いまや世界中の大企業の多くが、Amazon Web Services(AWS)の上でソフトウェア環境の一部や全体を運用しています。そして、今も多くの企業がAWSへと移行しています。そのため、もし新たなITの仕事を探していたり、所属組織で新しい役職に就いたり、今のポジションでさらに成長していきたいと思っているなら、AWSの認定資格の取得は非常に賢い投資と言えます。

実際、Skillsoftの2022年のもっとも稼げるIT資格15によると、クラウド認定資格を得たITプロフェッショナルの今年のトップ収入は、16万8,080ドルとなっており、2021年のAWS認定資格保持者のトップ収入である15万9,033ドルから9,047ドルの増加を示しています。ITプロフェッショナル全体の最高収入は昨年に比べて3,669ドル低下しているにもかかわらず、AWS認定資格保持者の収入は増加したのです。

企業は、AWS認定資格を取得している従業員が自社のシステムに詳しいことをはっきりと認識し、またその従業員を雇用することで得られるメリットも理解しています。

2022年は私(原著者)のAWS認定資格の更新期であり、これはAWS re:Inventの時期とも重なります。毎年、AWSは新たな認定資格を発表し、既存の資格をアップデートしています。今年は、高レベルな認定資格に、より重点が置かれていました。

AWSは、ソリューションアーキテクト(プロフェッショナル)の認定資格保持者の給与額がTOP15リストの中で首位に返り咲きました。Skillsoftのリストにはその他にも4種のAWS認定資格が含まれ、実にリストの33%を占めています。認定ソリューションアーキテクト(アソシエイト)は2つランクを下げ、AWS認定クラウドプラクティショナーがリストに戻ってきました。今年は、2つの新たなAWS認定資格が登場しました。AWS認定セキュリティ(スペシャリスト)とAWS認定ビッグデータ(スペシャリスト)です。雇用環境におけるAWSスペシャリストの資格の需要が高まっています。

Skillsoftのリストでは、15の資格のうち9つがクラウド関連のものです。これは去年にくらべて5つ増え、クラウド資格がいかに需要の多いものであるかがわかります。また、セキュリティ資格は年を追うごとにその存在感を増しています。

おすすめは、AWS認定ソリューションアーキテクト(アソシエイト)とAWS認定セキュリティ(スペシャリスト)の資格に注力することです。この組み合わせが、最良のキャリアの機会を提供すると思われます。

もっとも稼げるIT資格のリストを見た後でも、多くの人々はまだAWS認定資格について悩んでいるかもしれません−−これは本当に、自分のキャリアにとって正しい選択なのだろうか?どの資格を、どの順番で目指すべきか?試験には何が出題されるのか?どこから手をつければいいのか?取得を考えるべきではない資格はあるのか?その答えを、探っていきましょう。

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AWS資格認定システムとは?

全体像の把握から始めましょう。AWSは現在、12の認定資格を提供し、それらを基礎レベルからアソシエイト、プロフェッショナル、そしてスペシャリストの4つのグループに分類しています。以下はAWS資格認定ページからの引用で、各グループの資格が示されています。

AWS認定資格は、基礎、プロフェッショナル、アソシエイト、スペシャリストに分類される

AWSのコア資格

では、詳細を見ていきましょう。6つの中心となっている資格について、知るべきことを以下にご説明します。

AWS認定クラウドプラクティショナー

  • 出題形式:65問の多項選択、複数回答
  • 試験時間:90分
  • 試験料:11,000 円

この基礎レベルのAWS試験の範囲は、AWSクラウドの基本原則です。ビジネスでの使用事例を含め、基礎的なAWSのサービスと機能に関する問題に回答します。この試験では、AWSセキュリティおよびコンプライアンスの基礎も対象範囲となり、AWSの請求、サポート、価格設定についての実務知識が求められます。また、AWSクラウドでのリソースおよびサービスのデプロイに関する問題も出題されます。

このAWS認定クラウドプラクティショナー資格は、AWSプラットフォームに関する一般的な理解が必要な非技術職の方に最適な資格です。たとえば、ITの営業職の人は、顧客のAWS投資に関する話題において、自信と根拠をもって発言ができるようになります。また、財務、管理、ビジネス職の人がこの資格を得ることで、IT職の同僚とより具体的にコミュニケーションを取れるようになります。

AWSはこの資格を受験する前に6カ月のAWSの使用経験を推奨しています。この使用経験は、技術職、非技術職(営業、管理、財務など)のどんな立場であってもかまいません。実際には、この試験に合格するには、準備期間がとても重要です。少なくとも6時間の勉強と復習が必要とされています。

AWS認定ソリューションアーキテクト(アソシエイト)

  • 出題形式:65問の多項選択、複数回答
  • 試験時間:130分
  • 試験料:15,000 円

この資格は、AWSクラウドでのシステムの構築とデプロイ方法の知識についての試験です。この試験では、厳しい要件に従ったデプロイメントに関するクラウドベースのソリューションについての問題が出題され、アーキテクチャーのベストプラクティスに関する知識を実証することを求められます。AWSでのデプロイ、設定、管理、計算、ネットワーク、ストレージ、データベースサービスに関する豊富な経験が必要になります。AWSのセキュリティやコンプライアンスポリシーに関する実務知識をもってこの試験に臨むことを強くおすすめします。

AWSは、この試験を受ける前に1年以上のAWSサービスを使用した大規模な分散システムのデプロイ経験があることを推奨しています。

AWS認定デベロッパー(アソシエイト)

  • 出題形式:65問の多項選択、複数回答
  • 試験時間:130分
  • 試験料:15,000 円

このAWS試験は、AWSクラウドネイティブのアプリケーション開発能力を問われます。AWS SDKを使用して、自身がアプリケーション内に構築するAWSサービスを操作、最適化する能力を示す必要があります。この試験に合格するには、認証情報の作成や暗号化戦略を含めたコードレベルのセキュリティ実践に関する機能的理解も必要です。

AWSは、この試験を受ける前に、1年以上のAWSクラウドでのアプリケーションの保守経験があることを推奨しています。また、AWSでのサービスに関連するコアサービス、原則、ベストプラクティスの理解が求められます。さらに、Amazon DynamoDBAWS Elastic BeanstalkAWS CloudFormation などのツールを利用したアプリケーションを作成した経験が必要です。

Amazonはこの試験の内容が2023年2月に変更されることを発表しています。

AWS認定SysOpsアドミニストレーター(アソシエイト)

  • 出題形式:65問の多項選択、複数回答
  • 試験時間:130分
  • 試験料:15,000 円

オンプレミスのワークロードのAWSクラウド移行に何が必要かの理解をはじめ、AWSクラウドのシステムリソースをデプロイ、管理、運用する能力が試されます。耐障害性と高可用性を両方備えたクラウドシステムの管理方法についての理解が必要です。また、セキュリティとコスト管理など、運用上のニーズを考慮してリソースのデプロイメントを要件に適合させることができなければなりません。

この資格には、1年以上のAWSネイティブのアプリケーションの管理経験が求められます。また、デプロイメントおよびプロジェクトライフサイクルマネジメントのための要件を取りまとめ、AWSのベストプラクティスを実行した経験が必要です。

AWS認定ソリューションアーキテクト(プロフェッショナル)

  • 出題形式:75問の多項選択、複数回答
  • 試験時間:180分
  • 試験料:30,000 円

AWSクラウドで仕様書に沿った分散システムを構築、デプロイする能力、さらに耐障害性と高可用性を備えた大規模分散システムのデプロイ方法についても理解が求められます。またこの資格では、AWSクラウドへのマルチティアのアプリケーションをデプロイする能力と、クラウド予算を管理しながらAWSリソースでのエンタープライズ規模のクラウドソリューションを構築する能力も必要です。

AWSは現在、この試験を受ける前にAWS認定ソリューションアーキテクト(アソシエイト)資格を取得することを必須とはしていません。ですがAWSの使用経験が数年に満たないようでしたら、まずはAWS認定ソリューションアーキテクト(アソシエイト)に向けて学習することをおすすめします。AWSは、設計要件とベストプラクティスに基づいた、AWSサービスを使用した大規模な分散システムの2年以上のデプロイ経験を強く推奨しています。

AWS認定DevOpsエンジニア(プロフェッショナル)

  • 出題形式:75問の多項選択、複数回答
  • 試験時間:180分
  • 試験料:30,000 円

DevOpsエンジニア資格は、プロビジョニングからフルオペレーション管理まで、AWSクラウドでの分散アプリケーションの管理能力が問われます。自動化セキュリティやコンプライアンスチェックのベストプラクティスを含む、継続的インテグレーションおよび継続的デリバリー(CI/CD)の手法と自動化のベストプラクティスについての問題が出題されます。また、AWSプラットフォームの監視およびログ記録方法の実務知識を示す必要があります。

AWSは現在この試験を受けるためにAWS認定DevOpsデベロッパー(アソシエイト)やAWS認定SysOpsアドミニストレーター(アソシエイト)の資格保有を条件とはしていませんが、どちらも持っておくことをおすすめします。AWSの十分な使用経験がない場合、これらの2つの資格取得はAWS認定DevOpsエンジニア(プロフェッショナル)の試験対策として非常に役に立ちます。プロフェッショナルレベルの資格に必要な基礎知識の習得ができるからです。AWSは、少なくとも2年のAWSクラウドデプロイメントのアプリケーションの提供または管理経験と、スクリプト作成やその他のプログラミングなどの自動化に関するベストプラクティス経験を推奨しています。

Amazonはこの試験の内容が2023年3月に変更されることを発表しています。

AWSのスペシャリストの資格

AWSは6種のスペシャリストの資格を設定しています。それぞれのスペシャリスト資格について、次のことを知っておく必要があります。

AWS認定データベース(スペシャリスト)

  • 出題形式:65問の多項選択、複数回答
  • 試験時間:180分
  • 登録料:30,000 円

AWSデータベースサービスの設計、推奨、管理方法をはじめ、組織のビジネスを加速、成長させるためにさまざまなAWSデータベースサービスを使用できる能力を示すための資格です。

AWSは、この試験を受ける前に、5年以上のデータベース技術の経験があること、また2年以上のAWSの実務的な使用経験、またリレーショナルデータベースと非リレーショナルデータベースのある程度の使用経験があることを推奨しています。

AWS認定 高度ネットワーキング(スペシャリスト)

  • 出題形式:65問の多項選択、複数回答
  • 試験時間:170分
  • 試験料:30,000 円

あなたが拡張可能なAWSシステムにまたがる複雑なネットワーキングプロジェクトに精通しているなら、この資格には理想的です。この試験では、AWSプラットフォームでのあらゆるサービスのネットワークアーキテクチャーの管理方法と、大部分のネットワーキングタスクの自動化の知識が問われます。

AWSは、ネットワーク管理の5年の経験と、AWSプラットフォームに関するネットワーク概念とベストプラクティスの十全な理解があることを推奨しています。

AWS認定 セキュリティ(スペシャリスト)

  • 出題形式:65問の多項選択、複数回答
  • 試験時間:170分
  • 試験料:30,000 円

このAWS試験では、AWSクラウドプラットフォームを保護するための高度なメソッドについて問われます。この資格の受験者は、AWS環境でのデータ保護と暗号化技術に関する専門レベルの知識を有する、熟練したITセキュリティのエキスパートであることが求められます。また、クラウドセキュリティの実施と管理を行うためのAWSツールに精通している必要があります。

AWSは、この試験を受ける前に、5年のITセキュリティ経験、および2年以上のAWSワークロード保護の実務経験があることを推奨しています。

AWS認定 機械学習(スペシャリスト)

  • 出題形式:65問の多項選択、複数回答
  • 試験時間:180分
  • 試験料:30,000 円

この資格は実際的なビジネス上の問題を解決するための機械学習ソリューションの設計とデプロイに関するものです。問題に対する最良の機械学習ソリューションを選択し、なぜその手法が他より優れているかを問われる問題が出題されます。また、どのAWSサービスが機械学習ソリューションの提供に適切かを理解している必要があります。また、拡張可能で信頼性の高い、安全なソリューションを提供するために、AWSサービスをどう最適化するかについても理解していなくてはなりません。

AWSは、この試験を受ける前に、受験者は開発またはデータサイエンスの分野で仕事をし、1〜2年のAWSクラウドでの機械学習または深層学習の使用経験があることを推奨しています。

AWS認定SAP on AWS (スペシャリスト)

  • 出題形式:65問の多項選択、複数回答
  • 試験時間:170分
  • 試験料:30,000 円

この資格は、AWSクラウドで実行するSAPソリューションの設計能力を認定するもので、AWSでのSAPワークロードの実施、移行、運用について深く問われます。

AWSとSAP両方の知識が必要となる、特殊な資格です。AWSのスキルには、高可用性と障害復旧、AWS移行ツール、セキュリティのベストプラクティス、また複数アカウントと複数リージョンの理解も必要になります。SAPの知識には、SAPの基礎とNetWeaver管理、SAP HANAなどのサポート済みSAPデータベース、サイジングおよびアイデンティティ管理が含まれます。

AWSは、受験者はこの試験を受ける前に、5年以上のSAPの使用経験と、1年以上のAWSの使用経験があることを推奨しています。

AWS認定資格の計画を立てる

私はソリューション戦略ディレクターであり、New RelicのAWSエキスパートでもあるため、これらの試験をどの順番で受けるべきかをよく相談されます。まずは以下のような順番で、クラウドのキャリアを強化していくことをおすすめしています。

  1. AWS認定ソリューションアーキテクト(アソシエイト)
  2. AWS認定デベロッパー(アソシエイト)
  3. AWS認定SysOpsアドミニストレーター(アソシエイト)
  4. 興味があるいずれかのスペシャリスト*のAWS認定資格
  5. AWS認定DevOpsエンジニア(プロフェッショナル)
  6. AWS認定ソリューションアーキテクト(プロフェッショナル)

*今年のリストに加わった2種のスペシャリストについて、どちらか、もしくは両方をソリューションアーキテクト(アソシエイト)と組み合わせてもいいでしょう。これにより、セキュリティかビッグデータに特化したキャリアが加速するかもしれません。

このルートにはAWS認定クラウドプラクティショナーの試験が含まれませんが、これは技術職の場合にはそれほど役に立つものではありません。技術職の皆さんには、AWS認定ソリューションアーキテクト(アソシエイト)の試験から始めて、先に進んでいくことをおすすめします。AWS認定ソリューションアーキテクト(アソシエイト)には、デベロッパーとSysOpsアドミニストレーターの試験にも出てくるトピックが出題されます。これは、3つのアソシエイト試験すべてを受験することを考えている人には大きな先行投資になります。

データベース、ネットワーク、セキュリティの専門資格の準備で得た知識は、2つのプロフェッショナルレベルの資格を取る人には役立ちますが、その他の人にはそこまでの優位性にはなりません。

AWS試験の準備——今からと将来に向けて

AWSプラットフォームでは、つねにイノベーションと、往々にして急激な変化が起こり続けています。AWSが試験において技術変化の影響に対応できることは多くありませんが、受験者が試験対策に合理的に取り組めるよう、試験はある程度のガイドラインに沿って実施されています。

  • AWSは、新しい機能やサービスについては、試験に出題されるまでに少なくとも6カ月の一般利用可能(GA)な期間を経ているものとしています。
  • 試験のガイドに記述されているとおり、AWSは試験に出題する「トピックの分野と目的」についておおまかな説明は行いますが、特定の機能やサービスについては説明しません。
  • AWSは「定期的に試験問題の入れ替え」を行いますが、すべての問題は明言されている試験のトピックと目的の範囲内のものになります。

AWSの試験の準備プロセスについては、各試験に備えるために何ができるのかを知りたい方は多いのではないでしょうか。私の経験から言うと、アソシエイトレベルの試験に本気で綿密な準備に取り組むには120時間以上、またスペシャリストとプロフェッショナルレベルの試験にはさらに多くの時間が必要になります。

多くのエンジニア、特に若い方は、集中して試験の準備に取り組み、数ヶ月のうちに2つか3つ、もしくはそれ以上の試験を受けようとします。気持ちはわかりますが、試験に没頭したい衝動は抑えることを強くおすすめします。代わりに、それぞれの試験を受けるのに少なくとも3カ月から6カ月の間隔をとりましょう。

更新時のことを考えてみてください。確かに今は集中できるかもしれません。しかし、3年後、6年後、さらには9年後の将来はどうでしょうか?その時が来て、家族がいたり、仕事が忙しかったり、人生で何が起こっているか分からないなかで更新の準備をする際、複数の資格が短期間で切れそうだというのは負担が大きすぎます。今日のちょっとした先見の明が、今後のキャリアを通じて大きな助けになるかもしれません。

キャリアの目標を見失わずに、これらの試験を慎重に計画、準備し、成功する、しかも報酬の得られるキャリア構築の戦略があるという自信を持って、先に進んでください。

皆さんのAWS資格取得のジャーニーの成功を祈ります!

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