CloudWatchとは？AWSの監視を強化する方法を解説

CloudWatchとは？AWSの監視を強化する方法を解説

Amazon CloudWatchは、AWSが提供する統合モニタリングサービスで、システムの稼働状況を可視化・分析することで、運用の最適化を支援します。AWS環境との親和性が高く、簡単に導入できる一方で、利用における制限や専門知識の必要性といった課題もあることに注意が必要です。
ここでは、CloudWatchのメリットとデメリットのほか、AWSの監視をさらに強化する方法についても説明します。

Amazon CloudWatchとはAWSが提供する統合モニタリングサービス

Amazon CloudWatchは、AWS（Amazon Web Services）が提供する統合モニタリングサービスです。AWS上で稼働する各種リソースのほか、アプリケーションのメトリクスやログデータを収集・分析し、システムの稼働状況をリアルタイムで可視化できます。

CloudWatchは、AWSアカウントがあればすぐに利用可能です。また、従量課金制のため、初期費用なしでスモールスタートができます。Amazon EC2（Amazon Elastic Compute Cloud）やAmazon RDS（Amazon Relational Database Service）といった主要サービスだけでなく、カスタムメトリクスやログファイルにも対応しており、条件にもとづいてアラームを発出したり、特定のイベントをトリガーにして自動的なアクションを実行したりすることも可能です。
AWS利用者で、システム監視体制を手軽に導入したいと考えるなら、CloudWatchは非常に有用な選択肢となります。

■CloudWatchの仕組み

Amazon CloudWatchで何ができるのか

CloudWatchを導入すると、具体的に何ができるようになるのでしょうか。CloudWatchが提供する主な機能について解説します。

サービスやリソースの監視

CloudWatchは、AWSで駆動しているあらゆるサービスやリソースを、逐次監視できます。例えば、AWSの仮想サーバーサービスであるAmazon EC2の稼働状況、CPUやメモリなどの使用率、ネットワークやストレージの状態などです。これらの監視対象はそれぞれの機能ごとに設定可能なため、監視体制の構築が容易にできます。
また、OSやアプリケーションから出力されたログも収集・保管されるため、エラーが発生した時には、その内容と発生時刻をすぐに確認でき、原因特定と解決に役立てられます。

ダッシュボードによる可視化

CloudWatchで収集したデータは、表やグラフなどで視覚化し、専用のダッシュボードに表示できます。ダッシュボードは自由にカスタマイズ可能です。重要な指標をまとめて表示させれば、スピーディーな意思決定や運用改善に役立てることができます。
例えば、サービスの利用状況をダッシュボードにまとめておくことで、自社のサービスをユーザーがどのように利用しているのかを分析でき、さらなる改善ができるでしょう。また、リソースの利用状況をまとめておけば、サービスとリソースの利用状況のバランスをチェックできるため、スケーリングが必要かどうかを判断する材料にもなります。

条件に応じたアラームの発出

CloudWatchでは、事前に設定したしきい値や条件にもとづき、リソースの状態が異常になった際に自動でアラームを発出できます。そのため、エンジニアは即座に異常に気づき、迅速な対応を取ることができるでしょう。なお、アラーム通知は、SNSやAWS Lambdaとの連携で拡張可能です。
システムの状態を自動検知して通知する機能は、運用上とても便利ですが、多くのアラームを設定すると、その対処に手間と時間をとられかねません。そのため、何に対してどのような条件でアラームを設定すべきか、十分な検討が必要です。

イベント実行の自動化

CloudWatchはアラーム発出だけでなく、条件を満たしたときに特定のイベントを自動実行することも可能です。例えば、CPU使用率が一定値を超えた場合にスケールアウトを実施するなど、運用の自動化によって人的リソースの負担軽減が図れます。

ログ分析による運用改善と意思決定への活用

CloudWatchには、収集したログを分析するCloudWatch Logs Insightsというサービスがあります。これを使うと、AWS上の各リソースやアプリケーションから得られたログをリアルタイムで検索・分析できます。
この機能はシステム運用に役立つのはもちろん、アプリケーションのパフォーマンス改善やユーザー行動の可視化、障害原因の追跡などにも活用できます。また、ログから得られる洞察をもとに、戦略的な意思決定にもつなげることが可能です。

Amazon CloudWatchのメリット

CloudWatchは、特にAWS環境において高い利便性を発揮するモニタリングサービスです。CloudWatchならではの主なメリットを紹介します。

AWS環境なら煩雑な構築作業が不要

CloudWatchは煩雑な構築作業が不要で、監視をすぐにスタートできる点が大きな利点です。CloudWatchはAWSのサービスのひとつとして提供されているため、特別な設定をせずに基本的なモニタリングが開始されます。Amazon EC2やAmazon RDSなどの主要なAWSサービスのメトリクスは、サービスを立ち上げた時点で自動的にCloudWatchに送信されます。

AWS環境への機能最適化

CloudWatchはAWS環境に機能が最適化されています。AWSのオートスケーリング機能との連携や、AWSマネージドサービスの監視にも対応しています。リソースが動的に増減しても自動的に検知し、監視を継続できるため、変化の激しいクラウド環境にも柔軟に対応可能です。また、AWS CLI（AWS Command Line Interface）やSDK（Software Development Kit）を使ってほかのAWSサービスとスムーズに連携できる点も強みです。

Amazon CloudWatchのデメリット

CloudWatchは優れたモニタリングサービスですが、ほかの監視ツールと比較するといくつかの制約や注意点もあります。CloudWatchを利用する際に考慮すべき主なデメリットは下記のとおりです。

利用における制約

CloudWatchはAWS専用のサービスであるため、基本的にAWSのアカウントがなければ利用できません。また、アラームの通知先にも制限があり、PagerDutyやMicrosoft Teamsなどに通知するには、SNSやAWS Lambdaを活用したカスタム設定が必要です。これにより、システム構成が複雑になるケースがあります。

AWS以外の環境との相性

オンプレミスや他クラウド環境を含むハイブリッド環境では、CloudWatchだけで包括的な監視を行うのは難しいでしょう。AWSに加えてオンプレミス環境でアプリを稼働している場合、外部環境の監視にはCloudWatchエージェントの導入やカスタムメトリクスの設定が必要になります。それに伴い、追加の開発工数やコストが発生する可能性があるでしょう。
AWS以外の環境が混在するシステムでCloudWatchを使用するなら、ほかの監視ツールとの連携や使い分けの検討をおすすめします。

専門知識が必要

CloudWatchは豊富な機能を持つ一方で、それらを効果的に使いこなすにはAWSアーキテクチャへの理解が必要です。例えば、アラーム設定やダッシュボードのカスタマイズには、ある程度の知識が求められるため、経験の浅いエンジニアにはハードルが高いこともあります。

Amazon CloudWatchとSaaSの監視ツール、どちらを使うべきか

監視ツールを導入する際、CloudWatchを使うか、あるいはSaaS型の監視ツールを選ぶかは、システム構成や運用方針によって異なります。
AWSで完結した環境であれば、CloudWatchを選ぶケースが多いかもしれません。なぜなら、AWSに最適化されており、初期設定も少なく、必要なメトリクスが即座に取得できるからです。スモールスタートに向いており、コストを抑えながら監視体制を整えることができます。

一方で、マルチアカウントやマルチクラウド、オンプレミスを含むハイブリッド環境では、SaaS型の監視ツールのほうが柔軟に対応できます。多様な環境を一元管理できる機能を備えており、可視化の精度や操作性も高い傾向にあります。
さらに、CloudWatchで取得したメトリクスをSaaSの監視ツールに転送し、より高度な分析を行うといったハイブリッドな運用も可能です。特に複数環境をまたぐ運用では、このような連携型のアプローチが効果を発揮します。

AWSにおける監視の強化には、New Relicがおすすめ

AWSにはCloudWatchをはじめとするモニタリングツールが標準搭載されていますが、クラウドネイティブなアーキテクチャでは、より高度な監視体制が求められます。特にマイクロサービスやマルチクラウド環境では、サービス間の関連性や外部要因も含めた統合的な可視化が重要になります。

そこで、おすすめなのが、New Relicです。New Relicは、メトリクス、トレース、ログ、イベントといった多様なデータを一元的に収集・可視化できる、オブザーバビリティ・プラットフォームです。AWSのマルチアカウント環境のほか、他クラウド やオンプレミスとのハイブリッドクラウド構成にも柔軟に対応でき、システム全体を包括的に監視できます。
特に注目すべきは、CloudWatchとの統合が可能な点です。これにより、AWS環境のメトリクスやログをNew Relic上でまとめて分析でき、監視体制のレベルを格段に引き上げることができます。複雑なシステム構成でも、障害発生時の原因を迅速に特定し、復旧までの時間を短縮可能です。

New Relicの特徴と主な機能

New Relicは、単なるモニタリングツールではなく、あらゆる観測データを統合して管理できるオブザーバビリティ・プラットフォームです。ここでは、その特徴と機能について詳しく紹介します。

New Relicは、メトリクス・イベント・ログ・トレースという4つの主要な観測データを一元的に収集・分析します。システム内のあらゆる層にわたって情報を可視化できるため、アプリケーションやインフラにおける異常の発見や根本原因の特定が迅速に行えることが特徴です。
さらに、各サービス間の関連性も追跡できるため、問題の発生源をピンポイントで特定できます。それによって、エンジニアの作業負荷の低減と機会損失の抑制を実現します。

また、New Relicは外形監視（Synthetic Monitoring）も行えることも大きな特徴のひとつです。これは、実際のユーザー視点での操作をシミュレートし、UX（ユーザーエクスペリエンス）を計測する機能であり、ユーザビリティの改善に役立ちます。

加えて、ユーザー体験を多角的に可視化する機能として「New Relic Browser」や「New Relic Mobile」を提供しており、それぞれ異なる側面から分析が可能です。これらの機能について詳しく見ていきましょう。

リアルなユーザビリティを計測する「New Relic Browser」

New Relic Browserは、Webアプリケーションのフロントエンドに特化したパフォーマンス監視ツールです。実際のユーザーの操作をもとに、ページの読み込み速度やJavaScriptのエラー、外部リソースの読み込み状況などをリアルタイムで可視化します。地域・デバイス・ブラウザごとの詳細な分析も可能で、ユーザー体験に影響を与えるボトルネックを迅速に特定・改善できます。

すべてのモバイルアクセスを監視する「New Relic Mobile」

New Relic Mobileは、モバイルアプリのパフォーマンスと安定性をリアルタイムで可視化できる監視ツールです。アプリの起動時間やクラッシュ率、HTTPリクエストの状況、OSや端末別のユーザー体験など、モバイル特有の指標を詳細に取得・分析できます。すべてのモバイルアクセスを対象に、ユーザー視点での課題を素早く発見・解決できるため、品質向上とリリース後の運用最適化に貢献します。

Amazon CloudWatchのデータをNew Relicに取り込む方法

CloudWatchが収集したデータをNew Relicに取り込むことで、より深い分析が可能になります。CloudWatchとNew Relicの統合は、次の2つの方法で実現できます。どちらもセットアップは一度で完了するため、導入の手間が少ないのもポイントです。
それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

Metric Streamsを使う

CloudWatchのデータをNew Relicに取り込む方法のひとつに、Metric Streamsを活用する手法があります。Metric Streamsは、CloudWatchのメトリクスをリアルタイムで外部サービスへストリーミングできる機能です。

これにより、AWSリソースの監視データを遅延なくNew Relicで可視化でき、システム全体の統合監視が実現します。設定も自動化が可能で、大規模環境にも対応できる点もメリットです。

API Pollingを使う

API Pollingを使ってCloudWatchのデータをNew Relicに取り込む方法もあります。CloudWatchのメトリクスを定期的にAPI経由で取得し、New Relicへ送信する手法です。New Relicのインテグレーションエージェントやカスタムスクリプトを使って、指定した間隔でCloudWatchのAPIを呼び出し、取得したデータをNew Relicのメトリクス形式に変換して取り込みます。
AWSとの連携ではMetric Streamを推奨していますが、Metric Streamに対応していないメトリクスを取得する場合にはAPI Pollingを利用することが可能です。

New Relicを活用して、より強力なオブザーバビリティを

CloudWatchは、AWS環境における標準的なモニタリング基盤として優れていますが、より包括的で高度な監視体制を実現するには、New Relicとの連携が非常に有効です。
New Relicは、システム全体を俯瞰する視点と、詳細なトラブルシューティングを可能にする深い分析機能の両方を備えており、複雑なマルチクラウド・ハイブリッドクラウド環境でも威力を発揮します。また、CloudWatchのデータを取り込みながら、それを超えるインサイトを得られることが大きな強みです。
アプリケーションやサービスのパフォーマンスを高水準で維持するには、多角的な視点が欠かせません。幅広い領域をカバーするNew Relicを活用することで、インフラとアプリケーションの状態を正確に把握し、より強固な運用体制を構築できます。
この機会にNew Relicの導入を検討してみてはいかがでしょうか。