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バンダイナムコライツマーケティング社、「SLAが99.99%保証しても、0.01%の視聴できない顧客を無くすため」にNew Relicプラットフォームを導入

バンダイナムコライツマーケティングは、設立以来オンデマンドによるコンテンツ配信事業を展開してきた。その筆頭である「バンダイチャンネル」ではアニメーション作品や特撮作品などの映像コンテンツを、サブスクリプション配信している。

そのため動画配信市場を勝ち抜くためには、ハイクオリティなコンテンツを維持するだけでなく、ユーザーの「視聴体験」を差別化する競争力を持たねばならないと判断。動画配信事業に新たな競争力を生み出すためにNew Relicを導入し、受動的な”カスタマーサポート”からお客様にもっとバンダイチャンネルを選んでいただくための”カスタマーサクセス”につなげようとしている。

決定的要素となる「カスタマーサクセス」

新型コロナウイルスが蔓延することで、企業の業績が軒並み下降している。特に売り切り型のフロービジネス・受託開発事業などは、社会情勢が急変すると真っ先に業績を悪化させてしまう。そんな中で今注目されているのが、動画サブスクリプション事業だ。

従来動画配信ビジネスは購入する買い切り型が主流だったが、SaaS事業が主流となった現在では月額(または年額)制が一般的である。そのため動画配信サブスクビジネスでは、顧客の積み上げによる売上の拡大が見込めるので、景気の悪化によって急激な売上減はない。そうなると重要になるのが、マルチデバイスやクロスデバイスで視聴しても優劣のない一定の配信品質を追求しなければならないことである。マルチデバイスやクロスデバイス環境下では、利用期間中に顧客離れが起きないようにカスタマーサクセスを維持していく必要がある。

「どんな環境でも見たい時に視聴できるという顧客体験を維持するには、バックエンドのシステム稼働状況やAPIなどの状態を把握し、常にモニタリングしていくことが重要で、それがカスタマーサクセスの機会損失を減らすことにつながります」と、バンダイナムコライツマーケティング社コンテンツサービス部マネージャーの川畑豪介氏は話す。

顧客の視聴環境は個々に異なり、多岐にわたる。どのような状態でもカスタマーサクセスを追求するには、顧客の利用状況を常に把握しておく必要があるというわけだ。

「例えばアンドロイドのバージョンアップが行われると動作も変わるので、従来はログを調査し、必要データを抽出するのにSQLを都度作成し対応していたのですが、New RelicのGUIならそのような作業なしに一発で出せるので非常に便利です。そして何よりも、全デバイスが横断的に監視できるのも魅力的ですね。New Relic Mobileであれば、ユーザーの視聴状態やアプリのクラッシュもモニタリングできるので、連携部署とも情報共有しやすいです」と語るのは、アプリケーション担当のコンテンツサービス部アーキテクトの長谷川巧弥氏。

カスタマーサクセスは顧客の視聴体験が常により良いものであれば維持される。お二人のコメントからも、カスタマーサクセスを維持するには、利用者側の環境を把握することが重要であるのは明白だ。

エンジニアにおけるカスタマーサクセスのミッション

一方でエンジニアサイドから見たNew Relicの使用感はどうなのだろうか。バックエンドを担当されるコンテンツサービス部 アーキテクト常川倫生氏に伺ってみた。

「AWSにシステム構築をしている関係でAmazon CloudWatchなどによる監視をしていました。当社の場合はフロントエンドからバックエンドまで、それぞれ分けて監視・計測をおこなっていましたが、New Relic APM/Infrastructure/Browserにより、横断的に監視することが可能になりました。

特にエージェントを入れることでサーバーに負荷をかけずに監視することができます。サーバーサイド・ブラウザーサイドの両方が確認でき、DBのトランザクションデータも瞬時に取得できるので楽になりました。」

ここで重要なのは、監視がサービスを継続させるためだけでなく、パフォーマンス劣化や障害などを把握し、いち早くカスタマーサポートにつながるようにしている点だ。前出の長谷川・常川の両氏とも、カスタマーサポートに飛んでくる「顧客からの問い合わせのキャッチアップがスムーズでない」、と常々思っていたそうだ。そのためには素早く、横断的にパフォーマンスを監視できることが重要で、それが顧客体験の満足度を上げることにつながるだろうと想定していた。

動画サブスク事業は、視聴体験の第一印象の良し悪しでサービス加入率や継続率が左右される。それはサービスのSLAが99.99%だったとしても、残りのわずかな0.01%の顧客が視聴できなければ、その顧客にとってのシステムの可用性は0%になってしまう。ほんの数パーセントでもこのような顧客を無くしていくことが、エンジニアサイドにおけるカスタマーサクセスのミッションだと言える。

視聴体験は機能であるという概念

動画のサブスクビジネスは冒頭でもお伝えしたように、時世柄かなりの競合がいる。近年、動画のサブスクビジネスは、コンテンツのバリエーションだけでなく、視聴体験でも差別化できる競争力を持つ必要が出てきた。

それは顧客の視聴環境が、複数のデバイスやOSだけでなく、個人差のあるネット環境やAIアシスタントの活用、モニターへのキャストなど、考えるだけでも極めて増えてきたからだ。これでは顧客の選択肢が増えると同時に、運用側も人材を増やさなければならなくなる。わずかな人材で視聴体験を最適化するには一体何が必要になるのだろうか。川畑氏はNew Relicを導入することでその「解」を得たと語る。

「2011年からサブスクによるコンテンツ配信事業を行ってきましたが、複雑化する顧客の視聴環境を俯瞰して把握できるものがありませんでした。しかしNew Relicを導入することで、多様化する顧客の視聴環境を今まで通りの人的リソースでも確認することが可能になりました。また、顧客が視聴できない理由や、途中で動画が止まってしまった原因などを短時間で探ることができるようになりました。近い将来、今よりもっとスムーズなカスタマーサポートを実現することで、そこから得たデータを分析し、さらに会員を増やすことが狙いです。

また、バンダイナムコグループ全体ではどんな環境でも楽しんでいただけるよう、顧客視点で変化していくことがスローガンになっています。今後はNew Relicを導入したバンダイチャンネルだけでなく、別のグループのサービスやアプリゲームにNew Relicの運用情報を共有するつもりです。」

現在、継続的な顧客満足度を定量的に監視し、New Relicによるデータ収集をしているのはバンダイナムコライツマーケティング社だけだが、機能を熟知した後、ECサイトなどにも活用を広げ、グループ全体でナレッジを貯めていきたい、とのこと。

そのためには「視聴体験はもはや機能である」という概念にまでノウハウを構築し、カスタマーサポートをさらに昇華させる予定だという。

顧客体験を可視化することで最高の視聴パフォーマンスを構築

エンジニアチームでは、New Relicのダッシュボードの可視化をこれから進めていくとのことだが、エンジニアサイドだけのメリットだけでは無い、と川畑氏は語る。

「例えば決まった時間に新規動画がアップされても予想よりも特定のデバイスだけ視聴されていない場合、そのデバイスのどこで離脱が発生していて、それにはどのプログラムがタイムアウトの原因になっていて、、といった内容をサービス運用チームとリアルタイムで共有することができるようになるでしょう。そのためにもサービス運用チームが使いやすいダッシュボードを作り込む必要はありますが、それによりエンジニアサイドとかなり細かい情報の共有が可能になると予想されます。現在、サービス運用チームから細かい情報が日々要求されていますが、そこはダッシュボードを使って一気通貫で情報共有ができるようになると期待しています。

その結果、コンテンツをどのように配信すべきか、といった企画をデータありきでも判断できるようになると思います。例えば、テレビ向けには全話揃ったタイミングでのプッシュが効果的であるとか、データで裏付けした届け方の工夫が必要だと考えています。そのためには現在収集したデータを分析していく必要があり、New Relicさん側にご協力いただき、まずはダッシュボードをカスタマイズしていく必要があります。

そして顧客が当社サービスで、好きな動画をいつでも好きなだけ視聴していただくには、顧客体験の可視化は必須です。New Relicはその可視化に最も適したプラットフォームだと思います。これからますます最高のカスタマーサクセスを増やすために、New Relicと対峙する日々が続きそうです。」

New Relicを導入したことで、少人数でも大規模な人数の顧客監視が可能になった。そして顧客体験を可視化することで、最高の視聴パフォーマンスを構築する取り組みも近いうちに実現しそうだ。