lowya

ベガコーポレーションは、福岡を拠点に家具・インテリアのインターネット通販を手掛ける急成長企業である。自社サイトの他、楽天市場、Amazon、PayPayモールに出展し多数の受賞歴を誇る「LOWYA(ロウヤ)」と、越境EC「DOKODEMO」を展開している。2004年の創業以来右肩上がりで成長を続け、2016年に東証マザーズへ上場。年商200億円の達成もいよいよ視野に入ってきた。システム統括部 技術戦略部 部長の石村俊幸氏は次のように話す。

「2020年8月に、自社ECサイト『LOWYA』を自社開発のシステムに移行しました。モダンでスマートなアーキテクチャーを採用したコンテナベースのECシステムは、年商1,000億円を目指す私たちが成長を加速させるための新しい基盤となるものです」

「LOWYA」は10年以上にわたりECパッケージ上で運営されてきた。自社開発にこだわってシステムを刷新した理由はどこにあったのか。

「ビジネス成長と変化に適応できる、優れた柔軟性と拡張性を備えたインフラ整備が大きな目的です。かねてからECサイトそのものを自分たちでコントロールしたい、新サービスの投入や機能改善、サービス品質の向上にスピード感をもって取り組みたいと考えていましたので、ようやく念願が叶ったという思いです。内製化は技術面での競争優位性を高めることにもつながります」と石村氏は話す。

プロジェクト立ち上げからおよそ2年半、2020年8月に「LOWYA」が自社開発のECシステム上でサービスを開始した。サービス開発部とSREグループは、これに先立って重要な手を打っていた。New Relic One によるフルスタックオブザーバビリティ(可観測性)の実装である。

モダンでスマートなアーキテクチャーを採用したECシステム

AWS上に構築された「LOWYA」を支える自社ECシステムでは、コンテナをはじめクラウドネイティブテクノロジーがフルに活用され、デプロイの高速化、柔軟なスケーリング、優れた可用性が実現されている。サービス開発部の部長を務める上月康行氏は次のように話す。

「新しいECシステムはこれが数10倍規模になっても対応できる拡張性を備えています。また、ボトルネックになりがちなデータベースの参照や更新を抑えるためにインメモリ処理を組み込むなど、お客様がカタログを閲覧し、商品を選択して購買手続きを完了するまでの体験全体をより快適なものにしていく工夫を随所に施しました」

石村氏が言う「モダンでスマートなアーキテクチャーを採用したECシステム」において、New Relic One はどのような役割を期待されたのか。SREグループの小原一真氏は次のように説明する。

「ログ監視や障害対応など、ECパッケージベンダー任せにしていた領域をすべて自社で担うことになりました。逆に捉えるなら、お客様のサービス体験全体を私たち自身がコントロール可能になったわけです。New Relic One のフルスタックオブザーバビリティを活用すれば、ボトルネックや障害の原因をいち早く特定し解決できるだけでなく、中長期的な視点からECシステムのパフォーマンスを最適化できると考えました」

小原氏が最初に注目したのはアプリケーションパフォーマンス管理(APM)だった。New Relic APM は、Webアプリケーションのレスポンスタイム、スループット、エラー率、トランザクションなどを可視化するとともに、ユーザー体験に影響するコードやコード間の依存関係をリアルタイムで特定できる。

「たとえば、特定のプロセスでメソッド単位の呼び出し回数や処理時間を調査するのは至難の業ですが、New Relic APM ではエージェントを入れるだけでこれらが自動的に計測・可視化されます。多大な工数をかけなくても問題点を即座に把握できる、見えなかった原因が見えるようになる、というのはNew Relic 製品に共通する大きなメリットです。ECアプリケーションの開発・テスト段階でも、問題個所の特定と改修に大きな威力を発揮しました」(小原氏)

New RelicOne を採用する理由は「SREメンバー3人分の働き」

New Relic One の導入に際して経営陣の合意をとりつけるために、石村氏は「SREメンバー3人分に等しい投資対効果が得られる」ことを説明したという。

「自社ECサイトのサービス品質を継続的に維持・向上させながら、何らかの問題が発生したときに顧客体験への影響を最小化するためには、実際のところ2~3名のSREを増員しなければならなかったでしょう。New Relic One を導入することで、現状のチーム体制のままECシステムを適正に運用できることを説明し、経営陣の支持を得ることができました」(石村氏)

ECサイトのサービス品質・ユーザー体験が売上を左右することは経験的に理解しているものの、従来の環境ではこれらの相関関係を定量的に示すことは難しかったという。

「カタログ参照やカート投入時のレスポンス、決済時の所要時間などの指標を決めて、それがユーザーの行動にどう結びついて、最終的に売上にどう影響しているのか――サイトの性能改善が売上につながることを定量的に示すためのダッシュボードの準備を進めています。New Relic One には、エンジニアのツールとしてだけでなく、経営陣を含むすべての部門で有益な情報を共有できる全社基盤として活用できるメリットがあります」(石村氏)

半日を要していた障害原因の特定と解決を「数分」で可能に

自社ECシステムで採用された New Relic One は、デジタルサービスのオブザーバビリティ(可観測性)を実現するためのすべての機能セットを、横断的かつ包括的に利用できるプラットフォームである。ベガコーポレーションでは、Telemetry Data Platform、Full-Stack Observability、Applied Intelligenceから構成される多様な機能を利用してECシステムを統合的に管理している。

「AWS上のバックエンドシステムからエッジ側のPCやスマホアプリまで、ユーザーのサービス体験全体を網羅するエンドツーエンドのオブザーバビリティを実現しています。トラブルシューティングの時間短縮は、劇的な効果と言っても過言ではありません。New Relic One によりあらゆる問題が可視化され、障害原因の特定から解決まで半日以上を要していたような事案が、わずか数分で解決できるようになりました」と小原氏は言う。

SREチームでは、手作業でログを集計してパフォーマンスを評価するような業務も一掃された。「システムの健康状態が常に見えるようになったことで、エンジニアの心理的負担が軽減されたことも大きい」と石村氏も評価する。

エンジニアチームではNew Relic One の情報を活用して「パフォーマンス定点観測会」を実施しており、問題点を共有しながら着実にECサイトの品質を向上させている。New Relic Syntheticsを利用してECサイトでのユーザー行動を再現し、その体験を定期的に計測・評価する試みも始まった。

「潜在的な問題点を特定して事前に手を打てる、いわゆるプロアクティブな対応が可能になったことも、ビジネス上のリスク低減につながるという意味で画期的です。New Relic One のダッシュボードを整備して経営陣・ビジネス部門と情報を共有し、先手を打ってサービス改善につなげていくこと。New Relic One の情報を全社の共通言語として活用し、PDCAのサイクルを企業文化として定着させること――これが私の次の目標です」と上月氏は話す。

エンジニアの経験を問わず誰でも問題解決が可能に

石村氏は、マネジメントの視点から「New Relic One なら経験の少ないエンジニアでも使いこなせる」ことの有効性を次のように話す。

「一般に、事業会社のエンジニアチームは新機能開発のモチベーションが高い一方で、運用監視については後手に回りがちです。これを放置した結果、ECサイトのサービス体験が悪化して、気づいた時には多くのお客様が離れてしまった例は珍しくありません。New Relic One は、『何か問題が起こったら5秒で原因を特定したい』『エンジニアの経験を問わず誰でも問題解決できるようにしたい』という私たちのニーズにまさに応えてくれました」

「LOWYA」でのNew Relic One 導入に手応えを得た石村氏らは、海外ユーザーをターゲットに日本製品を販売するECサイト「DOKODEMO(ドコデモ)」にもNew Relic One を適用することを決めた。

「DOKODEMOでのNew Relic One 導入には、LOWYAでの経験が丸ごと活かせます。導入にかかる工数・期間は半分以下に抑えることができるでしょう。問題解決の知見もそのまま移植できるため、即座に成果が得られるはずです。今後、基幹系システムを含めNew Relic One の適用範囲をさらに拡大していきます。New Relic One は、システム部門とビジネス部門の連携をより強固にしてくれるでしょう。私たちのビジネス成長のために、これからも重要な役割を担ってほしいと思っています」