ハイブリッドクラウドとは？構成例やメリット・デメリットを解説

ハイブリッドクラウドとは？構成例やメリット・デメリットを解説

近年、多くの企業がオンプレミス（自社運用）やプライベートクラウドからパブリッククラウドサービスへの移行を進めている中、ハイブリッドクラウドが注目を集めています。しかし、「ハイブリッドクラウドとはどのような構成なのだろうか」「マルチクラウドとの違いがわからない」といった人もいるかもしれません。
ここでは、ハイブリッドクラウドの構成やメリット・デメリット、マルチクラウドとの違い、ハイブリッドクラウドの運用負荷を軽減するツールについて解説します。

ハイブリッドクラウドとは、オンプレミス（自社運用）またはプライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせたIT環境

ハイブリッドクラウドとは、オンプレミス（自社運用）またはプライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせたIT環境のことです。オンプレミス（自社運用）やプライベートクラウドのインフラストラクチャのセキュリティと制御を維持しつつ、パブリッククラウドのスケーラビリティと迅速なリソース展開を活用できることが特徴です。ハイブリッドクラウドであれば、企業はデータとアプリケーションを最適な場所に配置し、柔軟性とコスト効率を高めることができます。

なお、オンプレミス（自社運用）とパブリッククラウドの特徴は、下記の表のとおりです。

■オンプレミス（自社運用）とパブリッククラウドの特徴
 

ハイブリッドクラウドを採用する主な目的

企業がハイブリッドクラウドを採用する背景には、現代のビジネス環境における多様なニーズがあります。まず、大きな目的のひとつがコスト効率の向上です。企業は、オンプレミス（自社運用）やプライベートクラウドのインフラストラクチャを維持しつつ、必要に応じてパブリッククラウドのリソースを活用することで、無駄な投資を避け、リソースを効率的に管理できます。

柔軟性も重要な要素です。異なるワークロードに対して最適な環境を選択できるため、ビジネスの変化に迅速に対応できます。また、ビジネスの継続性を確保するために、ハイブリッドクラウドは災害復旧やバックアップ戦略の一環として採用されるケースもあります。
さらに、規制遵守の観点からハイブリッドクラウドを採用することも少なくありません。データの所在地を制御できるハイブリッドクラウドは、コンプライアンス要件を満たすための強力な手段となります。

ハイブリッドクラウドとマルチクラウドは何が違う？

ハイブリッドクラウドと似た言葉にマルチクラウドがあります。どちらも複数のクラウド環境を併用するという共通点がありますが、概念が異なります。
ハイブリッドクラウドは、オンプレミス（自社運用）やプライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせるIT環境であるのに対し、マルチクラウドは複数のパブリッククラウドプロバイダーを利用する戦略のことです。

ハイブリッドクラウドの構成例

ハイブリッドクラウドはどのような組み合わせで構成するのでしょうか。構成は企業によって異なりますが、代表的なケースをご紹介します。

オンプレミス + パブリッククラウド

オンプレミス + パブリッククラウドは、最も一般的なハイブリッドクラウドの構成です。企業は、機密性の高いデータやレガシーシステムをオンプレミスで管理し、スケーラビリティが必要なアプリケーションやデータ分析をパブリッククラウドで処理します。これにより、セキュリティと柔軟性のバランスを取ることができます。

プライベートクラウド + パブリッククラウド

プライベートクラウド + パブリッククラウドは、企業が自社専用のクラウド環境を持ちつつ、パブリッククラウドのリソースを必要に応じて利用する構成です。この組み合わせは、特に高いセキュリティとカスタマイズ性が求められる場合に有効です。プライベートクラウドで機密情報を保護しながら、パブリッククラウドでのスケールアウトが可能になります。

オンプレミス + プライベートクラウド + パブリッククラウド

オンプレミス + プライベートクラウド + パブリッククラウドは、より複雑なハイブリッドクラウドの構成です。すべての環境を組み合わせることで、最大限の柔軟性と制御を実現します。例えば、オンプレミスで最も重要なシステムを運用しつつ、プライベートクラウドでカスタマイズされたアプリケーションを実行し、パブリッククラウドで一時的なリソースを利用することが可能です。

このような組み合わせにより、企業はそれぞれの環境の強みを活かしつつ、ビジネス要件に最も適したインフラストラクチャを構築できます。ハイブリッドクラウドは、企業の特定のニーズに応じて柔軟に設計されるため、どの組み合わせが最適かは、企業の目標や制約によって異なります。

ハイブリッドクラウドの課題

柔軟性を保ちながら、リスク分散も可能なハイブリッドクラウドですが、課題もあります。具体的に見ていきましょう。

運用が煩雑になる

異なる環境を統合し、管理することは容易ではありません。オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドそれぞれの環境が持つ特有の要件や制約を理解し、効果的に連携させることは、ITチームにとって大きな負担となります。この複雑性は、システムの可視性を低下させ、迅速な意思決定を妨げる要因となりえます。
さらに、パフォーマンスの監視と最適化も大きな課題です。複数の環境にまたがるシステムのパフォーマンスを一元的に監視することは困難であり、適切なツールがなければ、ボトルネックや障害の原因を特定するのに多大な時間と労力がかかります。
このような状況は、システムの安定稼働を脅かし、ビジネスの継続性に悪影響を及ぼす可能性があります。

人材の確保が困難

人的リソースの確保もパブリッククラウドの課題として挙げられます。IT環境および運用の複雑化により、ITスタッフの多くの時間は日常的なトラブルシューティングに多くの時間を費やされ、戦略的なプロジェクトやイノベーションに割ける時間が減少しているケースも少なくありません。こうした状況では、IT部門がビジネスの成長を支える戦略的パートナーとしての役割を果たすことが難しくなってしまいます。

コスト計算が複雑になる

ハイブリッドクラウドの課題は、それぞれのクラウドサービスのリソース使用状況を一元的に管理することが難しく、運用コストを把握しづらい点が挙げられます。また、パブリッククラウドを併用する場合は、為替変動により想定外の支出となるケースもあります。

セキュリティリスクが増加する

セキュリティリスクが増加することも、ハイブリッドクラウドの課題のひとつです。プライベートクラウドとパブリッククラウドといったクラウド間でデータを移動させる場合、データの漏洩や不正アクセスのリスクが高まります。また、クラウド環境ごとにセキュリティポリシーやプロトコルが異なるため、一貫性を保つのが難しく、セキュリティ管理の複雑さが増してしまうことも少なくありません。
データの保護、アクセス制御、監査ログの管理など、特に規制の厳しい業界では、これらの要件を満たすことが困難を伴います。

ハイブリッドクラウドの運用負荷を軽減するならNew Relicがおすすめ

ハイブリッドクラウドは異なる環境を組み合わせてシステムを構築するため、全体を監視するのが容易ではありません。そのため運用業務にかかる負荷が難点です。そこで大きく役立つのが、オブザーバビリティ・プラットフォームであるNew Relicです。

どのような環境でも一元管理し、リアルタイムで可視化

New Relicは複雑なハイブリッドクラウドであっても、システム全体を網羅的に監視し、リアルタイムで可視化します。常に追跡しておきたい項目をピックアップしてダッシュボード化しておけば、各要素を定量的な情報としてチェックできます。どのサービスがどのように動いているか、どのリソースにどれほどの負荷がかかっているのかがひと目でわかるため、稼働状況に合わせて適切なスケーリングが可能です。また、現状の稼働に対するコストを割り出すこともできるため、ビジネスの立場からシステム構成を容易に検討・判断できます。

トラブル時の原因特定が容易

New Relicを導入すると、何らかの障害が発生しても、即座に問題を特定し可視化できるようになります。障害検知から復旧までの時間を大幅に短縮できるため、サービスの信頼性・安定性、ユーザーの利便性を高めるだけでなく、エンジニアの時間と手間を軽減できます。

技術が事業に与える影響を見極めることが重要

ハイブリッドクラウドは、手持ちの資産を最大限に活用し、現状を少しずつ拡張できる手法です。しかし、導入にあたって重要なのは、どのような機能と環境を構築するのか、それによってどれほどのプラスを得られるのかを、事前に見極めておくことです。
そのため、技術がビジネスに与えるプラスマイナスの影響を、現場のエンジニアや経営陣など、さまざまなポジションから検討し、網羅的な視点から判断していくことが重要です。
オールインワンのオブザーバビリティ・プラットフォームであるNew Relicなら、役割や組織の垣根を超えてデータを一元的に俯瞰して参照できるため、チームや組織で同じ情報を元にビジネス継続のための意思決定が可能となります。
この機会にNew Relicの導入をぜひご検討ください。