バンコク銀行は1944年に設立された東南アジア最大の銀行の1つです。タイ国内に約240カ所のビジネスセンターを持つコーポレート・ファイナンスおよび中小企業(SME)融資の大手プロバイダーであり、タイの銀行の中で最も多い1,700万人を超える個人顧客基盤を擁しています。同行の国際ネットワークには、14カ国に置かれた31カ所の海外支店、全世界で1,000行を超えるコルレス銀行が含まれます。また、中国で大きな存在感を示している唯一のタイの銀行であり、完全子会社のバンコク銀行(中国)を通じて事業を展開しています。また、インドネシアのパーマタ銀行も傘下に入っています。

急速なデジタル顧客急増という課題

バンコク銀行は24時間年中無休でサービスを提供する「眠らない銀行」であり、そのブランドは多くの人の羨望の的となっています。バンコク銀行が競争の激しいタイの金融サービス市場でマーケットリーダーとしての地位を確立していることは、同行が長年にわたり獲得してきた数々の賞によって証明されています。

実際、東南アジアで最大規模で最も成功している金融機関の1つとして、権威あるワールド・ブランディング・フォーラムから銀行部門のブランド・オブ・ザ・イヤーを受賞したとき、受賞は当然のことと受け止められました。受賞企業は、ブランド評価、消費者市場調査、消費者による投票の3つの流れに基づいて審査されました。

同行のブランドにとって、特にモバイルバンキングとデジタルバンキングという最もよく使用されている2つのプラットフォームにおいて、利用者から見て強い立場を維持することが極めて重要です。いずれのサービスでも、24時間年中無休で稼働し、使いやすく、機能性が高く、いつでも迅速に対応できるようにすることが必須です。

バンコク銀行のシニア・エグゼクティブ・バイスプレジデントであるイアン・ガイ・ギラード氏は、有線インターネットが「タイでは全く普及していなかった」と振り返ります。そのため、デジタルバンキングのサービス開始が遅くなりました。3Gおよび4Gに対応した携帯電話が登場すると、デジタルバンキングは現実的な選択肢となりました。

「当行がインターネットバンキングを立ち上げ、さらにモバイルバンキングを立ち上げると、これらのサービスへの利用件数が突如として増加したのです。インターネットバンキングでは100万人のユーザーを獲得するのに数年を要しましたが、モバイルバンキングではユーザー数が2カ月間で300万人に達しました。タイの国民は誰もが携帯電話を所有しており、普及率は約140%です。低賃金の労働者でさえスマートフォンを持っています。そして、銀行口座を持たない層が存在する限り限り、政府の支援は非常に積極的です。[口座]の残高が少なくても、デジタルバンキングのすべての機能をご利用いただけます」とギラード氏は説明します。

バンコク銀行のモバイルアプリのユーザー数は現時点で600万~700万人で、その数は毎月増加しています。同行は今後12ヵ月間でその数を800万~1000万人に増やしたいと考えています。当行の2020年のトランザクション件数は8億1,900万件に上り、2021年は10億件を突破すると予想されています。しかし、需要の伸びに追いつくには課題がありました。

これについてギラード氏は次のように述べています。「使用率は高まり、顧客の期待は変化していました。4、5年前までは他行に先行していましたが、やがて遅れを取っていると感じるようになりました。プロダクトだけでなく顧客エクスペリエンスを改善し、顧客が何をしているのか、システムが顧客の要求にどのように対応しているのかを理解する必要がありました。単に「サーバーを稼働させる」という考え方ではなく、顧客の視点から見たエクスペリエンスをリアルタイムで理解する必要がありました」

シームレスな顧客エクスペリエンス

バンコク銀行の主な目標は3つありました。第一の目標は、ウェブサイトの信頼性とインシデント処理を改善して、稼働時間を延ばすとともにパフォーマンスを高めることでした。第二の目標として、当行のウェブサイトにおけるパートナーのAPIへの対応能力を高め、パートナーのプロダクト、アプリケーション、プラットフォーム、およびサービスと統合しやすくするアーキテクチャーを確立したいと考えていました。第三の目標として、顧客のニーズにより的確に応えるため、より高度なプロダクトとエンドツーエンドのソリューションを開発するとともに、個々の顧客グループ適した技術革新を進めたいと考えていました。

ギラード氏は次のように語ります。「高速かつ安全で、しかも使いやすくて優れたモバイルバンキングサービスと新しいデジタルエクスペリエンスを提供することが非常に重要です。「お客様が必要としているのは、これらのサービスが信頼できるものであること、そしていつでも利用できることです。」

バンコク銀行は自社開発の監視ツールを使用していましたが、そのツールは24時間365日のサポートには年中対応していませんでした。代わりに、「インストールと実行が簡単」であるという理由からNew Relicが推奨されました。

ギラード氏は当時を次のように振り返ります。「私たちはまるで目の不自由な人のようでした。インシデントや問題が発生したときに何が起こっていたのか分からなかったのです。ところが、New Relicのソリューションを導入すると、多くの情報が得られるようになりました。インシデントや問題が発生した瞬間に問題点を正確に把握できるようになりました。」

タワン・パンチャスリラット氏、 バンコク銀行テクノロジー担当バイスプレジデント

ギラード氏は語ります。「私たちはコンセプトの証明をいつまでも続けたくなかったので、New Relicのソリューションを選びました。当行はモバイルアプリの成長に関して積極的な目標を掲げています。そのため、ホスト単位の課金ではないNew Relic Oneの新しい価格モデルは非常に魅力的でした。」

New Relicが提供するオブザーバビリティは、バンコク銀行がウェブサーバーの負荷分散などの問題を見いだしてすぐに調整することを可能にしています。「どの時点でイベントが列を作り始めているのかを把握できるので、スピンアップしたり、再びスピンダウンしたりできます。」

バンコク銀行のテクノロジー担当バイスプレジデント、タワン・パンチャスリラット氏は次のように振り返ります。New Relicを使用する前は「私たちはまるで目の不自由な人のようでした。インシデントや問題が発生したときに何が起こっていたのか分からなかったのです。

New Relicのソリューションを導入すると、多くの情報が得られるようになりました。インシデントや問題が発生した瞬間に問題点を正確に把握できるようになったのです。これはとても役に立っています。」

透明性の向上、インシデント解決の迅速化

また、New Relicは銀行のトランザクション・システムのボトルネックに関する透明性を以前よりもはるかに高めました。タイは20年以上前からリアルタイムの銀行間決済システムを導入しており、モバイルバンキングはPromptPay(プロンプトペイ)など政府による将来を見据えた様々なイニシアチブを通じて後押しされています。従来の銀行間システムはストア・アンド・フォワード(蓄積交換)という仕組みに基づいています。しかしリアルタイムの送金では、他の銀行のシステムで問題が起きた場合、そのトランザクションはバンコク銀行のシステムでバックアップされます。New Relicは何が起こっているのかを示すことができたため、当行は送金を優先するためにファストトラック/スロートラック・システムを設計することができました。

新しい機能の導入もいっそうシームレスになっています。例えば当行はデータセンターにある新しい機能を追加する予定ですが、アプリの新バージョンがリリースされるまではユーザーが新機能を目にすることはありません。新機能の追加からリリースまでには通常、数日かかります。アプリの新バージョンがリリースされるまでの間、プロジェクトチームのメンバーはNew Relicを使用してレスポンスタイム測定機能を試すことができます。レスポンスタイムが大きな影響を受ける場合、チームはエンドユーザーが機能を使用し始める前に対応でき、最悪のシナリオの下ではキルスイッチを使用できます。これにより、新しい機能を展開する際の柔軟性と確実性が大幅に高まりました。

新型コロナウイルス感染症が勃発して以降、多くのスタッフが在宅で作業しており、リモートで監視することがいっそう不可欠となっています。

「New Relicを使用することで、銀行の外部から状況を監視したり、問題に対する警告を受け取ったりできるようになりました。また、New RelicをMicrosoft Teamsと統合したため、New RelicがTeamsを通じてアラートを送信できるようになりました。新型コロナウイルス感染症が勃発したとき、私たちは幸運にもOffice 365を展開し終えたばかりでした。実際には、このことも、New Relicの情報がTeamsを通じてCEOなどの経営陣に配信されるようになったことと相まって、利用の増加につながりました」とギラード氏は言います。

ギラード氏によると、New Relicのダッシュボードは経営陣に全容を提供する際の必要不可欠な機能となっており、システムに何が起こっているのかを経営陣がより詳細に把握して理解することを可能にしています。

ギラード氏は最後に、「New Relicが提供する透明性のおかげで、当行は注力すべき分野と改善すべき分野に投資することができるようになりました」と述べます。