2020年8月24日 15:00 をもって New Relic 株式会社は大きな製品体系と価格体系の変更を行いましたので、プレスリリースなどでは説明しきれていないポイントを踏まえながら日本語で解説します。また、早速すでにいくつかニュースメディアでも取り上げていただきました。こちらも併せてご参照ください。
- デジタル・ニューノーマル構想を掲げるNew Relicが製品や価格体系を刷新(ASCII.jp)
- 「エンジニア課金」を採用 New Relic Oneの製品/価格体系が変更 (IT Media エンタープライズ)
- New Relic、システム性能監視ツール「New Relic One」の製品体系をシンプル化 (IT Leaders)
- 「New Relic One」が製品・価格体系を変更し、全機能が利用可能な無料ライセンスの提供を開始 (CodeZine)
New Relic 製品体系の変更
New Relic は従来、フロントエンドやバックエンド、データ収集と分析チャートビルダー、AI機能などを各個別製品として提供してきました。しかしこの必要な機能をピックアップする製品構成は、一人のエンジニアがオブザーバビリティを実現するためには適切な体系ではありませんでした。そこで New Relic ではオブザーバビリティの実現をシンプルにするべく、製品体系を主要な 3 技術機能として統合しました。この 3 機能全てを統合するプラットフォーム名称は New Relic One と呼称し、この New Relic One の中に3 つの製品体系が含まれるモデルです。それではまずその3つについてどのように変更をしたのかご紹介します。
Telemetry Data Platform
(テレメトリーデータプラットフォーム : TDP と呼称)
TDP は従来 New Relic で提供していた New Relic Insight (データ検索とチャートビルダー) や Platform 機能 (アラートやダッシュボード)、ログ分析、OSS統合、 新たなダッシュボード開発機能を統合したプラットフォームです。
TDP では300を超えるインテグレーション、New Relic が収集できるメトリクス・イベント・トレース・ログのデータ全てを取り込んで NRQL での検索、分析、アラート設計、可視化を行うことができるようになっています。今回の製品体系に合わせて新機能も追加されており、Prometheus と Grafana との連携も可能になりました。NRQL だけでなく、PromQL での検索や分析が可能になっており、Grafana 側では NRQL が利用できるような相互連携が可能になっています。
TDP に全てのテレメトリーデータを統合することで、データサイロ化を防ぎながら単一の情報源として機能することができるようになります。
TDP は以下の機能をカバーします:
- メトリクス、イベント、ログ、トレース、全てのデータを収集
- NRQLを使った高速検索と分析
- 自由に開発可能なダッシュボード
- アラートの設計、設定、発砲
Full Stack Observability
(フルスタックオブザーバビリティ : FSO と呼称)
FSO は従来 New Relic で提供していた APM, Infrastructure, Browser, Mobile, Synthetics, Serverless を 1ライセンスで全て利用可能になるプラットフォームです。フロントエンドからバックエンドまで全ての可視化機能を 1ライセンスで提供することで、エンジニアにシステム全体のデータを観測し問題特定と改善が可能となります。
FSO は以下の機能をカバーします:
- アプリケーションモニタリング、分散トレーシング
- インフラモニタリング
- サーバーレスモニタリング
- デジタル顧客体験モニタリング (ブラウザ、モバイル、外形監視)
- ログデータへの関連付け (Logs in Context)
Applied Intelligence
(アプライドインテリジェンス : NAI と呼称)
NAI には Proactive Detection (異常予兆検知) と Incident Intelligences (インシデント関連付け) の2つの主要機能が含まれており、複数のインシデント管理ツールと連携するとが可能です。
Proactive Detection は New Relic の機械学習が定常状態を学習し、従来と異なる振る舞いを行う指標を検出します。Incident Intelligence はアラートノイズ削減のための相関分析を実行し、関連するアラートを1つのインシデントケースとしてまとめてくれます。また、そのインシデントをハンドリングするべき適切な通知グループへルーティングします。これら機能はあらゆるテレメトリーデータを取り込む TDP と、フロントエンドからバックエンドまで全てを観測することで、より強力で精度の高い判断を実現していくことができます。
また NAI はすでにお使いのインシデント管理ツールと連携させることも可能です。Splunk, Amazon CloudWatch Alarm, Prometheus Alertmanager, Grafana, PagerDuty などの UI や Webhook、API を介して連携することができます。任意のインシデントツールとの連携も可能です。
加えて、NAI は機械学習による通知判断やそのロジックへユーザーがフィードバックを与えることができます。自組織のシステムに対しては有効でない機械学習の判断は減らし、正しいとされる判断を強化できる機能が備わっています。
NAI は以下の機能をカバーします:
- 異常挙動検出 (Proactive Detection)
- インシデント相関分析と関連付け (Incident Intelligence)
- インシデント通知のワークフロー設計 (Incident Workflow)
- インシデント管理ツールとの連携
- 機械学習へのフィードバック、ロジックの調整
New Relic One の価格体系
上述の主要 3 機能に統合された New Relic One の TDP・FSO・NAI はそれぞれどのような価格体系に変わったのか、その価格変更の前提となる考え方を踏まえて、各3機能の価格体系をここからは解説します。
前提となるNew Relic の価格の考え方
New Relic の価格の考え方は、いわゆる自動従量課金による Bait & Switch モデルではありません。年間契約消費型による True-Up モデルです。価格体系は、何に課金されるのか?という課金項目と、どのように請求されるのか?という消費契約の方法に分類されます。
自動従量課金とはいわゆる消費した量に関して自動で請求が発生するモデルです。一見この自動従量課金は「自分で使用料を管理して自動請求されるので楽だろう」と思いますが、それは”課金項目が自らコントロール可能である場合のみ”です。例えば大規模なマーケティングキャンペーンの実行や意図しない大規模なアクセスの発生などで、サーバーの急速な追加や PV の増加などデジタルビジネスにおける消費の傾向は予測できないケースがあります。その場合に自動請求モデルを採用していると、本当に予測できない大規模な請求が無遠慮に発生することがあります。これは企業組織の予算編成やコスト管理を無視した課金項目の弊害であり、 ROI と関連しない課金請求モデルです。
一方、New Relic が採用する年間契約消費型モデルでは、事前に年間で消費予定の量だけを購入し、その消費量を超えた場合は、改めて調整費用として追加するのか止めるのかを判断することができるモデルです。New Relic では契約以上の自動請求が突如行われるようなことは発生しません。つまり企業組織の予算編成と、次のシステム拡張や人員増加に合わせて計画し設定できるモデルです。New Relic ではこの年間契約消費型での価格体系を採用しています。では課金項目はどうなるでしょうか?TDP/FSO/NAIそれぞれの課金項目を解説します。どれも非常にシンプルな項目です。
TDPの課金項目
TDPの課金項目はデータインジェスト量 (TDPへ取り込んだデータ量)、ギガバイト単位での課金のみです。
- 課金項目:GB単位でのデータインジェスト量
公開価格としては$0.30/GB、これは業界の中でも最安値の設定となっています。New Relic では固定費用となるデータストレージコストを最大限圧縮することが可能になっています。
FSOの課金項目
FSO の課金項目は、利用するエンジニア数での課金です。
- 課金項目 : ユーザー数
利用する1名に対して変動しない固定額での課金であるため、利用者数や採用者数に合わせた調整が可能です。これは「どれだけの規模のシステムに New Relic を導入しても課金量が変わらない」ということを意味しています。1ユーザーが100のサービスを見渡す場合でも、1ライセンスでの課金です。さらなる利点としては、FSOの機能を利用し問題解決するようなエンジニアに対して課金され、例えば単純にダッシュボードを見たいというようなユーザーには課金されない、という点も挙げられます。またライセンスのモデルとしては利用機能の範囲に応じていくつかタイプがあります。こちらは日本市場での価格となるため詳しくはお問い合わせいただく形となります。
従来はアプリケーションサーバホスト数や CU 数、PV数など各製品によって課金体系が異なっていましたが、現在は1ライセンスの固定費用でAPM/Infrastructure/Browser/Mobile/Logs/Serverless など全機能へアクセス可能です。
NAIの課金項目
NAI の課金項目は、2つの機能で設定されています。
- Proactive Detection : 1億トランザクション単位
- Incident Intelligence : 1インシデント単位
Proactive Detection は 100万トランザクションあたりでの課金、Incident Intelligence は1インシデントあたりでの課金です。AI によるアラートノイズの削減効果は今後のシステム拡大や新技術の採用に伴って増える障害を抑え込むことで、将来的なインシデント対応コストを押さえ込んでいくことに価値があります。AI機能だけを別課金体系にしている理由はまさにそこにあり、現時点でアラートノイズに困っていなければ必要はありませんが、今後のシステム拡大やビジネス投資の ROI を高めることを想定しているのであれば必須の選択肢です。
新たな無償ライセンス
今回の製品と価格体系の変更に加え手のもう1つ大きな変更は、従来提供していた無料トライアルの枠組みを、無償ライセンスという形へ変更したことです。従来 New Relic では「フル機能を2週間使える。期間が過ぎれば Lite 版へ自動ダウングレードされる」という無料トライアルを設けていました。今後は New Relic のウェブサイトから申請できる無償ライセンスで、以下の数値上限を超えない限り、期間制限なく無償で利用継続することができます。
- TDP : 取り込むデータ量 100GB/月まで
- FSO : 1ユーザー (フルアクセス)
- NAI : 1億トランザクション/月、1,000インシデント/月
お客様からのフィードバックコメント
今回の New Relic の製品体系と価格変更によって、お客様は基本的に全ての New Relic 機能にアクセスできるようになりました。以下のような利点があるとコメントをただいております。
“今まではシステムへの課金だったため、黒字のサービスにしか導入できなかった。しかしユーザー課金に変わったことで、どのシステムにも New Relic を入れ込むことができる。特に小数のエンジニアチームで全体を見る必要があったので、今回の製品と価格体系の変更は、自組織の全てのサービスのオブザーバビリティを実現できる。これはサービスごとにサイロ化させずにすむため、弊社にとっては非常にスケールしやすいモデルだと感じます。”
“価格体系がシステムに依存しないモデルになったこと、1ライセンスで New Relic の全機能が使えるようになったため、季節性や突発的なPVの上昇などを気にせず、システムの全体をまず可視化することの障壁がなくなりました。まずオブザーバビリティを最初から実装できる点、ここが評価できます。また、FSOを使わないダッシュボードだけをみるユーザーなどは無料であることから、より多くの他部門のエンジニアとデータを共有することができるようにもなっています。”
“まず TDP が驚くほどコストを圧縮してくれる。安くて驚いた。データ保存コストを考えなくてよくなった。まずこれが非常に弊社ではシンプルに感じる。”
オブザーバビリティエンジニアの時代へ
今回の製品体系と価格変更によって New Relic はあらゆるエンジニアチームがオブザーバビリティを実現するための世界を目指しました。インフラや運用エンジニアがシステムのお守りから、サービスの信頼性の維持と改善を行う SRE になるために。またウォーターフォールから DevOps に移行してデプロイ頻度を2,000倍以上も高速化するために。個々にツールを導入するのでは無くエンジニアがインフラからアプリケーションパフォーマンス、リアルユーザーモニタリングまでツールの切り替えや契約を気にすること無くフルスタックな可視性から深い洞察を得る力を与えるために。エンジニアの進化こそがデジタルビジネスの進化を担うと New Relic は考えています。
一人のエンジニアがフロントエンドからバックエンド、ログやクラウドなどのインフラまでもたやすく見渡せるオブザーバビリティを提供できるようになること。マイナスをゼロにするワークロードから解放され日々の改善と発見により多くの時間を避けるようになること。New Relic に集まるあらゆるデータを駆使してビジネスの進化に貢献できるエンジニアになること。そして、エンジニアをもっと Nerd にすること。
今回の New Relic One の製品体系と価格体系の変革がより多くのエンジニアチームの力になることを願います。
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