荷主とドライバーをダイレクトに結ぶ配送マッチングサービスが、日本の物流業界を大きく変えつつある。CBcloudが提供する「PickGo(ピックゴー)」は、軽貨物3万台・二輪車1万台以上の配送パートナーが登録する国内最大級のマッチングプラットフォームとしてこの変革を牽引している。小口配送のニーズが拡大する中、現場の人材不足、多重下請け構造、非効率な業務や慣習など、物流業界が抱える様々な課題の解決にCBcloudが期待されている役割は大きい。同社の開発本部を率いる小山純氏は次のように話す。

「2016年にサービスを開始したPickGoには、私たちのビジョンである『ドライバーファースト』という思いが込められています。配送はスキルと経験が求められる高度な仕事であるにもかかわらず、過小評価されている事実は否めません。私たちは、ドライバーの仕事の効率を高めて収入を増やし、ドライバーという仕事とキャリアが正しく評価される物流業界の未来を目指しています」

CBcloudでは、荷主が運送会社を通すことなくドライバーに直接配送を依頼できる「PickGo」、ルート作成などの業務を効率化して宅配業者や運送会社の配送効率を高める「SmaRyu(スマリュー)」など、物流業界を現場の最前線から変革するクラウドサービスを拡充させてきた。一方で、ユーザー数・利用件数の増加とともにシステム負荷も急速に高まってきたという。

「PickGoやSmaRyuは、ドライバーをはじめ配送に携わる多くの方々の『仕事と生活の基盤』としての役割を担っています。その信頼と期待に応える安定的なサービス提供を実現しなければなりません。そこで私たちは、2021年初頭にNew Relicを導入しました。狙いは、システムやアプリケーションの不調をいち早く検知し、原因を特定し、問題解決を迅速化するための環境整備です」(小山氏)

開発本部 本部長
小山純氏

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New Relic Oneにより問題箇所と原因を即座に特定

CBcloudが2016年にリリースしたPickGo(開始時の名称は「軽Town」)では、荷主がPickGoを通じて集荷を依頼してから配送パートナーが見つかるまで平均56秒*、マッチング成約率は99.2%*に達するという。PickGoは、個人向け・法人向け・配送パートナー向けにポートフォリオを拡充しながら同社の中核サービスとして成長を続けている。サービス基盤はAWS上に構築されたモダンなWebアプリケーションである。アーキテクト、エンジニアとして全社のシステム開発をリードする徳盛太一朗氏は次のように話す。

「PickGoのサービス規模(荷主・配送パートナー・マッチング件数)はサービス開始以降、拡大を続けています。段階的にリソースを増強してきたものの、高負荷時のレスポンス悪化や不具合の顕在化など、予期しないトラブルが増えてきた時期がありました。こうした問題を抜本的に解決するために、システム/アプリケーション監視の強化を進めています。New Relic Oneを起点にした不調の検知から原因の特定、問題解決までのフローの整備は対策の柱となるものです」

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CBcloudが採用したNew Relic Oneは業界を代表するオブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームであり、デジタルサービスにおけるあらゆる重要指標の「観測」を可能にする。アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化できる。

開発本部 Engineering Manager
徳盛太一朗氏

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「従来は、CPUの負荷状況やデータベース容量など主にインフラ視点で監視を行ってきたのですが、サービスの不具合が発生した時点で初めてリソースが逼迫していることに気づくこともありました。また、特定のサーバーの負荷が異常に高くなっている状態で、その原因がどこにあるのか、何を改修すれば問題を解決できるのかを見極めるのが困難なことも珍しくありませんでした」(徳盛氏)

問題発生から解決までに丸2日を要したり、週の稼働時間の半分を調査対応に費やしてしまうような事案もあったという。沖縄のGinowan BaseでSRE業務を担当する新垣雄志氏は、New Relic Oneによる問題解決の例を次のように話す。

「私が最も感動したのはNew Relic APMとLogsの連携です。ある事案では、即座にエラーが発生しているAPIを特定し、トランザクションのログをダッシュボード上で同時に参照しながら、エラーの原因となっていたリクエストを迅速に突き止めることができました。原因さえわかってしまえばパラメータを変更するだけです。問題の検知から解決までに1時間も要しませんでした」

CloudWatchのログを参照し、コードを読み解きながら原因を探索していく従来の方法では、解決までに1~2日を要してもおかしくない難易度の高い事案だった。「迅速な問題解決を日常的に行えるようになったことが最も大きな変化」(新垣氏)という。

攻めの開発を続けながら、問題解決を迅速化

CBcloudは2021年1月にPickGoのサービスをリニューアルするとともに、百貨店や飲食チェーンとの業務連携も積極的に進めている。6月には「PickGo配送API」を公開し、セブン‐イレブンネットコンビニとのAPI連携もスタートさせた。New Relic Oneの適用範囲は、PickGoからSmaRyuTruck / SmaRyu Postへ、インフラからアプリケーションパフォーマンス、ログ監視へと、導入から数か月で計画的に拡張されてきた。Ginowan Baseの平良知広氏は次のように話す。

「API連携の統合テストにおいて、想定したパフォーマンスが出ない原因の調査を行ったときの話です。New Relic APMでトランザクションの中身を詳細に見ていくと、ユーザーへプッシュ通知を送る仕組みにプログラム構造上の問題があることがわかりました。この状態のままではユーザーが増えるほど加速度的にサーバー負荷が高まるリスクがあったのですが、New Relic Oneのおかげで本番サービスの開始前に問題を解決することができました」

問題の予兆検知と事前対応、いわゆるプロアクティブな監視体制の確立は、ビジネスを急成長させているCBcloudにとって最も重要なテーマのひとつだ。顧客である全国4万人のドライバーと直接対峙しているパートナーズサクセス本部の盛山正理氏は次のように話す。

パートナーズサクセス本部
盛山正理氏

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「New Relic Oneの利用を開始してから、問題が発生してから解決までの時間が大幅に短縮されたことをリアルに感じています。サービス影響のある問題発生の頻度も目に見えて減っていますので、お客様からの問い合わせ対応にも余裕が生まれました。お客様のビジネス成功に寄与する活動に、より多くの時間を使えるようになるだろうと期待しています」

CBcloudは、日本郵便に採用されている宅配効率化システムSmaRyu Postの提供を拡大し、2022年3月までに最大で500局へ導入することを発表している。

「お客様の業務フローに組み込まれているSmaRyu Postで問題が発生すると、日本郵便様をはじめすべてのユーザー企業様の業務に深刻な影響が及びます。New Relic Oneの適用範囲を拡大し、より深く使いこなすことで、問題が顕在化する前に予兆を検知して対処できる仕組みをいっそう強固なものにしていきたいと考えています」と徳盛氏は話す。

「将来的にはSLO(サービスレベル目標)を設定してお客様に公開できるところまで持っていきたいと考えています。攻めのアプリケーション開発を続けながら同時にサービス基盤の信頼性を高め、より良い顧客体験を追求する私たちのチャレンジに、New Relic Oneは大きな役割を果たしてくれるはずです」と小山氏も期待を示す。

チームを超えた情報共有にも積極活用

現在、New Relic Oneが可視化する情報は同社のエンジニアだけでなく、サービスに関わる多くの関係者に共有されている。社内で運用されているSlackの「障害情報チャネル」では、New Relic Oneが検知したサービスの障害に関する情報が自動でアラート通知され、広く関係者に共有される。

「問題発生時にエラーレートが上昇した状態と、解決時にそれがどう変わったかがビジュアルで共有されます。技術のわからないビジネスサイドのメンバーでも、New Relic Oneが可視化した情報を見ることで何が起こっているのか、どのように解決されたのか、ステータスや問題認識を正しく共有できるようになったことも大きな収穫です」と小山氏は話す。

徳盛氏も「あるサービスで問題が発生したときに、当事者だけでなく他のチームのエンジニアが原因の特定に協力しやすくなりました。また、開発段階で統合テストやデバッグをフロントとバックエンドのチームが協力して進めやすくなったことも大きいですね」と続ける。

国内で登録されている個人事業主の軽貨物ドライバー数はおよそ16万名。PickGoのユーザーはその1割超を占めている。「ドライバーファースト」を掲げ、物流業界の変革をリードするCBcloudへの期待と、プラットフォーム事業者としての責任は今後さらに高まることだろう。小山氏は次のように話して締めくくった。

「New Relic Oneの強みであるエンドツーエンドのオブザーバビリティを活用して、私たちのサービスを磨き上げていきたいと考えています。APM-Logs連携や分散トレーシングなど、私たちが欲しかった機能を次々と実現してきたNew Relicの技術力に期待するところは非常に大きいです。これからも、私たちのビジネスの信頼と成長を支えるテクノロジーを提供してくれることを願っています」