
小林 良太郎
New Relic 株式会社 テクニカルアカウントマネージャ
SIerにて基幹システムのアプリケーション開発、データベース設計構築、プライベートクラウド設計構築を経験。その後はSREとしてWebマーケティング企業や求人検索サービスの運用、パフォーマンス改善を担当。ITインフラの設計から運用までの経験を活かし現職へ。
―― 小林さんがIT業界にデビューされたのは少し遅めとお伺いしてますが?
はい。大学卒業後、7〜8年ほど飲食店で働いた後、IT業界にキャリアチェンジしました。当時は証券取引の電子化・オンライン化が進み、IT人材の需要が非常に高まっていた時期で、未経験ながらもシステムインテグレーターでCOBOL開発エンジニアとしてのキャリアをスタートさせました。
幸いすぐに業務にも慣れ、その会社ではインフラ、Oracle DBの設計・構築、社内プライベートクラウド基盤の構築、さらにはそのSaaS化による外販まで、非常に幅広く経験を積むことができました。 アプリケーションの内部を可視化する画期的なツール「New Relic」に出会ったのもこの頃です。障害対応の工数を劇的に削減できたことを鮮明に覚えています。
その後も、現在でいうDevOpsやSREに近い領域で多様な経験を積み、フルスタックエンジニアとして活動していたところ、エンジニアコミュニティで面識のあったNew Relicの社員から声をかけていただき、現在に至ります。
―― エンジニアコミュニティへも積極的にご参加されているそうですね?
IT業界に入って間もない頃から、オープンソースの勉強会に参加していました。当時私が担当していたプライベートクラウドやSaaSは、オープンソースを組み合わせて構築していましたが、まだ実用的な情報が少なかったため、コミュニティに参加して最新動向をいち早く収集する必要があったのです。
活動を続けるうちに運営にも興味を持つようになり、「CloudNative Days」や「SRE NEXT」といったカンファレンスの運営にも携わってきました。 コミュニティ運営は、参加者の行動変容を促し、ひいては業務や生活の改善、企業の競争力向上に貢献できる可能性を秘めています。そこに大きなやりがいを感じています。
―― New Relicのテクニカルアカウントマネージャー (TAM) というのは、どのような仕事ですか?
New RelicのTAMは、お客様がNew Relicを最大限に活用し、その価値を完全に引き出せるよう支援するミッションを担っています。
私たちはSaaSベンダーとして、ご契約をゴールではなく、お客様との長いお付き合いのスタートだと考えています。 そのため、お客様の投資価値を最大化できるよう、製品を「使い倒していただく」ための活動を積極的に行っています。最終的には、お客様がオブザーバビリティを自律的に活用できる「自走できる組織」になることを目指しています。
―― お客様は契約後、どのようなポイントでつまずかれるケースが多いですか?
導入前の検証やオンボーディングを通じて、基本的な利用方法、つまり「必要なデータをどう取得し、どのようにNew Relicを利用するか」はご理解いただけます。しかしその後、チーム内の特定の1~2名しか利用せず、組織全体に活用が広がらない、というケースが多く見られます。また、従来の監視ツールと同様に、障害発生時のトラブルシューティング限定で利用されていることも少なくありません。
しかし、New Relicを障害発生時だけのツールとして使うのは、非常にもったいない。オブザーバビリティ・プラットフォームの可能性はもっと広大です。例えば、開発ライフサイクルの早い段階で品質を作り込む「シフトレフト」のように、New Relicを開発の上流工程で活用することで、開発者全員の負担を軽減できると考えています。ステージング環境でのデバッグ効率化、あるいはページビューやコンバージョン率といったビジネス指標の計測など、開発からビジネスまで、組織の全員がオブザーバビリティの価値を享受できる状態が理想です。

―― 具体的にはどのようなご支援をされるのですか?
お客様の役割や課題に応じて、多様な支援メニューをご用意しています。
例えば、開発者向けにはAPMの機能説明会やハンズオンを、運用エンジニア向けには障害対応訓練イベント「Game Day」などを通じて実践的な活用法を習得する機会を提供します。さらに、エンジニアとビジネス担当者の方々に合同でご参加いただく「SLI/SLOワークショップ」を開催し、お客様自身がサービスレベル管理を推進できるよう支援することもあります。
このような対面での支援に加え、ゲーミフィケーションの要素を取り入れたオンライン学習コンテンツも提供し、お客様の自律的な学習を促進しています。

―― TAMという仕事は、どんな人に向いていると思いますか?
お客様のカウンターパートはシステム運用担当者であることが多いため、運用経験者や、DevOps・SREの思想に共感できる方には最適な仕事です。また、私たちの本質はあくまで「支援」ですので、お客様の挑戦と成功に寄り添い、共に喜べる方が向いています。
一方で、「支援がメインだと、開発の機会が減ってスキルが錆びついてしまうのではないか」と懸念されるエンジニアもいるかもしれません。その点もご安心ください。私たちTAMチームは、お客様の活用度を可視化する社内用ダッシュボードや、お客様向けのGame Day・オンライン学習用の基盤など、支援に必要な環境を自ら開発・運用しています。技術の最前線に触れ続けられる環境なので、手を動かすのが好きな方もやりがいを感じていただけるはずです。
―― さいごに、職場としてNew Relicに興味を持たれている方にひと言お願いします
私自身、前職ではNew Relicの競合製品を利用していました。転職活動で双方の企業の社員と話す機会がありましたが、New Relicのメンバーがとりわけ生き生きと働いている姿が印象に残り、入社を決めました。
オブザーバビリティという成長市場に興味をお持ちでしたら、ぜひ様々な企業の情報を収集されることをお勧めします。その際には、私たちのチームにも、ぜひ一度カジュアルにお声がけいただけると嬉しいです。
(インタビュー:2025年8月付)