パーソルキャリア|観測によるアセスメントで、社内基幹システムのスムーズで無事故のクラウドリフトを実現。継続的なシステム改善でビッグバン更改も不要に

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利用用途

主力の事業を支える社内基幹システムにオブザーバビリティを導入。観測結果をシステムのアセスメントやシステム改善の的確なプランニング、遂行に生かしている

New Relicの導入目的と成果

  • 社内基幹システムのアセスメントに必要なデータを収集するための仕組みが必要とされた
  • 社内基幹システムのフロントエンド、バックエンド双方の障害調査や改善プランニングの効率化に有効なモニタリングの仕組みが必要とされた
  • フロントエンドとバックエンドの包括的な観測により、システムのアセスメントや改修のプランニングが効率化
  • 社内基幹システムのクラウドリフトによってどのような事象が起きるかを観測し、問題点の洗い出しを効率化。スムーズで無事故のクラウドリフトを実現
  • KPIベースのシステムアセスメントを実現。システムの開発プロジェクトや改善施策の効果測定の一部として活用
  • 観測結果にもとづく社内基幹システムの継続的な改善で、10年周期の大規模更改(ビッグバン更改)が不要に

利用製品

  • New Relic APM
  • New Relic Infrastructure
  • New Relic Browser
  • New Relic Logs
  • New Relic Dashboard
  • New Relic Alerts & AI

 

パーソルキャリアは、さまざまな人材サービスを多角的に展開し、年間(2023年3月期)で1兆2,239億円を売り上げるパーソルグループの中核企業。転職サービス「doda(デューダ)」などの求人メディアの運営をはじめ、人材紹介や転職・就職支援、採用・経営支援、副業・兼業・フリーランス支援といったサービスを提供している。

 

同社において主力事業の位置付けにあるのは、対面でのカウンセリングを通じて転職希望者に適職を紹介する「エージェント事業」と、広告求人媒体を企業に販売する「採用ソリューション事業」、さらには非対面のカウンセリングによって転職を支援する「dodaプラス事業」の3つだ。同社では近年、こうした事業を支える社内基幹システムのクラウド化を推進しており、エージェント事業やdodaプラス事業を支える社内基幹システムについては、すでにクラウド上で運用している。

 

「パーソルグループでは開発の生産性向上や運用の効率化を目指し、グループ各社内で運用されている全システムをクラウド化し、オンプレミスのデータセンターを廃止する方針を打ち出しています。その方針に則り、当社ではまず、オンプレミスだったエージェント事業の基幹システムをベースに、dodaプラス事業の基幹システムをクラウド上で開発して運用をスタートさせました。のちの2024年1月にはエージェント事業の基幹システムのクラウドリフトを完了させています」(パーソルキャリア テクノロジー本部 ITアーキテクチャ統括部 アーキテクチャ管理部 エンタープライズアーキテクチャグループ マネジャー、石井 孝典氏)

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パーソルキャリア株式会社 テクノロジー本部 ITアーキテクチャ統括部 アーキテクチャ管理部 エンタープライズアーキテクチャグループ マネジャー 石井 孝典氏

このクラウド化の取り組みと並行して同社が推進してきたのがNew Relicによる社内基幹システムへの観測である。

社内システムのアセスメントを主眼にオブザーバビリティソリューションを採用

New Relicは業界を代表するオブザーバビリティプラットフォームであり、国内では39%のトップシェアを獲得している。デジタルサービスにおけるあらゆる重要指標(KPI)の「観測」を可能にし、アプリケーション、インフラ、ユーザー体験の観測を通して、障害やサービスレベルの低下、潜在的な問題・ボトルネックを可視化する。

 

パーソルキャリアでは2020年10月からNew RelicのPoCをスタート、2021年2月に導入し、エージェント事業においてオンプレミス版の基幹システムの観測をスタートさせた。のちにdodaプラス事業向けのシステムや、クラウド版へとオブザーバビリティの対象を広げている。

 

同社がNew Relicを採用した目的はいくつかある。その中でも大きな目的の1つはシステムやシステムアーキテクチャの評価・分析を客観的に行うアセスメントを効率化することだ。

 

「社内基幹システムでは、相応の可用性やレスポンス性能が求められ、システムやそのアーキテクチャがそれらの要件を満たせているかどうかをアセスメントすることが重要になります。私のチーム(エンタープライズアーキテクチャグループ)は、そのアセスメントを行い、必要に応じて改善のプランやアドバイスを提示する役割を担っています。そのミッション遂行に必要なデータを収集するツールとして、New Relicを採用しました」(石井氏)

 

エージェント事業の基幹システムでは、2017年にアーキテクチャの抜本的な見直しと大掛かりな改修が行われている。その改修により、システムのアーキテクチャが、フロントエンドとバックエンドが密結合するモノリシック(一枚岩的)な構造から、フロントエンドとバックエンドが疎結合の方式で連携する構造へと切り替えられた。この改修によってシステムの保守性は大幅に高められたものの、一方で、フロントエンドとバックエンドの状態を一元的に、かつリアルタイムにモニタリングすることが困難になっていた。

 

「当社の社内基幹システムでは従来、インフラの死活監視に注力したモニタリング体制になっており、特にSPA(シングルページアプリケーション)化(*1)したフロントエンドの状態をモニタリングする仕組みは既存の運用にはありませんでした。その中で、システムの改修によってフロントエンドをSPA化したために、サーバーのログの分析を行っても、個々のフロントエンドのパフォーマンスを計測したり、ユーザーインタフェース(UI)のエラーを検出したりすることができなくなっていました。このような状態では基幹システムにおける異常の検知や障害調査が速やかに行えませんし、アセスメントもままなりません。New Relicによるオブザーバビリティの導入は、その問題を解決する手段でもありました」(パーソルキャリア テクノロジー本部 ITアーキテクチャ統括部 アーキテクチャ管理部 シニアエンジニア、角本 良幸氏)

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パーソルキャリア株式会社 テクノロジー本部 ITアーキテクチャ統括部 アーキテクチャ管理部 シニアエンジニア 角本 良幸氏

さらにもう1つ、New Relicの採用には、KPIにもとづいてシステムを評価し、その改修・改善を促すという目的もあった。

 

「当社では、社内基幹システムの開発・改善スピードを増すべく、内製化を進めています。この内製化で重要になるのは、開発の成果物が実質的な効果をもたらしているかどうかをKPIでしっかりと評価し、次の改善につなげることです。その評価を行う上で、New Relicによる観測は有効であると判断しました。また、観測によるシステムの評価が社内に定着すれば、社内システムの改修が真の意味で正しく、そして速やかに行われるようになると期待しました」(パーソルキャリア テクノロジー本部 ITアーキテクチャ統括部 アーキテクチャ管理部 エンタープライズアーキテクチャグループ リードエンジニア、久保木 翔一氏)

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パーソルキャリア株式会社 テクノロジー本部 ITアーキテクチャ統括部 アーキテクチャ管理部 エンタープライズアーキテクチャグループ リードエンジニア 久保木 翔一氏

*1 SPA:Single Page Applicationの略称。単一のWebページ上でユーザーの操作に従って機能を読み込む構造のWebアプリケーションを指す。ページ遷移のないユーザビリティに優れたフロントエンドが作りやすいとされる。

New Relic選定の決め手は使いやすさとデータを扱う上での柔軟性・価格体系

システムの包括的な観測を実現するオブザーバビリティ製品は、New Relic以外にもある。そのため、石井氏のチームでは、さまざまな製品を比較検証の土俵に上げたという。その中でNew Relicを選んだ理由の1つは使いやすさだ。また、多様なデータを柔軟に扱えることもNew Relicを選ぶ決め手となった。

 

「New Relicでは収集するデータの属性を柔軟にカスタマイズできます。そのため、例えば、特定のAPIを使ったバックエンド通信の状況を、ログを使ってダッシュボードで可視化するといったことが簡単に実現できます。従来、そうした固有処理の状況調査にはデバッグログをシステムに仕込むといった手間が必要でしたが、多様なデータを柔軟に取り扱えるNew Relicを使えば、そのような手間が不要になります。これは、競合製品に比べたNew Relicの大きなアドバンテージであると判断しました」(角本氏)

 

また、独自の透明性の高いシンプルな価格体系や、サポート体制も抜きん出ていたと、久保木氏は語る。

「New Relicのライセンス体系も大きな魅力の一つでした。当時の基幹システムからはトレースに必要な大量のログが発生しており、膨大な量があるので転送量で課金されてしまうツールだと、使用料金が青天井になってしまいます。ただ、料金を考慮してログを減らすことは本末転倒です。課金は利用人数に基づくなど、よりシンプルで予測可能なNew Relicの価格体系はありがたく有用でした。そして、New Relicの担当チームの皆さんによる、我々の成功に対する比類のない熱量の高さやサポートの手厚さも、外せない要素だったと思っています」

基幹システムのクラウドリフトをスムーズ、かつ無事故で実現 システム改善のスピードや頻度もアップ

New Relicによる観測は、パーソルキャリアにおける社内システムの開発、保守、運用のチームに数々の効果をもたらしている。その1つは、エージェント事業を支える基幹システムのクラウドリフトをスムーズ、かつ無事故で実現できたことだ。

 

「基幹システムのクラウドリフトは、オンプレミスのアプリケーションをクラウドプラットフォームに移行させるプロジェクトで、そこに技術的な難しさはないように思えるかもしれません。ただし実際には、システム上のかなりの変更が必要とされました。そうした変更をかけたときに、どのような事象がシステムで起こるかをNew Relicで観測し、オンプレミス版の基幹システムの観測データと照らし合わせました。その照合を通じてクラウドリフトにおける問題点を洗い出して解決を図っていったわけです。これにより、基幹システムのクラウドリフトをエンジニアの技術的な負担や不安を最小限に抑えながら無事故で完遂できました」(石井氏)

 

この効果について角本氏は次のように続ける。

 

「クラウドへのリフト&シフトのような社内基幹システムの大規模な改修が今後発生したとしても、New Relicの活用によってスムーズ、かつ確実に遂行できるようになると見ています。またNew Relicを使えば、システム改修が社内の業務にどのような効果をもたらしているかもデータで示せるようなります。改修の担当チームにとって、その意義も大きいと思います」(角本氏)

 

New Relicは、社内基幹システムにおけるアプリケーションの開発チームと保守チームとの距離を縮めてコラボレーションを効率化するツールとしても有効に機能している。

 

「内製化の取り組みを通じて開発と保守のコミュニケーションが活性化し、双方がNew Relic Dashboardを眺めながら、システムのさらなる改善プランを練るといった場面も増えています。その意味で、New Relicを通じた情報の共有は、開発と保守の距離を縮めてコラボレーションを促進・効率化する効果があるといえるでしょう。実際、内製化とNew Relicによる観測の相乗効果によって、基幹システムにおけるシステム改善のペースも上がり、ライブラリ変更やリファクタリング、バージョンアップなどの改善が月に2回の高い頻度で行われるようになっています。NewRelicの導入でシステム開発と保守の生産性は明らかに高まっています。また、フレームワークの刷新など、比較的大掛かりな変更は、オブザーバビリティを導入したことで早く、安心して実現できるようになったと言えるでしょう」(久保木氏)

観測にもとづくシステムの継続的な改修でビッグバンを回避する

石井氏によれば、New Relicによる観測結果にもとづくシステム改善の繰り返しは「ビッグバン刷新(=システムの大規模改修)」の回避にもつながるという。

 

社内基幹システムのビッグバン更改は一般に、10年に1度といった非常に長いサイクルで行われる。これは長期にわたるシステム運用を通じて積み上げられた数々の課題を塩漬けにし、我慢の限界がきたタイミングで一挙に解決を図るアプローチといえる。

 

「我々もエージェント事業向けの社内基幹システムでビックバン更改の経験がありますが、このようなアプローチは一般的に開発や運用に多大な労力を強いると同時に、業務サイドにも短期間に高い負荷をかけてしまいます。ですので、避けることが可能ならば、その手段を模索するほうが良いと考えます。しかも、ビッグバン更改には膨大なコストと手間もかかります。ですから、理想はリファクタリングやフレームワークのバージョンアップ、機能追加などのシステム改善を細かく繰り返し、持続可能なアーキテクチャにすることです。そのためには、改善の前後の変化を観測し、ユーザビリティやユーザー体験を落とさないことを担保して関係者に説明することが必要とされます。それが行えないことが、課題の塩漬けにつながり、ビッグバン更改へとつながっていくのです。ビッグバン更改のない、持続可能なアーキテクチャを目指す上で、New Relicがもたらすオブザーバビリティによる観測と、その結果にもとづく内製による継続的なシステム改善が効力を発揮すると考え、日々の運用を続けています」(石井氏)

 

こうしたオブザーバビリティの効果を踏まえつつ、石井氏は、New Relic活用の今後についてこう展望する。

 

「ビッグバン更改を不要にする持続可能なアーキテクチャを実現するためにも、New Relicによる観測の対象を全ての社内基幹システムに押し広げ、同じ指標、同じ物差しのもとでアセスメントが行えるような環境を実現したいと考えます。そしていずれは、社内基幹システムの開発や保守に携わる全てのエンジニアが、メールを使うように日常的にNew Relicを使い、システム改善のプランを練るような文化を築いていきたいと願っています」