東日本旅客鉄道|モビリティ・リンケージ・プラットフォームの開発高速化と高品質化へ

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利用用途

タクシー、バス、シェアサイクルなど駅から先のモビリティをワンストップで利用できるMaaSアプリ「Ringo Pass」の開発環境とサービス基盤のパフォーマンスモニタリングにNew Relic Oneを活用

New Relicの選定理由と成果

  • Ringo Passバックエンドシステムのアプリケーション開発の高速化と高品質化
  • コンテナ&Kubernetes、マイクロサービス環境のパフォーマンスモニタリング
  • MaaS共通基盤「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」全体の高品質化への期待

JR東日本がMaaS(Mobility as a Service)事業への取り組みを本格化させている。旅客鉄道事業者としての強みを活かし、顧客目線で新しい価値を創造するチャレンジである。2020年1月にサービスを開始したスマートフォンアプリ「Ringo Pass」では、タクシー、バス、シェアサイクルといった、駅から先そして複数の交通手段をシームレスに利用できる新しい顧客体験を実現した。MaaS事業部門でRingo Passの事業開発を担当する安藤優氏は次のように話す。

「JR東日本グループの新しいチャレンジとして、『お客さまを起点にした価値・サービスの創造』をグループ一丸で目指しています。これまで私たちは鉄道の輸送サービスをコア事業として注力してきましたが、お客さまの視点から見ると、目的地に行きたいのであって、鉄道は交通手段の一つとしてご利用いただいているに過ぎません。Ringo Passは、お客さまが今いる場所から駅まで、さらに駅から先のモビリティを便利に使えるサービスとして開発されました。ひとつのアカウントで複数の交通手段を結びつけてファースト&ラストワンマイルをカバーし、行きたい場所へのシームレスな移動を実現します」

JR東日本のグループ経営ビジョン「変革2027」では、移動手段の検索・手配・決済を一貫して提供する「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」の構築を通じて、シームレスな移動、総移動時間の短縮、ストレスフリーな移動を実現することを掲げている。安藤氏は、プロジェクトの中心人物として同プラットフォームの基本設計・システム開発もリードする。

「モビリティ・リンケージ・プラットフォームは、MaaS事業部門が手掛ける『Ringo Pass』『JR東日本アプリ』『TOHOKU MaaS』といった複数のサービスの共通基盤として構築されました。アカウント管理、認証、決済、外部連携などを、共通の仕組みとしてそれぞれのアプリから利用することができます。これを基盤に複数のアプリケーションが連動して、シームレスなサービスを実現することを目指しています。」

システムはAWS上に構築されている。ここでアプリケーションパフォーマンス管理を担っているのは、オブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームNew Relic Oneである。

マイクロサービスにおけるオブザーバビリティの重要性

安藤氏は、Ringo Passの事業開発とともに、モビリティ・リンケージ・プラットフォームの設計開発を兼務している。MaaS事業に求められるスピード感でサービスを具現化していくために、ビジネスとITが一体化した推進体制が不可欠なのだ。

「お客さまに提供するサービスの開発で試行錯誤を重ねながら、並行してシステム開発を進めなければなりません。変化し続ける要件に対応するためには、アジャイル開発、IaaS/PaaS、コンテナ&Kubernetes、マイクロサービスといったクラウドネイティブなテクノロジーやアプローチの採用も必然でした。New Relic Oneは、こうした環境下でアプリケーション開発の高速化、本番サービスの高品質化に貢献しています」と安藤氏は話す。

New Relic Oneは業界を代表するオブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームであり、デジタルサービスにおけるあらゆる重要指標の「観測」を可能にする。アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化する機能は業界随一との評価を得ている。

「New Relic Oneに着目したのは、マイクロサービスアーキテクチャーを検討する過程で、オブザーバビリティ(可観測性)の重要性に気づかされたのがきっかけでした。New Relic Oneは、フロントとバックエンド間の通信をひとつのプロセスとして見通すことができ、ユーザー体験に影響するような問題の予兆検知と迅速な原因特定に威力を発揮します。アプリケーション開発時の性能テストから本番環境のモニタリングまでを、New Relic Oneで一貫して行えるメリットも大きいですね。実装の容易さもNew Relic Oneの採用を後押ししたポイントです」(安藤氏)

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アプリケーション開発におけるテスト自動化

New Relic One のAPMは、Webアプリケーションのレスポンスタイム、スループット、エラー率、トランザクションなどを可視化するとともに、ユーザー体験に影響するコードやコード間の依存関係をリアルタイムで特定する。こうしたメトリクスは「ユーザーの体感=サービス品質」として解釈できるものだ。

「現時点でNew Relic Oneが現場で最も活躍しているのは、アプリケーションリリース前の性能テストです。開発チームでは、テスト自動化ツールを導入しスプリントを1週間単位で回しています。このサイクルに性能テストを組み込むことができれば、アプリケーション開発の高速化をさらに前進させられるものと期待しています。スプリントで機能開発が終わった時点で、求められる性能を備えたアプリケーションを、そのまま本番環境に乗せられるような開発・テスト体制をつくることが目標です」と安藤氏は話す。

モビリティ・リンケージ・プラットフォームは、モバイルSuicaやクレジットカードなどの決済系をはじめ、モビリティサービスで協力するタクシーやバス、シェアサイクル事業者など、すでに10以上の外部システムとAPIで連携している。

「モビリティ・リンケージ・プラットフォームの開発環境では、New Relic Oneでアプリケーションパフォーマンスをテストし、本番環境のモニタリングも同じ仕組みで一貫して実現しています。今後も、New Relicの技術者のアドバイスを受けながら、モビリティ・リンケージ・プラットフォーム全体のモニタリングにNew Relic Oneのベストプラクティスを適用していきたいと考えています」(安藤氏)

安藤氏のグループでは、アプリケーション開発に携わる2チームと、インフラ開発・運用を担うSREチームの計3チームが活動している。現在、New Relic Oneを主に活用しているのはSREチームだ。

「アプリケーション開発者自身がサービス提供段階でも品質に責任を持ちたい、という指向が強くあります。開発チーム内では、アプリケーション開発チームがインフラ開発や運用まで含めて担当範囲を拡大していくのはどうかという意見も出ており、これには私も賛成しています。New Relic Oneのダッシュボードでリアルタイムに状況や課題を共有できれば、さらに開発と改善のスピードを上げていくことができるはずです」(安藤氏)

進化するモビリティ・リンケージ・プラットフォーム

New Relic Oneの活用でメリットを得られるのはSREやアプリケーション開発チームに限らない。New Relic Oneのダッシュボードでは、ビジネスイベントを取り込んでメトリクスとの関連性を可視化することも可能だ。

「たとえば、Ringo Passでシェアサイクルの割引キャンペーンを実施したとき、アクセス数やトランザクション数にどのように影響したかを可視化できれば、ビジネス部門でプロモーションの効果測定や計画策定に役立てることができるでしょう。現在はこれを個別の仕組みで実施していますが、New Relic Oneのダッシュボードのユーザーを拡大することで、サービスの企画や改善につなげたいという期待もあります」と安藤氏は話す。

JR東日本のMaaS事業の目の前のテーマは、顧客やビジネスパートナーを惹きつける競争力の高いサービスモデルの確立である。それを支える「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」は、様々なMaaSアプリを統合し、数多くのパートナー企業のシステムと連携する「MaaS共通基盤」としての役割を高めながら進化を続けている。

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