外形監視とは?内部監視との違いや、安定運用のための方法を紹介

外形監視とは、システムが稼働するネットワークの外側から監視する手法のこと。外形監視の必要性や内部監視との違いのほか、安定運用のための方法について紹介します。

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外形監視とは、外部からのユーザー視点で行われる監視のことです。Webサイトがエンドユーザーの目にどのように見えているのか、操作に対してスムーズにレスポンスできているのかをチェックします。

ここでは、外形監視の種類や必要性、内部監視との違いのほか、安定運用のための方法を説明します。

 

外形監視と内部監視の違い

監視は、大きく2つに分けられます。それが、外形監視と内部監視です。外形監視が外部からのアクセス、つまりユーザー視点からの監視であるのに対して、内部監視はシステム視点からの監視です。内部監視には、サービスの稼働状況を監視する「サービス監視」のほか、CPUやストレージ、メモリの使用率といったリソースの状況を監視する「リソース監視」などが挙げられます。

外形監視と内部監視は、対照的な手法ではありますが、優劣や新旧を比較するものではありません。Webサイトの健全性を保つためには、外形監視と内部監視をうまく組み合わせて運用していくことが大切といえるでしょう。

外形監視とは、ネットワーク外部からシステムを監視する手法のこと

 

外形監視とは、WebサイトやWebアプリケーションを、システムが稼働するネットワークの外側からアクセスし、ユーザー視点で利用可能な状態にあるかどうかを機械的に監視することです。英語では「Synthetic Monitoring」と呼ばれており、日本ではシンセティック監視、合成監視、合成モニタリングなどとも表現されます。

システムが稼働するネットワークの外側からユーザー視点で監視することで、ユーザーが体感している表示速度や応答時間などのパフォーマンスを、リアルタイムで計測・把握ができます。ユーザーに近い、あるいはほぼ同等の環境から監視するリアルユーザー監視(RUM)であれば、ネットワークの内側から監視する死活監視やリソース監視とは異なり、Webサイトにアクセスしたユーザー体験を包括的に把握することが可能です。これにより、遅いレスポンスや一時的または恒久的なエラーといった、内側からの監視では把握できない悪いユーザー体験を発見することができます。

また、アプリケーションパフォーマンス管理(APM)と組み合わせれば、Webサイトがスムーズに稼働しているか、ユーザーに優良な顧客体験を提供できているかを、チェックし続けることができます。

外形監視の種類

外形監視はその監視対象によって、いくつかの種類があります。主な外形監視の種類について詳しく見ていきましょう。

Web監視

Web監視は、WebサーバーのURLに対して、インターネット経由でHTTP接続する監視方法です。接続時の表示速度やダウンロード速度、応答速度などを取得して、サーバーの状態を把握します。

ユーザー側からすると、Webサイトが表示できないトラブルに遭遇することがあります。これには、さまざまな原因が複合的に関係しており、ポートやプロセスの監視だけでは検知できないことが多々あります。そのために、ユーザーと同様の方法でアクセスを行い、稼働状況を確認する必要があるのです。

なお、Web監視では、接続先のサーバーだけでなく、監視ポイントから接続先までのネットワークも含めて監視することになります。

URL監視

URL監視は、URLに対して直接監視リクエストを送信し、その反応時間やレスポンスの内容によって状態を判断する監視方法です。「サービスを提供できているか、いないか」という、Webサイトとしては最も重要なことを、直接検知できます。

Webサイトの監視にはさまざまな方法がありますが、URL監視は比較的少ない予算でも導入でき、コストパフォーマンスも良いので、小規模なサービスであっても導入しやすい手法といえます。

Webシナリオ監視

Webシナリオ監視は、サイトを訪れるユーザーと同じ環境、同じ操作を再現して、ユーザー視点でWebサイトの動きを監視する手法です。ChromeやFirefoxなど、実際のブラウザをシステムが使って、ユーザーが行うさまざまな操作を行い、その反応をデータとして収集します。

Webシナリオ監視では、画面遷移やスクロール、プルダウンリストやラジオボタンの選択といったユーザー側の操作に対する反応のほか、購入金額の自動計算など、プログラムの動きも監視できます。

なぜ外形監視が注目されているのか?

外形監視の種類や内部監視との違いがわかったところで、外形監視が注目されている理由について解説します。外形監視は、下記の2つの観点で重要視されています。

ユーザー視点の重要性が高まったため

インターネットへのアクセスが当たり前となった現代において、Webサイトやアプリケーションの遅延を防ぎ、ユーザーがいかに快適に使用できるかが重要になっています。ユーザーの離脱率が高くなれば、売上にも大きく影響するからです。

ユーザーに近い環境から監視を行い、ユーザー体験を測定した結果をフィードバックして、サイトのブラッシュアップを行うことで、トラブルを未然に防ぎ、安定した運用が可能になります。

オブザーバビリティの実現のため

近年、注目を集めているオブザーバビリティの観点からも、外形監視は必要です。オブザーバビリティとは、システム上で何らかの異常が起こった際に、それを通知するだけでなく、どこで何が起こったのか、なぜ起こったのかを把握する能力を表す指標、あるいは仕組みを指します。オブザーバビリティを導入し、フロントからバックエンドまで一気通貫でデータを見ることができれば、異常が発生した際に、その原因にたどりつくことが容易になります。

オブザーバビリティの実現のためには、システムを構成する機器や個々のソフトウェアを静的に監視するだけではなく、ユーザーの環境と同じ、動的なポジションから観察・監視することも重要になります。

オブザーバビリティについては、こちらの記事も合わせてご覧ください。

SLM(サービスレベル管理)観点での活用が可能なため

SRE(サイトリライアビリティエンジニアリング)は、信頼性を担保し、サービスの可用性、レイテンシ、パフォーマンスなどに常に責任を負います。その信頼性を評価するものがSLO(サービスレベル目標)であり、SLOを満たすために計測する指標が SLI (サービスレベル指標)です。

New Relicの場合、ワンクリックで SLIとSLOを計装可能な機能を提供していますが、APMで情報を収集し、外形監視でユーザー体験を把握することによりSLIを計測し、リアルタイムに把握することが可能です。

New Relicの外形監視の特徴

New Relicは、さまざまなデータを収集して一元管理し、それらのデータによってオブザーバビリティを実現するオブザーバビリティプラットフォームです。多くの特徴を備えているNew Relicですが、外形監視においても優れた機能と特性を持っています。ここでは、New Relicの代表的な特徴について見ていきましょう。

ユーザー視点と内部サイトの監視視点でモニタリングができる

New Relicの外形監視は、グローバルな複数の地域にエンドポイントを置いているため、その地域からWebサイトを監視することができます。さらに、「プライベートロケーション」を設定すれば、一般的な外形監視ではチェックできない領域にも、監視視点を置くことができるのです。この機能は、社内システムの監視などに役立つでしょう。

社内システムは社内ネットワークの中に入らなければ監視できませんが、プライベートロケーションを使えば、社内ネットワークに入った上で、リクエストの内容やアプリケーションの動きをチェックすることが可能です。

イベントデータの取得で、問題を容易に把握できる

外形監視によって得られたデータを分析することで、Webサイトの状態を客観的にチェックできます。Webサイトがユーザーにどのように見られているのか、そこに何らかの障害はあるのか、あるとしたら何が原因で、どうすれば改善できるのかといった点を明らかにできれば、Webサイトを今以上にブラッシュアップできます。

従来の監視ツールでは、障害の原因を特定することは簡単ではありません。初めからクラウドでアプリケーションを実行したりソフトウェアを開発したりすることを前提とした「クラウドネイティブ」の複雑化した環境では、なおさらです。そのため、どうしてもエンジニアの作業負荷が大きくなり、業務効率が落ちてしまいます。

しかし、New Relicは監視にあたり、一般的に使われる「メトリクス」「ログ」「トレース」の情報に加えて、「イベントデータ」も取得・保存します。そのため、システムやアプリケーションの「どこで、何が起こったのか」を容易に把握でき、ボトルネックを素早く見つけ出し、迅速に対処することができるのです。それによって、Webサイトを常に良好な状態に保ち続けることができます。さらに、エンジニアは作業負荷が軽減されることにより、より価値のある作業に注力することができるでしょう。

 

いろいろなニーズに対応できる

前述したように、New Relicはシステムの内外、任意のポイントから監視ができ、しかもメトリクス、ログ、トレースにイベントデータを加えたデータを取得・保存できます。そのため、さまざまなニーズに対応することが可能です。

社内システムから得られたデータをもとにシステムの使い勝手を向上させれば、業務効率を上げられます。また、ユーザー目線でWebサイトの問題点を確認できたら、クレームが入る前に対応することもできるでしょう。

ほかのツールと組み合わせて使うことができる

New Relicは、単一のツールではありません。数多くの機能を持ったツールの集合体であり、それぞれのツールが密接に連携し合い、最善の結果を最速で得られるよう設計されています。その目的はオブザーバビリティの実現であり、すべてのツールがそのために機能しています。

New Relicの外形監視ツールである「Synthetic Monitoring」は、Webサイトの健全性を確認するための優れた外形監視ツールです。外形監視の結果が悪かった際、どこに根本原因があったのかを特定し、解決に導きます。さらに、リアルユーザーモニタリングである「Browser」や「Mobile」のほか、サーバーサイドアプリケーションを観測するAPMやAWS、Azureなどの計測情報と、「Infrastructure」「Logs」による内部監視情報を統合して使用すれば、より大きな成果を生むことが可能です。

New Relicの外形監視ツール「Synthetic Monitoring」については、こちらも合わせてご覧ください。

 

Webサイトをより健全に保つNew Relic

New Relicの外形監視は、複数のグローバルな地域からユーザー体験そのままに自社のWebサイトをチェックできる、リアルユーザー監視です。外側からだけでなく内側からの監視もでき、閉じられた社内ネットワークなどでも内外から監視が可能です。フロントエンドからバックエンドまで、あらゆるデータを取得でき、障害があればその原因まで容易に特定できますから、オブザーバビリティの実現にもつながります。

Webサイトの健全性を保ち、今以上にビジネスの加速を目指す場合は、New Relicの導入を検討してみてはいかがでしょうか。