メトリクスとは?システム開発・運用における活用方法と注意点を解説
システムの健全性やソフトウェアのパフォーマンスを定量的に評価し、適切な管理や改善を行うためには、どのような手法が効果的でしょうか。そのカギとなるのが「メトリクス」です。
メトリクスは、システムやソフトウェアの状況を可視化することで、潜在的な問題を早期に発見する手助けとなります。
ここでは、メトリクスの概要とシステム開発・運用におけるメトリクスの活用法を解説するとともに、メトリクスの課題についても詳しく掘り下げます。併せて、より高度なシステム監視を実現するオブザーバビリティの考え方についても紹介します。
メトリクスとはシステムやソフトウェアの状態を数値化したデータ
IT業界においてメトリクスとは、システムやソフトウェアの状態および活動状況を数値化したデータのことです。客観的にシステムの状態やソフトウェアの品質を評価するための指標として活用します。
システム開発・運用では、CPU使用率やメモリ使用率、レイテンシー(応答時間)といった数値データがメトリクスとして利用されます。
メトリクスは、特定の時点のデータではなく一定時間内に収集された測定値の集合体です。平均値や最大値などさまざまな集計操作を用いて分析可能なため、大規模データや長期のデータから有用な情報を抽出できます。また、メトリクスは1つ以上の属性を含むので、これらの属性に基づいた多角的な分析ができることも特徴のひとつです。
システム開発・運用におけるメトリクスの活用法
システム開発・運用で活用されるメトリクスには、大きく分けて「リソース状況を表すもの」と「サービスの提供状況を表すもの」の2種類があります。それぞれについて、簡単にご紹介しましょう。
リソース状況を表すメトリクス
リソース状況を表すメトリクスとは、システムやアプリケーションを構成するリソースの使用状況や健全性を定量的に示す数値データのことです。具体的には、CPU使用率やメモリ使用率、ストレージ使用率などが挙げられます。適切に監視することで、リソース不足や過剰利用などの問題を早期に発見し、システムの安定運用と効率的なリソース管理が可能になります。
従来のシステム監視では、CPUやメモリの使用率が一定のしきい値を超えた場合にアラートを出し、エンジニアが対応するのが一般的でした。しかし、最近ではクラウド環境の普及により、システムが複雑化しているため、単純なインフラ中心のリソース監視だけでは適切な対応が難しくなっています。システムのリソース使用率が高まってもサービスの品質が許容範囲内であれば、対応不要なケースも少なくありません。
そのため、リソース状況を表すメトリクスを活用する際には、サービス全体のパフォーマンスへの影響も併せて確認することをおすすめします。
サービスの提供状況を表すメトリクス
サービスの提供状況を表すメトリクスは、サービスの品質や信頼性を定量的に評価するために使用されます。代表的なメトリクスは、レイテンシー(応答時間)、トランザクション量、エラー発生率などです。
これらのメトリクスは、ユーザーの使用感に直結する数値です。機能としていかに優れたサービスであっても、反応が遅かったり、頻繁にエラーを起こしたりすれば、ユーザー体験に悪影響をおよぼし、ユーザー離れにつながりかねません。
そのため、これらのメトリクスを常に監視し、適切な水準を維持するための対策を講じる必要があります。システムのボトルネックを特定したり、パフォーマンスを最適化したりすることで、ユーザーが求めるレスポンスと安全性を実現することが重要です。
システム開発・運用におけるメトリクス活用の限界
システム開発・運用において、メトリクス単体での分析や監視には限界があります。詳しく見ていきましょう。
トラブルの根本原因が分析できない
メトリクスは、トラブル発生の兆候を検知することはできても、トラブルの根本原因を詳細に分析し、具体的な対応策を導き出すことには限界があります。
従来のモノリシックなシステムでは、メトリクスをもとにエンジニアの経験と知見を活用してトラブル対応を行うことが可能でした。しかし、マイクロサービスや外部APIとの連携が一般的となった現代のシステム環境では、CPU使用率が正常でもパフォーマンスが低下するケースや、CPU使用率が高くても適切な負荷分散により問題が発生しないケースもあり、従来の単純な指標だけでは判断が難しい状況が増えています。
このような複雑化したシステム環境下では、メトリクス単体での分析には限界があり、他のツールやデータと組み合わせた総合的なアプローチが必要不可欠となっています。
エンジニアの「アラート疲れ」と時間損失
メトリクス監視の中でも、インフラ中心のリソース監視を続けていると、頻繁なアラート発生によりエンジニアが疲弊する「アラート疲れ」が生じることも少なくありません。現代の複雑化したシステム構造では、CPUなどのリソース監視だけではサービスが正常に稼働しているかどうかを正確に判断できなくなっています。本来、対応不要なアラートが大量に通知されることで、エンジニアの疲労と重大障害の見落としリスクを増大させています。
特に、豊富な経験と知見、高い技術力を持つ一部の限られたエンジニアが、アラート対応に時間を費やし、本来のコア業務であるクリエイティブな作業に注力できないことは、組織にとって大きな機会損失となるでしょう。
こうした問題を解決するには、インフラ中心のリソース監視から、ユーザー視点の監視へのパラダイムシフトが必要です。ユーザー体験に直結する指標を重視することで、より効率的かつ効果的な運用が可能になり、システムの安定性維持とユーザー満足度向上の両立が期待できるでしょう。
クラウド環境に不可欠なオブザーバビリティ
システム環境の複雑化に伴い、メトリクスのみでトラブルに対応することが困難になりました。そこで注目されているのが、オブザーバビリティの概念です。
オブザーバビリティとは、オブザーブ(Observe)と、アビリティ(Ability)を組み合わせた複合語で、日本語では「可観測性」あるいは「観測する能力」などと訳されます。システム上で何らかのトラブルが起こった際に、それを通知するだけでなく、どこで何が起こったのか、なぜ起こったのかを把握する能力を表す指標、あるいは仕組みを指します。
オブザーバビリティを導入することにより、システムの安定性が向上し、より効率的で信頼性の高い運用が可能です。さらに、開発チームと運用チームの連携強化にも寄与し、DevOpsの実践を促進する効果も期待できるでしょう。
オブザーバビリティについては、下記の記事をご覧ください。
「オブザーバビリティとは?監視との違い、必要性について解説」 https://newrelic.com/jp/blog/best-practices/what-is-observability-difference-from-monitoring
オブザーバビリティを実現するNew Relic
オブザーバビリティを実現するためには、システム全体の動作を継続的に観測し、分析できるプラットフォームが必要です。そこでおすすめなのが、New Relicです。
New Relicは、バックエンドからフロントエンドまで、すべてをカバーするフルスタック・オブザーバビリティ・プラットフォームです。あらゆる要素のデータを一元的に収集・ビジョン化し、迅速な問題発見と解決をサポートします。CPU使用率やメモリ使用率といったリソース状況だけではなく、それがサービスレベルにどのような影響を与えているのかも把握し、原因を究明できます。
この仕組みを支えるのが「オブザーバビリティの3本柱」と呼ばれる、メトリクス、ログ、トレースです。New Relicではさらにイベントを加えることで、システム内の状況を自動的に関連付けて可視化し、より深い洞察を提供します。これにより、複雑なシステム環境でも効率的な運用と迅速なトラブル対応が可能になります。
ログ、トレース、イベントについて、詳しく見ていきましょう。
アクションの結果を示す「ログ」
ログは、プログラム上で特定の命令が実行された時に生成されるテキストデータです。一つひとつのログは簡潔で、体系化されたものではありません。しかし、これらのログを時系列で関連づけることで、特定の時点で発生した一連の事象を明らかにできます。それにより、メトリクスだけでは把握できない詳細なコンテキストを深掘りし、問題の根本原因に迫ることが可能です。
ただし、ログはあくまでも、事象の「断片」を示すものにすぎません。インシデントの原因究明には有用ですが、ログだけに頼ることは効率的ではありません。効果的なトラブルシューティングには、ログとメトリクス、トレース、イベントを組み合わせた総合的なアプローチが必要です。
リクエスト構造を監視する「トレース」
トレースは、問題の根本原因を迅速に特定するために、処理の流れを可視化したデータです。システム上でアクションが発生すると、それに伴い複数のリクエストが連鎖的に生成されます。これらのリクエストは、さまざまなマイクロサービスやアプリケーションを経由して処理され、最終的な結果として表示されます。この一連のリクエスト構造や、各コンポーネントでの処理時間を横断的に追跡・監視したデータが、トレースです。
トレースを分析すると、アクションに伴うリクエストの流れを把握でき、複雑なシステムにおいてソースコードやデータベースのクエリといった詳細なレベルでの問題特定と解決が容易になり、効率的なトラブルシューティングが可能となります。
3要素を補強する第4の要素「イベント」
メトリクス、トレース、ログの「オブザーバビリティの3本柱」と並ぶ重要な要素として加えたのが、New Relic特有の概念であるイベントです。
イベントは、システム内で発生する特定の時点での具体的なアクションを指します。メトリクスやログがアクションの結果を示すのに対し、イベントはそれらの背景となるコンテキストを提供します。
イベントデータの収集と保持により、トラブル発生時にその原因となったイベントを特定し、プロセス内のトラブル要因を迅速かつ正確に突き止めることが可能になります。
イベントは、メトリクス、トレース、ログを補完し、より深い洞察を可能にすることで、真のオブザーバビリティの実現に貢献します。
よりモダンな監視体制に移行し、開発・運用業務の効率化を
New Relicの強みは、メトリクス、ログ、トレース、イベントのデータを相関させて統合的に分析できる点です。一般的に、従来のシステム監視では、メトリクス、ログ、トレースが個別に管理されていました。トラブルの原因を特定するためには、複数のツールを使用して横断的に分析する必要があったのです。
しかし、New Relicでは、これらのデータを自動的に統合したダッシュボード上でリアルタイムに確認できます。この統合的アプローチにより、トラブル発生時に、根本原因を迅速に特定し、効果的に対応できるようになるのです。
オブザーバビリティの実現により、システムの安定性向上、トラブル対応の効率化、パフォーマンスの最適化が可能になります。New Relicは、これらの課題に対する包括的なソリューションを提供し、システム開発や運用を高度化する強力なツールとなります。ぜひ、この機会にNew Relicの導入をご検討ください。
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