イオンスマートテクノロジー|店舗とデジタルを融合させるイオンのトータルアプリ「iAEON」の顧客体験を向上

イオンスマートテクノロジー

利用用途

顧客中心のサービス体験創造の基盤となるイオンのトータルアプリ「iAEON」およびバックエンドシステムの信頼性向上、顧客視点を持ったプロダクト開発チームへの変革にNew Relicを活用

New Relicの選定理由と成果

  • コンテナおよびAzure AKS環境に最適なオブザーバビリティ環境の整備
  • イオンのトータルアプリ「iAEON」のエラー検知とトラブルシューティングの迅速化
  • トレンドの観測を通じて計画的なアプリケーション改善とサービス品質向上を推進
  • SLI/SLOの導入と顧客志向のプロダクト開発チームへの変革を目指す

利用製品

・New Relic APM
・New Relic Mobile
・New Relic Browser
・New Relic Logs
・New Relic Infrastructure
・New Relic Service Level Management

 

イオンスマートテクノロジーは、イオングループのデジタルシフト戦略を具現化するために2020年10月に設立された。イオングループは、小売、ディベロッパー、金融、サービスと、それらを支える機能会社が有機的に連携し、高いシナジーを創出する独自のビジネスモデルを構築している。国内外に1万7千を超える店舗を展開し、カード会員は約4,824万人、営業収益は9兆1千億円を超える国内最大級の流通企業グループである。「イオングループが本気で取り組むDX」には業界内外から大きな注目が集まっている。イオンスマートテクノロジー CTO室 SREチーム リーダーの齋藤光氏は次のように話す。

「イオングループでは、『デジタルシフトの加速と進化』を掲げた中期経営計画に基づき、『店舗・デジタルが融合されたシームレスな顧客体験』の実現を目指して様々な取り組みを進めています。イオンスマートテクノロジーが開発・運用する『iAEON(アイイオン)』は、その一翼を担うグループのポータル的なモバイルアプリであり、お客さま中心のサービス体験を創造するためのプラットフォームです」

顧客にとってのiAEONは、「ポイント」「支払い」「コンテンツ」がひとつになったイオングループのCX戦略の要となる総合スマートフォンアプリだ。iAEONアプリひとつあれば、店舗やオンラインでの買い物に加え、イオングループが提供する様々なサービスやコンテンツを快適に利用できる。獲得したWAONポイントをAEON Payでのコード決済に利用することも可能だ。

イオンスマートテクノロジー

イオンスマートテクノロジー株式会社 CTO室 SREチーム リーダー 齋藤 光 氏

「イオンの視点では、事業会社ごとに管理してきた90を超えるお客様IDを、iAEONを軸に統合することも大きな狙いです。この『共通ID』をもとに、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)を整備し、店舗とオンラインでの購買行動をグループ横断的に把握して、パーソナライズされたマーケティング活動を拡充させていく計画です。その先に描いているのは、お客さまを中心にイオングループの店舗やオンラインショップから形成される『イオン生活圏』の実現です」(齋藤氏)

2021年9月にサービスを開始したiAEONは、連携サービスを拡充させ顧客の利便性を高めてきた。ユーザー数も順調に伸長し、暮らしを支えるサービスとして着実に支持を拡大している。

「ユーザー規模の拡大を続ける中、iAEONアプリとサービス基盤において、いくつかのエラーによる不調が顕在化してきました。そこで私たちは、BFF(Backends For Frontends)を導入するとともに、オブザーバビリティプラットフォームNew Relicの活用を本格化させました」(齋藤氏)

BFFアーキテクチャの採用は、iAEONアプリの起動時間の短縮やレスポンスの改善に効果を示した。そしてNew Relicは、iAEONアプリからバックエンドまでを可視化し、エラー検知とトラブルシューティングの迅速化に大きな威力を発揮した。

iAEONアプリの利用状況やエラー状況を正確に可視化

齋藤氏が所属するCTO室は、テックリード、品質保証、SREの3チームから構成され、全社横断的なインフラ整備や技術課題の解決に特化した活動を行っている。    

「SREチームのミッションは、各サービス/プロダクトを支えるインフラ設計・構築・運用をベースに、開発チームとともにプロダクトの品質やユーザー体験を向上させることです。また、イネーブルメントSREとしてNew Relicの全社活用を推進するとともに、SRE(Site Reliability Engineering)の考え方を開発チームに啓蒙・定着化させる活動を行っています」(齋藤氏)

New Relicは業界を代表するオブザーバビリティプラットフォームであり、国内では39%のトップシェアを獲得している。デジタルサービスにおけるあらゆる重要指標の「観測」を可能にし、アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化する。イオンスマートテクノロジーが最初にNew Relicを導入したのは、iAEONのフロントエンド(IonicフレームワークによるiOS/Androidアプリ)だった。

「iAEONアプリで発生したエラーの原因調査を目的に、New Relic APMとMobileの活用を開始したのは2022年8月です。New Relicは優れた可視化・分析能力により、フロントエンドでのトラブルシューティングやパフォーマンス分析に即座に威力を発揮しました。また、エンドユーザーがどの機能をどれだけ使っているのかも正確に把握できるようになりました」(齋藤氏)

New Relic APMは、Webアプリケーションのレスポンスタイム、スループット、エラー率、トランザクションなどを可視化するとともに、ユーザー体験に影響するコードやコード間の依存関係をリアルタイムで特定できる。一方、New Relic Mobileは、クライアント端末の情報(OS、デバイス、ネットワークなど)、画面遷移などのユーザー行動、ページのロード時間などを観測できる。New Relic APMと組み合わせることで、フロントエンドとバックエンドの処理時間の差異を可視化・比較することも可能だ。

Azure上でモダンなコンテナアプリケーションを稼働

iAEONのバックエンドシステムはMicrosoft Azure上に構築されており、Azure Kubernetes Service(AKS)をはじめとするマネージドサービスを効果的に活用してマイクロサービス化されたアプリケーションを稼働させている。New Relicは、コンテナ/Kubernetes環境に最適なオブザーバビリティ環境の実現にも寄与した。

「New Relic APMとMobileの導入で手応えを得た私たちは、インフラやバックエンドシステムの状況からiAEONアプリでのユーザー体験まで、サービス/プロダクト全体を網羅的に可視化できるオブザーバビリティ環境の実現を目指して、New Relicの導入範囲を拡大していきました。フロントエンドとバックエンドで異なるAPMを使っていた時期もありましたが、現在はインフラ監視やログ分析も含めてNew Relicに統合されています」(齋藤氏)

iAEONアプリから利用できるサービスは、WAONポイントの獲得と使用、AEON Payコード決済やWAON電子マネーによる支払い、クーポンやキャンペーンの利用など多岐にわたる。

「お客さまがひとつの機能を使用するために、複数のバックエンドシステムが連携してこれを実現するのですが、従来は問題が発生したときの原因特定が非常に難しい状況でした。監視ツールがプロダクトごとにバラバラだったことも、トラブルシューティングを効率化できない要因だったと思います。各システムの関係者全員に調査を依頼してから、問題解決の方針と手順を確認できるまで数時間を要することも珍しくありませんでした」と齋藤氏は振り返る。

New Relicをシステム全体に導入してからは、問題検知からの初動が圧倒的に早くなり、初期段階の問題の切り分けに要する時間が4分の1に短縮されるようになったという。

「フロントエンド、バックエンド、インフラまで、あらゆる観測データがNew Relicに集約されたことで、iAEONアプリを起点にアプリケーションプロセス全体の流れが見えるようになりました。まずNew Relicのダッシュボードで全体を俯瞰的に見て、そこから問題箇所へドリルダウンしていく手順は、開発エンジニアにとって直感的でわかりやすく非常に合理的です」(齋藤氏)

プロダクト開発チームの意識を「顧客志向」に変える

齋藤氏は、イネーブルメントSREとしてNew Relicの全社活用を推進するとともに、SREの考え方をプロダクト開発チームに啓蒙・定着化させる活動の一環として「定点観測会」を実施している。

「定点観測会では、New Relicのダッシュボードを見ながら、エラーの発生傾向、パフォーマンスのトレンド、リソース使用率などの指標を評価し、課題への対処法を協議しています。New Relicの観測データをもとに議論を重ねることで、参加メンバーの中で目標や課題解決に対する共通認識が形成されたと感じています」(齋藤氏)

さらに、レスポンスタイムやエラー率といったNew Relicの観測データから「iAEONというプロダクトの品質」が示され、ユーザー体験を具体的に把握できるようになったことで、エンジニアの意識も徐々に変わりつつあるという。

イオンスマートテクノロジー

イオンスマートテクノロジー株式会社 CTO室 SREチーム リーダー 齋藤 光 氏

「iAEONにおける『顧客体験やサービス品質』は、プロダクトを磨き上げるために開発エンジニアが意識すべき指標である、という理解も進んできました。これは、内製化を進める開発チームにおいて非常に重要な変化です。New Relicは、エンジニアの意識を顧客志向に変え、組織の文化にも影響を与え得る強力なツールになることをまさに実感しています。SREチームとしての次のチャレンジは、サービスレベル目標(SLO)を制定し、開発チームがより具体的にプロダクトの改善に取り組めるようにすることです」と齋藤氏は力を込める。

New Relic Service Level Management(SLM)を利用することで、チーム内の認識合わせや改善への取り組みを具体化できるだろう。「ビジネスの成果を追求していくために、やるべきことはまだ山積み」と言う齋藤氏らが、新しいチャレンジを始めるための環境はすでに整えられている。齋藤氏は次のように結んだ。

「モニタリングはユーザーに近いところから行うのが原則、というのが私の持論です。APMとMobileに強みがあるNew Relicに観測データを集約する、という判断は正しかったと確信しています。iAEONによる店舗・デジタルが融合されたシームレスなお客さま体験をより快適なものとし、イオングループのデジタルシフト戦略を成功に導くために、New Relicは欠かせないプラットフォームです。セキュリティ機能の強化も、私たちがDevSecOpsを進めてく上で役立ってくれるでしょう。これからも、先進的なオブザーバビリティ環境と技術サポートを提供してもらえることを期待します」