Colorful Palette|スマホ向けリズムアドベンチャーゲーム『プロセカ』の世界観を支える「ユーザー体験」への熱き想い

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利用用途

世界3,900万ダウンロードを誇るスマホ向けリズムアドベンチャーゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』のサービス基盤の安定化、エンターテインメントとしての優れたユーザー体験の追求

New Relicの導入目的と成果

  • 周年などのバーチャルイベントで「アクシデントゼロ」を掲げる
  • アプリケーションプロセスの可視化とトラブルシューティングの迅速化
  • アプリケーション開発とテストに活用しリリース前に品質を作り込み
  • データベースのアップデート、サービス基盤のリアーキテクトにも活用
  • オブザーバビリティ導入・活用のパートナーとしてNew Relicのサポート力を高く評価

利用製品

  • New Relic APM
  • New Relic Dashboard

 

世界各地のファンが同時接続し感動体験を共有――2024年3月、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク(以下、プロセカ)』の3.5周年イベントが開催された。「プロセカ」を開発・提供する株式会社Colorful Paletteで執行役員 シニアマネージャー/テクニカルディレクターを務める伊藤寛起氏は次のように話す。

「『プロセカ』は2024年3月に世界3,900万ダウンロードを達成し、多くのユーザー様に楽しんでいただいています。初音ミクをはじめとするバーチャル・シンガーたちが登場し、リズムゲームでありながらアドベンチャーゲームとしてのストーリー性を重視していることが本作の大きな特徴です。現実世界の少年少女たちが抱えている葛藤や苦悩を扱い、気持ちがシンクロする、共感できるシナリオを届けられたことが、『プロセカ』の世界共通の人気を支えているのではないかと考えています」

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執行役員 シニアマネージャー/テクニカルディレクター 伊藤寛起氏

「プロセカ」には、楽曲をはじめ、キャラクター、衣装など多数のクリエイターが参画し、熱烈なファン層とともに巨大な「プロセカ文化圏」を形成している。

「プロセカに関わる人たちは、ファンの皆様に最高のエンターテインメントをお届けするために、企画サイドもクリエイターもエンジニアも圧倒的な熱量とこだわりをもって作品づくりに挑んでいます。私たちエンジニアチームは、ファンの皆様のより良い『プロセカ体験』を追求し、サービス基盤の安定化、バックエンドアプリケーションのボトルネック解消に取り組んできました。その集大成ともいえる3周年イベントでは、遂に私たちが目指したサービス品質を達成しました」(伊藤氏)

「アクシデントゼロ」を掲げたプロセカのサービス品質向上の取組みは、決して容易なものではなかった。大きな転機となったのは2022年初頭。オブザーバビリティプラットフォームNew Relicの活用の本格化である。

12万人が同時視聴するバーチャルライブで問題が顕在化

プロセカのサービス基盤は、メインシステムがAWS上に、リアルタイム通信系システムがGCP上に構築されている。これらがスマートフォン上のゲームエンジンUnityと連携する仕組みだ。サーバサイドディレクターの村田浩士氏は次のように振り返る。

「プロセカユーザーの拡大とともに通常のトラフィックが増大していっただけでなく、イベントやプロモーション時のシステム負荷が急速に高まっていました。深刻な問題が顕在化したのは2022年3月の『1.5周年イベント』でした。バーチャルライブにアクセスが殺到してデータベースの負荷が高まり、お客様がライブ会場に入場できなくなってしまったのです」

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サーバサイドディレクター 村田浩士氏

「バーチャルライブ」では、プロセカのキャラクターが繰り広げるライブステージに観客として参加できる。この日、プロセカにアクセスしたファンは170万人、バーチャルライブの同時視聴者は12万人に達したという。

「これまでにない規模のアクセスに直面したとき、予期しなかったトラブルが次から次へと顕在化しました。システムリソースは十分に確保していたものの、システム全体で本質的な意味でのパフォーマンスボトルネックが解消できていなかったこと、システムリソースを起点とする監視アプローチが根本的な問題解決に結びつかなくなってきたことが敗因でした」と村田氏は話す。

システム課題のステージがこれまでとは明らかに変わったのである。この時のトラブルシューティングに大きな役割を果たしたのがNew Relicだった。村田氏は、New Relicでアプリケーションプロセスを可視化し、どの処理がボトルネックになっているのかを特定しながら、ひとつ一つ問題を潰していった。

「バーチャルライブそのもののシーケンスは健全なのに、まったく予想もしていなかった『フレンド機能』でのボトルネックが問題を引き起こしていたケースもありました」と村田氏は言う。バーチャルライブ直後にゲーム領域に戻ってきたユーザーが自分のステータスを取得すると、ミドルウェアに高負荷がかかって画面表示が滞るような現象が発生したのである。

「New Relicを活用してこの問題を深く探っていくと、システムリソースの値は健全であるにも関わらず、キーバリューストアの処理が頻繁に実行されたことで時間を要していたことが原因と分かりました。リソース監視では見えなかった問題の根本原因が、誰の目にも明らかにされたのです。問題を深掘りして原因を可視化・定量化するオブザーバビリティプラットフォームの威力を実感した瞬間です」(村田氏)

「プロセカ3周年イベント」を成功に導く成果

プロセカのサービス基盤の安定性・信頼性を確かなものとし、より良い「プロセカ体験」を追求するために、村田氏らがNew Relicの活用を本格化させたのは2022年初頭だ。その効果はすぐにあらわれた。

「可視化と定量化の効果がやはり大きかったですね。トラブルシューティングが迅速化されただけでなく、データベースのセッション数を増やすような判断も容易になりました。これまでは『何となく処理が重い』と感じても、その原因を探るのはなかなか難しかったのですが、New Relicが示す観測データを評価し、重要度を見極めながら適切に対処できるようになりました」(村田氏)

伊藤氏も、「そのシステムに精通したエンジニアでなくても、New Relicのダッシュボードを見れば原因がひと目でわかる、という環境を整備できたことも重要です。さらに、New Relicの観測値を評価しながら、過剰になっていたインフラリソースの適正化にも着手できました」と話す。

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そして2023年9月、いよいよ「プロセカ3周年イベント」を迎えることになる。バーチャルライブが行われた日、プロセカには180万ものファンが殺到した。

「この日に備えて入念に準備を整えてきました。ライブ当日は180万ものファンを集めましたが、大きなトラブルなく乗り切ることができました。必要十分なインフラリソースを確保しながら、ボトルネックになる可能性のある個所をNew Relicで徹底的に洗い出して事前に対処してきた成果です」と村田氏は笑顔を見せる。

スローガン「アクシデントゼロ」に込めた思い

2020年9月にサービスを開始した「プロセカ」は、今や世界3,900万という巨大なコミュニティを形成するまでに成長した。多くのファンを惹きつけてやまない「プロセカ」は、Colorful Paletteのクリエイターをはじめ多様な関係者の圧倒的な熱量に支えられている。

「私たちエンジニアチームは、より多くのファンの方に『プロセカでの体験』を心の底から楽しんでいただけるよう、より深く感情移入していただけるよう、システムを磨き上げていきたいと考えています。私たちが『インシデントゼロ』でなく『アクシデントゼロ』の達成をスローガンとして掲げたのには、システムが正常に動いている状態だけをよしとするエンジニアではありたくない、不備の潜んだままの作品をエンジニアとして絶対に世に出さない、という強い思いがあります」と伊藤氏は話す。

「『アクシデントゼロ』という目標は、システム障害への準備だけでは実現し得ません。たとえば、データの取り扱いルールやテストパターンの網羅、各作業の納期の遵守など、全社的な取り組みが必要です。エンジニアチームだけでなく各部門の協力が不可欠であり、全社的なスローガンとして今後も大切にしていきたいと考えています」(伊藤氏)

若手インフラエンジニアの成長・自走をオブザーバビリティが加速

若いエンジニアも同じ志を持ち、New Relicを活用しながら成長している。新卒から入社3年目というサーバサイドエンジニアの髙橋司氏は次のように話す。

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サーバサイドエンジニア 髙橋司氏

「入社からこれまでの経験を通して、障害が発生した時に何が起きているか、自分の目で確かめて改善しながら知見を蓄積するという、貴重な経験をさせてもらっています。オブザーバビリティによってサービスの状態を定量データとして把握できることは、大きなメリットだと感じます」

今後、リレーショナルデータベースの仕様変更に伴い、クエリキャッシュ機能が使えなくなることがわかっているという。

「アップデートに備えて、性能を落とさずにトランザクションを処理するためのアプリケーションの改修と負荷テストを繰り返し進めているところです。特定のAPIが遅延する原因や、あるタイミングで急にレスポンスが悪くなるような現象の解明など、長い経験と知識がなくても問題の切り分けができことは大きいですね。自ら判断しながら業務を進められるという点で、New Relicは非常に役に立っています。さらに、トランザクションの中で何が起こっているのかが可視化されるので、バックエンドシステムに対する理解も深まり、自分自身のスキルアップにつながっています」(髙橋氏)

伊藤氏は「来るべきデータベースのアップデートは、何としても若手主導で成功させたい」と話しつつ次のように結んだ。

「問題が顕在化してから対処するのではなく、先回りして問題を潰す、世に出す前に開発段階からサービス品質を作り込む、といった活動ができるようになったことも大きな成果です。若手の習熟度の加速とともに、チームの練度が高まる効果も実感しており、このままNew Relic活用の知見をしっかりと全社に根づかせていきたいと考えています。次のチャレンジは、バックエンドから端末までを含めたアーキテクチャ全体の最適化です。導入段階から私たちに寄り添ってサポートしてくれたNew Relic日本法人のチームには感謝しかありません。『プロセカ体験』をより良いものにしていくために、いっそう熱量の高いご支援を期待しています」