイノベーションを最大限に活用するための方法をご紹介します。
- プラットフォームを詳しく見る:無料トライアルにご登録いただき、統合型オブザーバビリティとAIを活用したインサイトの威力を実際にご体験ください。
- 詳細を見る:基調講演の録画と詳細なセッションをご覧になり、革新的なソリューションについてさらに詳しくご覧ください
- ディスカッションに参加:New Relicがお客様固有の課題を解決し、成功を実現させる方法について、ぜひお問い合わせください
New Relicと共に、オブザーバビリティの未来がここにあります。この画期的なイベントにご参加いただき、ありがとうございました。ご参加いただけなかった方も、ぜひNew Relicのプラットフォームを詳しくご覧いただき、オブザーバビリティがどのようにお客様に貢献できるかを改めてご確認ください。
インテリジェントなオブザーバビリティの次の章が待っています。その一歩を踏み出してみませんか?
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