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エア・ウォーター・デジタル株式会社|グループ共通基幹システムのサービス品質を向上。DXの土台作りとビジネス成長を支えるIT部門の挑戦

利用用途

185社の連結子会社を擁し、売上収益1兆円(2023年3月期)を達成したエア・ウォーターグループ。同グループのシステム化やDXを担っているエア・ウォーター・デジタル株式会社(以下、エア・ウォーター・デジタル)は、New Relicのオブザーバビリティプラットフォームによってグループ共通の基幹システムの観測を行い、トラブル対応のスピードを大幅に向上させている。

New Relicの導入目的と成果

  • オブザーバビリティにより、グループ共通基幹システムのサービス品質とユーザーの信頼を向上させる運用体制を確立
  • 包括的な観測により、外部ベンダーの有料サービスに頼らない監視プロセスを実現
  • New Relicによる観測データを共通言語に、アプリケーション運用チームとインフラ運用チームが協力したエラー対応体制を整備
  • システムの性能低下やエラーログの検知と、原因の特定に要する時間を従来の10分の1に圧縮。集積ログの分析・可視化に要する時間を3分の1に低減
  • ユーザー体験の悪化にプロアクティブに対応し、ユーザーの満足度と業務効率を高める取り組みを加速

利用製品

  • New Relic APM
  • New Relic Infrastructure
  • New Relic Synthetics
  • New Relic Browser
  • New Relic Logs
  • New Relic Dashboard

 

エア・ウォーター・デジタルの親会社、エア・ウォーター株式会社(以下、エア・ウォーター)は2000年の発足以降、数々のM&Aを積み重ねながら事業領域を拡大。ものづくりの現場で活躍する産業ガスからケミカル、人々の生命を支える医療、暮らしにかかわるエネルギー、医療、農業・食品、さらには物流、海水、エアゾールなど多岐にわたり、国内外のグループ会社の数は2023年3月時点で276社(連結子会社185社)に上る。

 

そうしたグループにあってエア・ウォーター・デジタルは、グループ共通の基幹システムやネットワークなどの企画・開発・保守・運用管理を担っているほか、近年ではグループのDX戦略を推進する中核の組織としても機能している。

 

「エア・ウォーターグループでは、DXによるデータ経営の高度化や業務革新、物流の変革を目指しており、当社はその戦略に則りながら、デジタル技術とデータによるグループ全体の生産性向上や競争力強化、新たなビジネスモデルの創出に力を注いでいます」と、エア・ウォーター・デジタル システム本部 基幹システム部 部長の安住 憲一氏は語る。

 

このDXの土台づくりの1つが、基幹システムの整備だ。エア・ウォーター・デジタルでは、グループ経営の可視化や基幹業務の効率化などを主眼に2015年からグループ共通の新たな基幹システム「AXIS'(以下、アクシス)」の導入を進めてきた。

 

アクシスはマスターの統合管理や財務・会計、販売管理などの機能を提供するクラウド対応のパッケージ型ERPシステムと、それと連携する周辺システム(人事・給与システムや予実管理システム、BIシステムなど)によって構成されている。産業ガス事業などを展開するエア・ウォーター本社とグループ各社への導入が段階的に進められ、ユーザー数は約2,000名に達している。また今後もグループ会社順次導入が行われる計画だ。

 

そのアクシスを一元的に観測し、異常検知やその原因特定のスピードアップに役立てられているのがNew Relicである。

 

New Relicは業界を代表するオブザーバビリティプラットフォームであり、国内では39%のトップシェアを獲得している。デジタルサービスにおけるあらゆる重要指標の「観測」を可能にし、アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化する。

基幹システムに対するユーザー満足度の向上を目指しオブザーバビリティの導入を決断

エア・ウォーター・デジタルがNew Relicの活用に乗り出した背景には、ユーザー数の増加に伴う基幹システムの性能低下とユーザー業務への支障が目立ち始めた事があった。

 

安住氏によれば、アクシスの導入企業数(=ユーザー数)が増えるにつれて、アクシスの中心を成すERPの性能劣化が顕著になり、月末・月初における処理の集中によって業務に待ち時間が発生し現場業務の効率化の足かせになっていたという。

 

「システムの性能低下に伴う業務非効率はアクシスを使うユーザーから不満の声が数多く寄せられ、基幹システム部の人員はその対応に忙殺される毎日を過ごしていました。また、システムのインフラ監視は行えていたものの、システムの性能低下を検知する仕組みはなく、ゆえに、ユーザーからの性能低下連絡を受けてから、運用担当者が異常に気づき、相応の時間をかけて問題原因を突き止めるといった事後対応を繰り返さざるをえませんでした」(安住氏)

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システム本部 基幹システム部 部長 安住 憲一 氏

こうした事後対応の繰り返しによって、サービス品質に対するユーザーの満足度や信頼は大幅に低下し、かつ、基幹システム部で働く人員の疲労が蓄積されていく状況に陥っていたという。そこで同社では、アクシスの開発・実行環境として、オラクルが提供するクラウドプラットフォーム「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」の採用によって性能問題の解決を図るのに加え、運用監視のあり方を変革し、アクシスに対するユーザーの満足度や信頼を回復・向上させようと考えた。そのことがオブザーバビリティの導入へとつながったと安住氏は振り返る。

 

安住氏の言う「監視のあり方の変革」には、システム監視におけるベンダー依存の状況から抜け出し、監視プロセスを社内で完結させるという狙いもあった。

 

「従来は、基幹システムを支える仮想環境やサーバの監視を、MSP(マネージドサービスプロバイダー)などの外部ベンダーの有料サービスを通じて行っていました。そのため、トラブルが発生するたびにベンダーに依頼をしないとサーバや仮想環境の状態が確認できないといった問題や、自社と外部ベンダーとの間で取得できる情報の量に格差が生じるといった問題がありました」と安住氏は語る。

 

「そこで、基幹システムを一元的に観測し、状態を可視化できるオブザーバビリティを導入することで、社内の人員だけでシステム監視が完結する体制を整えようと考えました」

New Relic採用の決め手は日本語によるサポート品質の高さを含む総合力

New Relicをオブザーバビリティプラットフォームとして選定した理由について、山上氏は、製品としての完成度の高さや機能の豊富さ、そして日本語によるサポート品質の高さなどを挙げる。

 

「オブザーバビリティのツールは海外製が多く、日本語によるサポート品質に難があるのが一般的です。しかしNew Relicは、日本語によるサポート品質が非常に高品質でした。また、New Relicにおけるログやインフラ、APMといった機能も使いやすく、これならドリルダウンによってERPにおける性能低下の原因を突き止めることも容易に行えると考えました」(山上氏)

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システム本部 基幹システム部 運用グループ 山上 和広 氏

加えてNew Relicの場合、ユーザー体験を可視化する機能も充実している。さらに、そうしたデータをダッシュボードで一元的に可視化し、「基幹システムのユーザー体験に今何が起きているか」を、システム運用に精通していない人にもわかりやすく、簡単にリアルタイムで共有することができる。

 

「当社では、いくつかのオブザーバビリティ製品を比較検討しましたが、統合的に見てNew Relicが最も優れていると判断しました」(山上氏)

 

こうしてNew Relicの採用を決めた同社は、2023年3月からテスト環境でNew Relicの動作検証と設定作業を実施。同年9月からは本番環境にNew Relicを適用し、のちの12月にはアクシスのERPを支えるインフラとアプリケーションの状態を観測する環境を整えた。

 

トラブル検知と原因特定に要する時間を10分の1に短縮

New Relicを用いたアクシスの監視は安住氏が率いる基幹システム部が担っている。基幹システム部は、システム(アプリケーション)の運用を担うチームとインフラ運用を担うチーム(基盤システム部)に分かれており、その双方がNew Relic に取り込まれた情報を共有しながら、協力してアクシスの運用監視にあたっている。

 

また山上氏によれば、従来の設定では、アクシスから膨大な数のエラーログが発せられ、その全件に対応するのは現実的ではなく無駄も多くなるという。そこで同社ではNew Relic Logsを活用し、大量のエラーログの中から重要度の高いものだけを抽出し、適切な担当者にメールで自動送付する(エスカレートする)仕組みを構築した。

 

「新たに構築した仕組みでは、インフラ運用チームには抽出したエラーログの全件がメールで送付されますが、アプリケーション運用を担う人員に対しては、会計や販売管理など、担当する業務領域に合わせた形でエラーログが振り分けられて送付されます。アプリケーション運用の担当者は、送付されたエラーログの内容に応じて原因を特定して問題解決に当たりますが、社内の人員だけでは解決が困難な場合にはERPベンダーに問題をエスカレートし、解決を図ることになっています」(山上氏)

 

そんなエスカレーションの仕組みづくりもあり、New Relicの採用は多くの恩恵をエア・ウォーター・デジタルにもたらしていると安住氏は言う。

 

その1つが、エラーログの検知とエラー原因特定のスピードが以前の10倍に高められたことだ。

 

「New Relic導入以前は、エラーログを発見してから、サーバにログインし、エラーの原因を突き止めるまでに平均10分の時間を要していました。それが現在は、エラーログのメール通知を読むだけでエラー発生場所と原因がある程度特定できます。それに要する時間は1分程度です」(安住氏)

 

また、積み上げたログを一括して分析・可視化し、システムの改修・改善の計画づくりに役立てる作業も、従来の平均15分から5分に短縮されたという。さらに、システム性能低下やその原因を検知・特定する時間も従来の10分の1に圧縮されていると安住氏は明かす。

 

「システム性能に何らかの問題が認められた際、これまではベテランの人員が過去の経験にもとづいてシステムを調べ上げることが多く、その作業にはベテランでも平均10分程度の時間がかかっていました。今では一定のしきい値を超えた性能問題だけが問題原因の予測とともにリアルタイムでメール通知されるようになっており、その内容の確認には1分ほどしかかかりません。つまり、性能問題の検知と原因特定にかかる時間も10分の1に短縮されています」(安住氏)

性能問題へのプロアクティブな対応能力を高める

こうした運用業務の効率化により、月末・月初におけるアクシス運用の業務負荷が大幅に引き下げられた。この結果としてNew Relic活用の幅が広がり、システムの性能低下に対する「プロアクティブな対応」に取り組む「時間的な余裕」がより多く持てるようなったと山上氏は言う。

 

「性能問題など、基幹システムのユーザー体験に負のインパクトを与えるトラブルの発生を事前に予測してチューニングをかけることは、New Relicの導入当初から目指してきたことの1つです。現時点(2024年2月時点)では、New Relic Browserをまだ本格的に活用できていませんが、今後はその活用を推し進めることで、ユーザー体験を可視化しながら性能低下の兆候がつかめるようになり、ユーザー業務に支障をきたす前にOCIに対してチューニングをかけるなどのプロアクティブな対応が実現されるはずです」(山上氏)

システム運用品質を可視化し基幹業務効率化への貢献を訴求

New Relicの導入で相応のベネフィットを得たエア・ウォーター・デジタルは今後、New Relicによる観測対象を、アクシスを構成するERPだけではなく、生産管理の機能を中心にした他のERPをはじめ、予実管理システムなどへと押し広げることを視野に入れている。

 

また、New Relicによる観測対象をネットワーク性能にまで広げ、これまでよく見えていなかったネットワークの状態も捉えられるようにしたいと山上氏は言う。

 

「エア・ウォーター・デジタルにおけるNew Relicの活用は始まったばかりですが、グループ共通基幹システムの運用工数削減をはじめ、システムを利用するユーザーの満足度やその信頼を高めるソリューションとして十分に貢献してくれていると実感しています。これからも当社グループにおける我々の貢献度を高めるソリューションとして、New Relicを積極的に活用していく考えです。New Relicには引き続き、その取り組みを全力でバックアップして欲しいですね」と安住氏は結んだ。