オブザーバビリティ(可観測性)とは、システムから出力されるデータを用いて、その内部状態をどれだけ正確に推測できるかを示す指標です。これは、エンジニアがシステムの動的な振る舞いを迅速に解明し、パフォーマンスと信頼性を向上させるためのプロアクティブな対策を講じることを可能にする一連のプラクティスを指します。オブザーバビリティは、長年確立されてきた「監視」の概念を拡張し、システムに関するより高度な洞察を引き出すものです。

オブザーバビリティプラットフォームは、データの収集、保存、分析、可視化を一元的に行うためのソリューションです。メトリクス、イベント、ログ、トレース(これらを総称してMELTと呼びます)などのテレメトリーデータを集約し、ソフトウェアシステムの全運用データにわたる相関的なリアルタイムビューを提供します。このプラットフォームは、エンジニアが未知の問題を探求し、アプリケーションとインフラストラクチャを調査するための強力なツールとなります。結果として、エンジニアはシステム挙動を深く理解し、データに基づいた的確な意思決定を下すことで、システムのパフォーマンスと信頼性を飛躍的に向上させることができます。

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オブザーバビリティの柱

システムの動作に関する洞察を得るには、オブザーバビリティプラットフォームの4つの基本的なデータタイプ、つまりオブザーバビリティの柱が必要です。オブザーバビリティの柱はそれぞれ、システムがどのように機能しているかについて独自の価値を提供します。

  • メトリクス (Metrics) ある瞬間のシステムの状態を定量的に示す数値データです。各メトリクスは、基本的にタイムスタンプ、名前、そして値で構成されます。
    これには、サーバーのCPU使用率、アプリケーションのスループット(秒間リクエスト数)、APIの平均応答時間、エラー率などが含まれます。メトリクスは、その集合体としてシステムの傾向分析や、パフォーマンスに関する深い洞察を得るために利用されます。
  • イベント (Events) 
    システム内で発生した、個別の事象を記録した構造化データです。ユーザーのログイン、コードのデプロイといったシステム上の出来事から、アプリケーションにおける個々のリクエスト処理(トランザクション)まで、多様な事象がイベントとして扱われます。イベントはタイムスタンプに加え、処理時間、リクエストパス、ユーザーID、エラーの有無といった豊富な属性情報を持つことができ、特定の出来事がシステムに与えた影響を具体的に調査する起点となります。
  • ログ (Logs) 
    特定の処理やイベントの実行過程に関する、文脈情報を含む詳細なテキスト記録です。タイムスタンプと共に、エラーメッセージ、スタックトレース、実行された処理の詳細なステップなどが記録されます。例えば、1つのトランザクションイベントの裏では、その処理の進行状況を示す多数のログが出力されていることがあります。主に、問題発生時の根本原因を特定するための詳細なデバッグ情報として利用されます。近年では、AIを活用して膨大なログデータから異常の兆候を検知したり、将来のシステム動作を予測したりする高度な分析も行われています。
  • トレース (Traces) 
    あるリクエストがシステム内の複数のサービスをどのように経由して処理されたか、その一連の経路全体を可視化するデータです。トレースは、親子関係を持つ複数のスパン(個々の処理単位)で構成されます。APMにおけるトランザクションイベントやデータベースへの問い合わせなどが個々のスパンとなり、それらが連なることで、分散システムにおける処理のボトルネックやエラー箇所を特定できます。

これらのオブザーバビリティの柱に加えて、ユーザー体験、メタデータ、その他の構造化コンテンツや非構造化コンテンツなどのデータも、システムの動作を理解するのに役立ちます。

オブザーバビリティの柱の詳細情報

オブザーバビリティの仕組み

オブザーバビリティは、コンテナやマイクロサービス、IoTデバイスといったシステムのあらゆるエンドポイントから、メトリクス、イベント、ログ、トレースといったデータを収集することから始まります。

オブザーバビリティプラットフォームは、これらの多様なデータを一元的に集約し、相互に関連付けます。エンジニアはプラットフォームを通じてデータを横断的に分析・可視化し、システム全体で何が起きているかを明確に把握することで、問題の根本原因を迅速に特定し、パフォーマンスをプロアクティブに最適化することが可能になります。

なぜオブザーバビリティは現代のビジネスに不可欠なのか

 

現代のエンタープライズシステムは、マイクロサービス、Kubernetes、そして複数のクラウドが混在する環境へと、ますます複雑化しています。同時に、DevOpsやアジャイル開発の浸透により、ソフトウェアのリリース速度はかつてないほど加速しました。この「システムの複雑化」と「開発の高速化」という2つの潮流は、問題発生時にその根本原因を迅速に特定することを、極めて困難かつ高コストな課題に変えています。

このような課題を解決する鍵が、オブザーバビリティです。オブザーバビリティは、チームの効率化、システムのプロアクティブな最適化、迅速な問題解決を実現し、これらはすべて組織の収益に直接的な影響を与えます。

オブザーバビリティ導入のビジネスケースは、具体的な数値にも表れています。「2024年のオブザーバビリティ予測」レポートによると、回答者の46%が「システムのアップタイムと信頼性が向上した」と答えています。さらに58%は、オブザーバビリティへの投資から年間500万ドル以上の価値を得ており、投資収益率(ROI)の中央値は4倍(295%)に達しました。これは、オブザーバビリティへの1ドルの支出が、4ドルの価値を生み出していることを意味します。

デジタルサービスがビジネスの成否を直接左右する現代において、オブザーバビリティはもはや単なるIT運用の選択肢ではなく、ビジネスの成長を支える戦略的な必須要件となっています。

 

オブザーバビリティと監視:その違いとは?

 

オブザーバビリティと監視は密接に関連していますが、その目的は異なります。端的に言えば、「監視」はシステムが正常かどうか(Is it working?)を問い「オブザーバビリティ」はシステムがなぜそのように振る舞うのか(Why is it behaving this way?)を問います。これは、従来の監視の発展形としてオブザーバビリティが登場した背景を理解すると、より明確になります。

 

監視:既知の問題を把握する

 

監視(モニタリング)は、システムの**「既知の未知(Known Unknowns)」に対処するアプローチです。これは、あらかじめ問題となりそうな箇所(CPU使用率の上昇、ネットワーク帯域幅の逼迫など)を予測し、そのためのダッシュボードやアラートを設定しておく、いわばシステムの定期健康診断**のようなものです。

しかし、今日の動的で複雑なクラウドネイティブ環境では、すべての障害パターンを事前に予測することは不可能です。DevOpsによる高速なリリースサイクルは、予期せぬ新たな問題を生み出す可能性を常に秘めています。

 

オブザーバビリティ:未知の問題を探求する

 

オブザーバビリティ(可観測性)は、このような**「未知の未知(Unknown Unknowns)」**に対処します。これは、障害の発生を事前に予測するのではなく、システム全体から豊富なデータ(メトリクス、イベント、ログ、トレースなど)を常時収集し、問題が発生した際にどんな問いかけ(質問)もできる状態を指します。

この豊富なデータと、それを横断的に分析できるプラットフォームによって、開発チームは予期せぬ問題の根本原因を、仮説を立てながら自由に探求し、迅速に突き止めることができます。

 

結論:監視とオブザーバビリティの関係性

 

誤解されがちですが、オブザーバビリティは監視を不要にするものではありません。オブザーバビリティは監視を包含する、より広範な概念です。

両者の関係は、言葉の品詞で考えると分かりやすいでしょう。

  • 監視(Monitoring): システムの特定の指標を「監視する」という行動(動詞)
  • オブザーバビリティ(Observability): システムが「観測可能である」という状態や性質(名詞)

つまり、既知のリスクに対しては「監視」を行い、未知の複雑な問題が発生した際には、システムの「オブザーバビリティ」を駆使して原因を究明する、という関係性になります。監視は、高いオブザーバビリティを実現するための重要な活動の一つなのです。

従来の監視の限界

 

従来の監視は、事前に定義した項目、すなわち「既知の未知」しか追跡できません。

例えば、「アプリケーションのスループットは?」「CPU使用率が80%を超えたらアラートを出す」といった、あらかじめ想定した問いや閾値(しきいち)には対応できます。しかし、マイクロサービスで構成された分散システムのように、コンポーネントが動的かつ複雑に連携する環境では、あらゆる障害を事前に予測することは不可能です。

 

オブザーバビリティが拓く新たな可能性

 

これに対し、オブザーバビリティは「未知の未知」つまり、存在自体を予期していなかった問題やパターンを探求する能力を与えてくれます。

システムに「何が起きているか」だけでなく、「なぜそれが起きているのか」を深く理解するための鍵、それがオブザーバビリティです。

より良いオブザーバビリティのためのベストプラクティス

 

オブザーバビリティは、一般的にMELT(メトリクス、イベント、ログ、トレース)と呼ばれる4つのデータタイプを基礎とします。しかし、単にこれらのデータを集めるだけでは、複雑なシステムを深く理解するための十分な洞察は得られません。オブザーバビリティを最大限に活用するには、以下のベストプラクティスが重要となります。

 

1. オープンインストゥルメンテーションの採用

 

これは、特定のITベンダー製品に縛られることなく(ベンダーロックインを避け)、標準化されたオープンな仕様に基づいてテレメトリーデータを収集するアプローチです。

代表的な例が、Cloud Native Computing Foundation (CNCF) が推進する「OpenTelemetry」や「Prometheus」です。これらのオープンな規格を利用することで、一度アプリケーションに計装(インストゥルメンテーション)を施せば、収集したデータを任意の分析ツールやプラットフォームに送信できるようになり、将来的なツールの乗り換えも容易になります。

 

2. AIOpsの活用

 

複雑なシステムでは、人手だけですべてのインシデントを迅速に処理することは困難です。そこで重要になるのがAIOps(AI for IT Operations)です。

AIOpsは、オブザーバビリティによって収集された膨大なテレメトリーデータに機械学習(ML)を適用し、IT運用プロセスを自動化・高度化します。具体的には、大量のアラートの中から本当に重要なインシデントを自動で関連付け、優先順位を判断します。

これにより、ノイズとなる誤検知を削減し、問題の早期発見と平均解決時間(MTTR)の大幅な短縮を実現します。

 

オブザーバビリティツールの利点

 

オブザーバビリティツールは、複雑なデジタルビジネスのパフォーマンスを深く理解し、改善するための力をチームに与えます。その利点は、単なる技術的な問題解決に留まらず、顧客体験の向上からビジネスの成長加速まで、多岐にわたります。

 

1. 信頼性の向上と迅速な問題解決

 

オブザーバビリティは、システムの健全性を維持し、インシデントからの迅速な復旧を可能にします。

  • 根本原因の迅速な特定: 複雑なシステムで問題が発生した際、その根本原因を迅速に突き止め、平均解決時間(MTTR)を大幅に改善します。
  • ダウンタイムの削減: 稼働時間とパフォーマンスを正確に把握し、障害の発生を未然に防いだり、影響を最小限に抑えたりすることで、ビジネス機会の損失を防ぎます。
  • 問題の再発防止: 発生したインシデントから学び、恒久的な対策を講じることで、システムの信頼性を継続的に向上させます。

 

2. 優れた顧客体験の創出

 

システムのパフォーマンスデータとユーザーの行動を結びつけ、顧客満足度の高いサービス提供を可能にします。

  • ユーザー行動の理解: 実際のユーザーがシステムをどのように利用しているかを理解し、体験を損なうボトルネックやエラーを発見します。
  • ビジネス指標の向上: より良いデジタルエクスペリエンスを提供することで、顧客のコンバージョン率、リテンション率、そしてブランドロイヤルティの向上に貢献します。

 

3. ビジネスとイノベーションの加速

 

組織全体のデータ活用を促進し、より迅速でスマートなビジネス展開を支援します。

  • 信頼できる唯一の情報源の提供: 運用データを一元化することで、開発、運用、ビジネスといったチーム間の壁を取り払い、データに基づいた円滑なコラボレーションを促進します。
  • 市場投入までの時間短縮: 運用効率が高まることで、チームは自信を持って、より速いサイクルで高品質なソフトウェアをリリースでき、イノベーションの文化が醸成されます。
  • データドリブンな意思決定: ビジネスパフォーマンスの変化をリアルタイムに可視化し、投資の最適化や戦略策定に役立つ具体的な洞察を提供します。

 

オブザーバビリティの課題

 

オブザーバビリティの導入は、単なるツールの入れ替えではなく、組織的な変革を伴うため、いくつかの課題が生じる可能性があります。成功には、これらの課題を理解し、戦略的に取り組むことが不可欠です。

 

1. 思考と文化の変革

 

最大の課題は、技術よりもむしろ組織の文化や考え方にあります。

従来の監視は主にIT運用チームの関心事でしたが、オブザーバビリティは開発、運用、ビジネスの各部門が一体となり、「システムのパフォーマンスが、いかに顧客体験や事業成果に結びついているか」を共有し、理解する必要があります。これは、部門間のサイロを打破し、ツール導入だけでなく、組織全体の戦略としてオブザーバビリティを推進するという、トップダウンの意識改革が求められます。

 

2. データ戦略の再構築

 

オブザーバビリティは、従来のデータ管理手法に大きな変革を迫ります。

  • データの多様性とサイロ化: メトリクスやログといった従来のデータだけでなく、ユーザー行動データやメタデータなど、多様な非構造化データを統合的に扱う必要があります。サイロ化されたデータ基盤では、システム全体を横断する深い洞察は得られません。
  • データの量と揮発性: コンテナやサーバーレス関数など、現代のクラウド環境では、ITリソースが数秒単位で生成・消滅します。この揮発性の高い(ephemeral)環境からは、膨大かつ多様なデータが高速でストリーミングされるため、これらをリアルタイムで処理・分析できるスケーラブルなデータ基盤が不可欠です。

 

3. 計画的なインストゥルメンテーション

 

意味のあるデータを収集するには、アプリケーションへの計装(インストゥルメンテーション)が必須ですが、これも課題の一つです。

オブザーバビリティは、開発チームが自らのコードに「どのような問いに答えられるようにすべきか」を考え、質の高いテレメトリーデータを出力するように、意図的に設計・実装することを求めます。特に、チームが分散しているDevOps環境では、全社で一貫性のあるデータ品質を保つために、インストゥルメンテーションの標準化や計画的な導入作業が必要となります。

 

企業がオブザーバビリティを導入する理由

 

企業がオブザーバビリティへの投資を加速させる背景には、単なるシステム監視に留まらない、より戦略的な目的があります。「2024年のオブザーバビリティ予測」レポートによると、1,700名の回答者が挙げる導入理由は、主に以下のトレンドに集約されます。

 

主な戦略的要因

 

レポートによれば、オブザーバビリティ導入を促進する最大の要因は、「セキュリティ、ガバナンス、リスク、コンプライアンスへの注力」と「AI技術の導入」が、ともに41%でトップに挙げられました。

これに続き、「ビジネスアプリケーションとの連携」(35%)、「クラウドネイティブのアプリケーションアーキテクチャー開発」(31%)、「マルチクラウドへの移行」(28%)、「顧客体験マネジメントの重視」(29%)といった、現代のビジネスおよびテクノロジー環境を反映した要因が挙げられています。

 

ベストプラクティスの導入状況

 

また、同レポートは、多くの企業がオブザーバビリティの導入に着手しているものの、その成熟度には差があることも示唆しています。回答者のほとんど(83%)が2つ以上のベストプラクティスを導入している一方で、5つ以上を導入している企業はわずか16%に留まりました。

導入が進んでいる具体的な実践例は、以下のカテゴリーに分類できます。

  • 開発と運用の自動化
    • CI/CD(継続的インテグレーション/配信)の実践 (40%)
    • 自動化ツールによるインフラの設定・オーケストレーション (37%)
    • インシデント対応の一部自動化 (34%)
  • データ活用のための基盤構築
    • 複数チームで利用可能なテレメトリーの統一ビュー (35%)
    • 臨機応変なデータクエリ能力 (35%)
    • ビジネスインパクトを数値化するためのデータ活用 (34%)
    • 幅広いユーザーによるテレメトリーデータへのアクセス (32%)

 

オブザーバビリティツール選定の重要ポイント

 

優れたオブザーバビリティツールは、単なるデータ収集基盤ではありません。複雑なシステムから価値ある洞察を引き出すための戦略的な投資です。ツールを検討する際には、以下の重要なポイントを評価基準とすることが不可欠です。

 

1. 包括的なインテグレーション

 

評価するツールが、利用中の言語、フレームワーク、クラウドサービスから各種ソフトウェアまで、テクノロジースタック全体と容易に連携できるかを確認します。インテグレーションの範囲が狭いと、観測データに抜け漏れが生じ、システム全体を正しく把握できません。

 

2. 直感的な使いやすさ

 

導入や日々の操作が複雑なツールは、組織に定着しません。開発者から運用担当者まで、あらゆるチームメンバーが直感的に使え、容易にインサイトを得られることが、ツール活用の鍵となります。

 

3. リアルタイム性と実用的なインサイト

 

データがリアルタイムに表示されることはもちろん、それが何を意味するのかという「コンテキスト(文脈)」まで提供してくれるかが重要です。単なるグラフの表示に留まらず、「なぜ」問題が起きているのかを理解できる、実用的なインサイトが求められます。

 

4. AIによる自動化と予測

 

AIOpsの活用は、現代のオブザーバビリティに不可欠です。機械学習(ML)を用いて、アラートのノイズ削減、問題の自動切り分け、そして将来の障害予測といった機能を提供できるかを確認します。

 

5. 統合プラットフォーム(信頼できる唯一の情報源)

 

データソースごと、チームごとにツールが乱立すると、かえってサイロ化が進んでしまいます。すべてのテレメトリーデータを一元的に管理・分析できる単一のプラットフォームは、組織全体で「信頼できる唯一の情報源」として機能します。

 

6. 費用対効果(ROI)

 

市販ツールの導入費用であれ、オープンソースを自社で運用するための人的コストであれ、投資に見合う価値が得られるかは最も重要な評価基準です。ダウンタイムの削減やイノベーションの加速といった効果が、総所有コスト(TCO)を上回るかを慎重に見極める必要があります。ビジネスオブザーバビリティを定量化する方法の詳細については、こちらをご覧ください

 

New Relic:これらの要件を満たす選択肢

 

New Relicのインテリジェントオブザーバビリティプラットフォームは、これら選定の重要ポイントをすべて満たすように設計されています。775以上のインテグレーション、AIが組み込まれた30以上の機能を提供し、テクノロジースタック全体にわたる完全な可視性とスケーラビリティを実現します。

データ、ツール、チームのサイロ化を解消するオールインワンプラットフォームとして、お客様のビジネスの信頼性向上と成長を支援します。そのリーダーシップは、2024年Gartner MagicQuadrantのオブザーバビリティプラットフォーム部門において、12回連続で「リーダー」として選出されたことにも示されています。

 

もっとも一般的なオブザーバビリティのユースケース

 

オブザーバビリティは、もはや特定のチームだけのツールではありません。開発、運用、ビジネスの各チームが、システムの健全性という共通の目標に向かうための「共通言語」として機能します。以下に、代表的なユースケースを役割ごとに紹介します。

 

1. SRE・IT運用チーム:システムの信頼性維持と安定稼働

 

サイトリライアビリティエンジニアリング(SRE)やIT運用(ITOps)チームにとって、オブザーバビリティはシステムの安定稼働を維持するための根幹となります。彼らは、サービスレベル目標(SLO)を達成するために、パフォーマンスの監視、インシデントの迅速な検知と根本原因の特定、そして将来の需要を予測するキャパシティプランニングにオブザーバビリティを活用します。

 

2. 開発チーム:本番環境でのデバッグと迅速な改善

 

ソフトウェア開発チームは、オブザーバビリティを使って「シフトレフト」(開発サイクルの早い段階で品質を確保する考え方)を実践します。自らリリースしたコードが本番環境でどのように動作しているかを直接観測し、エラーが「いつ、なぜ」発生したのかを迅速に突き止めます。これにより、複雑な問題を効率的にデバッグし、パフォーマンスを改善することが可能になります。

 

3. ビジネス・プロダクトチーム:顧客体験と事業成果の可視化

 

オブザーバビリティは、技術的な指標とビジネス指標を結びつけます。例えば、プロダクトマネージャーは、アプリケーションの応答速度がユーザーのコンバージョン率にどう影響しているかを分析したり、新機能が実際にどれくらい利用されているかを把握したりできます。これにより、データに基づいた製品改善や意思決定が可能になります。

 

ソフトウェアパフォーマンスの継続的な最適化

 

DevOpsによる迅速な開発サイクルは、市場投入までの時間を短縮する一方で、予期せぬパフォーマンスの低下やスケーラビリティの問題を引き起こすことがあります。

オブザーバビリティは、開発チームがパフォーマンスに影響を与えるボトルネックを本番環境で特定し、継続的にコードを最適化していくための重要な洞察を提供します。

例えば、南米最大級のあるソフトウェア開発組織が、オブザーバビリティを活用して開発プロセスの課題を乗り越え、パフォーマンスを改善した事例をご覧ください。

 

ツールチェーンの簡素化とWebパフォーマンスの向上

 

システムの成長に伴い、監視ツールが増え続けると、データやダッシュボードがチームごとにサイロ化してしまう「ツールの乱立」という問題が生じます。エンジニアは、複数の画面を切り替えながら手動で情報を関連付ける作業に時間を浪費し、結果としてインシデントの解決が遅れてしまいます。

オブザーバビリティプラットフォームによってツールチェーンを単一の情報源に統合することで、エンジニアは問題の把握に要する時間を短縮できます。これは、平均検出時間(MTTD)や平均解決時間(MTTR)を改善し、最終的にWebサイトのパフォーマンス向上に直結します。

ある企業が、乱立していたオブザーバビリティツールを単一プラットフォームに統合し、コアウェブバイタルを改善した事例をこちらでご覧ください。

 

小規模チームとオブザーバビリティ

 

リソースが限られている小規模チームにとって、オブザーバビリティは特に強力な武器となります。少人数のチームでは、一人のエンジニアが開発から運用まで複数の役割を担うことが多く、システムのあらゆる側面に専門家を配置する余裕はありません。

オブザーバビリティツールは、アプリケーションからインフラまで、システム全体の健全性を単一のビューで提供し、データ収集と分析を自動化します。これにより、チームは特定コンポーネントの深い専門知識に頼ることなく、問題の発生箇所を迅速に特定できます。

結果として、メンバーは手動でのデバッグ作業から解放され、より価値の高い業務に集中できるようになります。限られたリソースで生産性を最大化し、トラブルシューティングを効率化することで、大企業にも引けを取らない、信頼性の高いユーザー体験の提供が可能になるのです。

実際に、New Relicを活用してチームの効率を大幅に向上させたお客様の事例をこちらでご覧ください。

 

オブザーバビリティとDevOps:アジリティを支える必須の組み合わせ

 

DevOps文化の根幹は、迅速なデプロイと継続的な改善サイクルにあります。マイクロサービスアーキテクチャの採用はデプロイの頻度を劇的に増加させましたが、その一方で、システムの変更箇所と潜在的な障害モードも爆発的に増加させました。この絶え間ない変化の中で、起こりうる問題をすべて事前に予測し、監視を設定することは、もはや現実的ではありません。

オブザーバビリティは、このような動的な環境で活動するDevOpsチームに、必要不可欠な「羅針盤」を提供します。チームは、デプロイしたコードが本番環境で予期せぬ振る舞いをした際に、何が起きているかをただ受動的に知るだけでなく、「なぜ」そうなっているのかを能動的に問い、調査することができます。

 

オブザーバビリティがDevOpsチームを支援する具体的な方法

 

 

1. 明確な目標設定と共通認識の醸成

 

まず、信頼性の指標となる明確なサービスレベル目標(SLO)を設定し、それを計測するためのインストゥルメンテーションを実装します。データに基づいた客観的な目標を持つことで、開発、運用、ビジネスといった役割の異なるメンバーが、成功の定義について共通認識を持つことができます。

 

2. 迅速なフィードバックループの構築

 

チームで共有されたダッシュボードを通じて、すべての変更がシステムに与える影響をリアルタイムに測定します。これにより、デプロイした機能の良し悪しを即座に判断し、問題があれば迅速に対応するという、強力なフィードバックループが確立され、DevOpsのプラクティスが強化されます。

 

3. 継続的な改善と顧客価値の向上

 

アプリケーションの複雑な依存関係やインフラリソースの利用状況を深く分析することで、パフォーマンスのボトルネックを発見します。この洞察は、ソフトウェアのユーザー体験を継続的に向上させるための具体的な改善アクションに繋がり、顧客に提供する価値を最大化します。

 

オブザーバビリティがもたらす価値と未来

マイクロサービス、クラウド、そしてDevOpsが主流となった現代において、システムの複雑性と変化の速さは増す一方です。この環境では、「何が起きているか」を点として監視する従来の方法では不十分です。システム全体の挙動を深く理解し、「なぜそれが起きているのか」という問いに答える能力、すなわちオブザーバビリティが不可欠となります。

真のオブザーバビリティを実現するには、単にデータを収集するだけでは足りません。オープンな規格に基づいたインストゥルメンテーション、文脈を理解するためのデータ相関、そしてAIOpsによる自動化といったベストプラクティスを、単一のプラットフォーム上で実践することが成功の鍵です。

最終的に、オブザーバビリティがもたらすのは、技術的な課題解決に留まらない、ビジネス価値そのものです。ダウンタイムの削減やチームの効率化を通じて、優れた顧客体験を創出し、イノベーションを加速させる。オブザーバビリティは、今日のデジタルビジネスを勝ち抜くための、戦略的な必須要件なのです。

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